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論証集書き換え実践(3) - 「理由」に注目して細分してみる

(2)の続き

論証集の分析に四苦八苦しております。

判例やテキストの生きた文章の断片一つ一つに一意的に問題提起や趣旨、結論といったラベルを付けていくのはすごく難しいということに、前回気付きました。

ただ、実際答案で書くかどうかは別として、「結論」にあたる部分をできるだけ早い段階で記載するという方針は、記憶するための論証を作るには悪くないように思えました。

加えて今回は、規範等を導き出す「理由」を漏れなく、明確に特定するという方針を採用してみました。

まず、前提として、「規範定立」および「あてはめ」とは何かということについて明確にしておきたいと思います。

規範とは、法律の規定よりは具体性があるけど、実際の事案よりは抽象的な命題です。あてはめの論理操作を行う際には、三段論法の「大前提」に置くことになります。

また、規範を定立するまでもなく、あてはめに利用できる具体的な条文が見つかる場合もあります。さらには、ある条文が類推適用できることを見いだせる場合もあり、これらを「大前提」として利用する場合もあります。

一方、あてはめとは、具体的な事案を大前提においた命題に対応させるための命題で、「小前提」にあたります。

と、いうとややこしいですが、要するに、具体的な事案でCが見出された場合、

  • 大前提(規範 or 条文 or 類推適用する条文):AならばB

  • 小前提(あてはめ):CならばA

  • 結論:CならばB

というふうに、Cを大前提に置いた命題の効果Bに結びつける論理操作のことです。

論証の主な目的は、以上のような論理操作に用いる規範(大前提)を定立することですが、あてはめの論理操作まで含めて論証として書かれていることがあります。

一方で論証集から読み取るべきは、機械的な操作をすれば済む三段論法の部分よりは、そういった三段論法に利用できる大前提(規範や条文)を導き出すところだと思われます。

要約すると、究極的には三段論法に利用することを踏まえつつ、大前提に用いることのできる規範や適用条文を見出す「理由」を注意深く特定して知識化することが大事です。

・・たぶん。

(繰り返し言いますが、法学部出身でもないし予備校の利用もしたことがないので、僕の書いたこと全部が正しいとは思わないでください。まだ絶賛試行錯誤の段階です)


5. 法人が不法行為責任を負う場合(一般法人78条)に、機関個人も責任を負うか

(問題提起+結論)
一般法人78条からは明らかでないが、法人が不法行為責任を負う場合(一般法人78)、(1)機関個人も責任(民709)を負う。

(2)また、両者は連帯債務の関係に立つものと解せる。

(前提)
一般法人法78条は、法人が独立の取引主体として社会的活動をなすものである以上、機関の行為によって他人に不法に損害を加えたときは、当然に法人自身の行為として不法行為責任を負うことを規定したものであるところ、

(理由)
(1)について、機関の行為は法人の行為を形成する一面と、機関個人の行為の一面との二面性を有すると観念できる上、機関個人の責任を認めることで、被害者を厚く保護することができるからである。

(2)についても、被害者救済に資するためである。

6. 法人の代表者が定款による権限制限に違反して行為した場合

(問題提起)
取引の相手方が、定款の記載により不動産の処分には理事会の承認を要することは知っていたが、当該処分について理事会の承認があったと信じていた場合、相手方を一般法人法77条5項等により保護できるか。

(あてはめ+結論)
(1)相手方が包括的代表権の制限につき悪意である以上、一般法人法77条5項の適用はないが、

(2)当該個別的取引については、相手方は理事会の承認があったものと信じている(善意)ので、加えて無過失であれば、民法110条、109条を類推適用して、不動産の処分の効果は法人に帰属すると解し、保護できる。

(理由+規範定立)
(1)代表理事その他の代表者の包括的代表権(一般法人77IV)について、その制限を根拠付ける規定が一般法人法77条5項であるため(理由)、一般法人法77条5項の「善意」とは、相手方が包括的代表権の制限を知らないことを意味する(規範定立)。

(2)相手方は個別的取引について理事会の承認があったものと信じていたのであり、かかる信頼は保護すべきであること、また、法人の利益と相手方の利益の調和の観点から(理由)、相手方において、代表理事その他の代表者が当該具体的行為につき理事会等の決議を得て適法な代表権を有するものと信じ、かつ、このように信じるにつき正当な理由がある場合には、民法110条、109条を類推適用して、代表理事その他の代表者の行為の効果が法人に帰属すると解せる(規範定立)。

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