29歳|感謝と、夢と、ビジョン。
株式会社HARTi 代表取締役の吉田です。
HEART(思い)・ART(アート)・i(ひとりひとり)、全ての個人が自分の思いを胸に、アーティストとしてウェルビーイングに生きられる社会を作りたいと、HARTi(ハーティ)と名付けました。
ロンドン留学でアートの世界と出会い、日本発・世界に冠たる「文化企業」を作りたいとの思いで23歳でHARTiを創業。早いもので今日、29歳を迎えました。
5年で60%の会社が倒産する世の中、変わらず応援いただいている方々のお陰で本日を迎えられました。いつも支えていただいている方々全てに深く御礼申し上げます。
そのような感謝の思いと、僕の「夢」と「ビジョン」と、また我々の挑戦が年齢の近い後輩のためになればと、この10年の棚卸しとなる初めてnoteを書いています。興味ある方に読んでいただけたら嬉しいです。
20歳〜21歳:英国留学・アートとの出会い
HARTiの直接の創業の契機は、この英国留学にあります。IBP国際交流委員会の準特待生(https://www.iccworld.co.jp/ibp/student/scholarship/)として学費無料でロンドンに留学させていただき、日本の大学の専攻だった「法律」から全く別のフィールドに挑戦してみたいとの思いで、「アートマーケティング」へ専攻を変えました。
結果、日本では美術館はおろか、美術自体の成績も芳しくなかった自分がロンドンという街で「アート」の素晴らしさと可能性に惹かれていくことになります。
日本では「アート」=「文化・芸術」のイメージを持っており(当時20歳の世界観)、どうしてもいわゆる進学校的な教育を受けてきた自分からはとっつきづらい印象を持っていました。しかし、アート自体が持つ科学的な効用や、アートの価値形成の仕組み、そして究極的には「文化・芸術」としてのアートの位置付けを超越して、アートが社会の福利厚生となっているロンドン社会全体にひどく感銘を受けました。まさに、僕が「都市でアートを機能させたら、もっと多くの人にアートが届き、ウェルビーイングな社会の実現へ近付く」と思いを馳せるきっかけでした。(帰国後、実際に大学時代の友人と「アートプロジェクトを企画・運営する実践的方法論 : ART for Wellbeing, ART for Creativity, ART for Marketing」というテーマで学術論文を発表させていただきました。)
ここから「鑑賞するだけのアート」ではなく、まさに「機能するアート」とその市場の可能性に自分自身チャレンジしたいという思いを持ち始めました。
参照:https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I032037696
22歳:帰国(東京大学 i.school / 京都大学技術イノベーション事業化コース)
そして日本へ帰国後、本格的に起業準備を始めました。
大学は既に浪人と休学で2年遅れていたため、大学内に知り合いはゼロ。必然的に起業家主催のイベントや、知り合いづてでスタートアップ起業についての情報を集めました。(この時に出会った数名には、後にエンジェル投資家として参画いただくことになります。)
その中でもアイデア・ブリーフィングやビジネスメンターとして大変勉強させていただいたのが「東大i.school(https://ischool.or.jp/)」と「京大技術イノベーション事業化コース(https://commons.research.kyoto-u.ac.jp/project/project-1/)です。
どちらも隔週のコースでしたが、たまたま双方が週替わりで日程が被らず、両方とも合格したため、両方行くことにしました。前者は東大の学部生・院生中心のコミュニティで、ひたすらアナロジー思考とイノベーションを学びました。この時に学んだアナロジー思考は今でも自分の思考のベースになっており、非常に感謝しています。もちろん、一緒にこの時学んだ友人たちも国内外で今も活躍しています。(大尊敬)
京大のプログラムは実際にVC経験者やより実務的な起業のノウハウを学びました。実はこの時に作ったビジネスアイデア「Nexstar(次世代のスター育成のためのプラットフォーム)」がHARTiのベースになっています。この時は参加者の全体の中で2位で、1位を取れませんでしたが、担当の古賀先生より「君は起業すると思うから頑張ってね」とお声がけいただいたのが心に残っています。これで始めなかったらよくある「ビジコン学生」の枠を出なかったと思います。あえて1位ではなく「2位」をくださったメンター陣の皆様に感謝の思いでいっぱいです。
23歳:HARTiを創業、東洋経済「すごいベンチャー100」へ最速掲載
2019年2月18日、満を辞してHARTiを創業しました。
資本金は10万円、たった一人、WeWorkでの創業でスタートです。
エンジェル出資も決まり、創業ビジョンは「感性が巡る、経済を創る」。
今後5年、10年を考えた時にビジョンは出来る限り遠くまで見通せるものとした方がいい、とメンターのアドバイスもあり、今になって分かるその重要性に、改めて感謝しています。
事業は「現代アーティストのプロダクション事業」に決めました。
まさに都市でアートを機能させるためには、そもそもアーティストがサステナブルに作品制作や生活基盤を整えられるべきだという思いで、見切り発車ではありましたが、この業界をもっと知りたい思いも強く、「現代アーティスト版のUUUM」のようなモデルでスタートさせました。
また運も重なり、創業5ヶ月の7月には東洋経済のすごいベンチャー100にも選んでいただき、まさに領域選定で「アート」という面白さと参入タイミングが相まって、今後の成長に非常に信頼の面で後押しになりました。
