見出し画像

日本の美は北陸にあり

日本の美は北陸にあり。

最近本当によくそう思う。

例えば自然。今北陸は大雪。田は雪原に変わり、山は深い眠りについている。雪が降るとどうして静寂が一層強く感じられるのだろうか。冬が柔らかい真っ白な布団をかけて「春までおやすみ」と言っているようだ。

例えば食。北陸は水が美味い。米が美味い。魚が美味い。日本酒が美味い。もう本当に美味しいんだ。それはまるで口に含んだ瞬間、秋の稲田や深く青い日本海が目の前に広がるように。生かされていることを感じる大地と海の恵み。

例えば伝統工芸。九谷焼、輪島塗り、越前和紙。自然と調和しながら快適性や芸術性を追求した営みの結晶。日々の食卓にも、迎賓の宴席にもそれらは凛と華やかにそして侘びやかに佇んでいる。

北陸の魅力が、いつも初見で特別グッとくるわけではない。でも、見過ごすことのできない存在感。

日本で生きてきた私たちに無意識かつ強烈に刷り込まれている日常と美。北陸の日常と美はそのツボを知らず知らずのうちにガッチリと掴んで離さない。

日本で感じてきた四季。桜、若葉、紅葉、雪。そして、日々の暮らし。焼物の茶碗と木の箸で食べる白米と焼き魚。どこにでもある障子や襖を触ったことのない人はいないだろう。

そういった当たり前の中にある心地よさや美しさこそが感受性を豊かにしてくれることを北陸の姿は教えてくれる。

かつては裏日本といわれ日の目を浴びなかった北陸。山に隔てられ外からの干渉をほとんど受けなかった北陸は、目まぐるしい時代の変化を横目にあるべき姿を維持してきた。日本が日本古来の要素をあちこちに散らかせば散らかすほど、北陸の魅力は色濃くを増していくのだ。

これは日本再発見ではなく、日本再帰省ともいうべきものだ。知らないものを発見するのではなく、むしろ知りすぎて気にもかけなかった感性にグッと目を凝らす体験である。


心地よさと美しさが日本人の心をあるべき場所へと据え直してくれる。

さあ、日本人の実家「北陸」へ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?