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論証集書き換え実践(1) - 早めに結論を書く

バイトのない連休、思いっきり遠くまで走って気分転換しようと思っていたのですが、結局家にいます。

せっかくの休日なのでいつもとは違う勉強をしようと思い、伊藤真試験対策講座巻末にある論証集を味読したり、書き換えたりしてどう自分の頭に入りやすくなるかをいろいろ考えていました。

楽しいので、1週間くらいあればすぐに、一冊分の論証集(『債権各論』だと38個)に目を通せそうに思いました。

前書いたように、大まかな論証の構造は3段階です。

まず、

  1. 解釈が分かれうる箇所を「問題提起」し、

  2. 3の結論を導くための「理由」(主張理由、反対説+批判、原則+修正等)を示し、

  3. 最後に「結論」(規範定立、他)を示す

といった構成が基本構造です。

しかし、この順番で書かれた文章は記憶に残りにくい気がします。なんでかなと思ってちょっと試してみてすぐわかったのは、はじめに「結論」を書いていないからです。

もちろん、実際答案に書く際は「問題提起」「理由」「結論」の順番の方が良いと思います。本当に解釈が分かれうる問題に対して、丁寧に結論に至る論理を積み重ねてゆくという態度が示せるからです。

でも、覚えておくべき論証が例えば500個あるとしたら、一字一句元の論証集の構成や文章を覚える必要はなく、答案を書く段階で再現できるくらいの簡潔で自由な形式で、好きに加工した方が良いような気がします。加工の過程で自分が選んだ表現に誤りが混入しないように注意する過程さえも、勉強になる気がしますし。

といったわけで、論証集の加工に取り組んでみました。

まず、俎上にあげるのは、『債権各論』巻末論証集の3番目に挙げられていた論証です。

[債権各論3: 催告解除 - 二重の催告の問題]

・問題提起:期限の定めのない債務について債務者が履行しない場合、債権者は債務者を遅滞に陥らせるための「履行の請求」(412条3項)をしたうえで、さらに541条本文の「催告」をしなければ契約を解除できないか。

・反対説:たしかに、541条本文の文言からすれば、債権者が催告をする前に債務者が遅滞に陥っていることが必要とも思える。

・批判:しかし、このように解すると、不誠実な債務者に反論の余地を与えることになりかねず、誠実な債権者との間で著しく公平を欠く。

・規範定立:そこで、債務者が履行遅滞にあることは解除権発生の要件にとどまり、541条本文の「催告」をするための要件ではなく、「請求」に加えて「催告」を改めてする必要はないと解する。

10日ほど前に読んだばかりの箇所ですが、あまり覚えていなかったのはご愛嬌です。気にしていません。

この論証を、結論をできるだけ早い段階で示す「問題提起+結論」で始める文章にしたいと思いました。いきなり結論を示すために不明確になりやすいところは、「前提」として、背景の知識などを含めます。

・前提:催告による解除(541条)の要件は、(1) 履行遅滞が発生していること、(2) 催告したこと、(3) 催告後に相当期間が経過したこと、(4) 解除の意思表示を行ったことの4つである。

・問題提起(+反対説)・結論:そして、(1) の要件を満たすためには、履行の請求(412Ⅲ)をする必要があり、重ねて(2) の「催告」をしなければ、解除はできないように思えるが(←問題提起、反対説)、この点、「請求」に加えて「催告」を改めてする必要はない(←結論)。

・理由:なぜなら、このように解すると、不誠実な債務者に過分の反論の余地を与えることになり、誠実な債権者との間で著しく公平性を欠く結果になるからである。

最初の方ですが、541条の規定をそのまま書くよりは、テキスト本文に箇条書きされていた「要件」をそのまま持ってきた方が、文章全体の流れを作りやすく思えてそうしました。六法条文の趣旨・規範、要件・定義などが科目ごとにまとめられた本が出版されているくらいだから、大丈夫やんな・・とも思いつつ、このあたりどうするかは今後勉強しながらいろいろ変えていくかもしれません。

ともあれ、こういったことを積み重ねていくと、判例や研究者が書いたテキストを読んで試験に必要な知識を抽出するスキルが効率よく身に付くかもしれないと思い、少し嬉しくなりました。

(2)へ続く


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