日本の成長にも、経営の成長にも、アートの力が必要だ。
HARTiの原点の誕生でした。
24歳:現代アーティストのプロダクション事業開始、Forbes 30 UNDER 30採択
創業から1年半が経過し、着実に提携作家が約30名ほどに増え、絵画から彫刻、メディアアート、書道、光のアート、音のアートなど、様々なパートナー・アーティストのご協力で、少しずつ色々なイベントや場所で事業モデルをお披露目出来る機会も増えてきました。ピッチなども呼ばれたものは全てこなし、「創業者の若さ×アートという領域の面白さ×事業モデルの新規性」の3点から色々な機会にお呼びいただき、貴重な経験を沢山させていただきました。
そのような中、Forbes 30 UNDER 30 Japanの採択についてもご縁をいただくことができ、ビジョンの実現へ向けた大きなメディア露出が増えてきたタイミングでもありました。まさに、そろそろ小さなオフィスから大きな挑戦を仕掛けないとダメだ、もっと沢山作品を仕組み化して販売したい、そのような思いで青山から六本木へ、大規模なオフィス移転を計画します。
25歳:アートギャラリー事業「HARTi Gallery TOKYO」を開始
そして3期目、六本木にアートギャラリー兼本社機能を持つ「HARTi GALLERY TOKYO」をオープンしました。昼間はギャラリー、夜は会員制のバーとなるコンセプトギャラリーで、知り合いのスタートアップと共同出店しました。
ギャラリーは典型的な白壁でいかにも「絵を買わされそう・・・」な空間ではなく、音や香りで癒される空間をこだわり、そこに自然と調和して展示してある作品をご購入いただけるように、と敢えて販売感の薄い黒いバー仕様の空間を作りました。(今となってはそのような抜群にセンスの良いギャラリーが本当に増えたと実感します)
店舗内装や空間コンセプト作り、美術品の管理・展示方法、VIP対応、搬入出や保険関係に至るまで本当に多くの学びがありました。
絵を見ながらワインを片手に、「一生ここにいたいと思える空間です」と涙ながらに伝えてくれたお客様の顔は今でも忘れられません。とにかく見様見真似で、頑張りました。
26歳:コロナ禍を契機にピボット。リアル→デジタルへ。丹青社との資本業務提携。NFTアプリ「HARTi®︎」をローンチ
しかし、そこにコロナがやって来ました。
開業1年で、リアル空間である我々も営業休止を余儀なくされ、必然的にギャラリーはクローズ、どうにか我々が描くアートが都市に機能する世界を「デジタル」で表現したい、と考えるようになりました。
そもそも、フィジカルなアートの世界は色々大変です。まず原材料が高く、特に油絵などは完成までに時間も掛かり、その制作を実現する空間も必要。また展示のためにギャラリー空間を持つオーナーと交渉し、家賃が高くても人が来るとは限らない。せっかく来ても作品を買ってもらえるとは限らない。また海外での展示ともなれば、保険や配送料、そして関税の問題まで、ひたすらに課題が出てきます。本当にアーティスト本人たちへの畏敬の念を持っていました。
そこでニュース経由で飛び出してきた「NFTアート」という言葉。
まさにメディアアートなど、フィジカルなキャンバス作品の絵画は価値が保全しやすい一方、デジタル作品はコピーが簡単のため、本来的には移送コストや展示に関する簡易性も高いデジタル作品が価値が付きにくい課題を感じていたところでした。NFTを活用すれば、アーティストの粗利益を増やすことができ、世界進出もしやすくなるのではないか。。
迷わず、全てのリアル事業をクローズし、NFTに張る決断をしました。
「我々は弱者なので、一点突破でいくしかない。中途半端に二兎を追う体力も金もない」
リアル事業で関わっていただいた皆様に本気の感謝をしつつ、会社の命運も掛けたチャレンジを実行へ移します。
構想から半年、海外のエンジニアチームとのご縁も繋がり、日本初のアプリ型NFTプラットフォーム「HARTi®︎」が誕生しました。
当時、NFTやWeb3はデジタルマーケティングで多額の資金調達を元に市場を獲得していく方法が圧倒的に主流でした。しかし、我々はお金も無ければ市場の後発参入組だったので、大規模な資金調達を行わず、ブートストラップ型かつ裏の戦略で徹底的にリアルでの信頼・ユーザー獲得を目指しました。一緒にイベントを行っていただいた東急不動産、三井不動産、パルコ、小田急不動産、LUMINE、MUIC、羽田イノベーションシティをはじめ空間事業者の皆様へ改めて感謝しています。この頃から、市場での弊社のイメージに「NFT」が加わり始めました。
また弊社のビジョンに共感いただいた丹青社と資本業務提携を締結させていただき、より日本全国の一等地でのNFT、アート文脈でのプロジェクト組成に弾みが付きました。ドアノックから約3ヶ月で出資を決めてくださった丹青社チームの皆様にも大変感謝しております。
27歳:海外展開を加速化。CES、カンヌ、世界の舞台へ
HARTi®︎のアプリユーザーは14,000人を超え、国際的にアーティスト・クリエイターをエンパワーできるプラットフォームへの挑戦を始めました。
その一つ目が海外展開。ロンドン時代から「Day0からグローバル」という目標を掲げつつも、コロナで国境間移動が難しく、事業モデルも相まって国内での事業展開100%な状況でした。そこからエンジニアチームもインドネシア人CTOを筆頭に100%海外採用を行い、国際的な組織を目指して組織ポートフォリオを組み替えました。
同時にJETROのご協力で、米国・ラスベガス「CES」に始まり、「Tech Crunch Disrupt」「カンヌ国際映画祭」「VivaTech」など様々なグローバルカンファレンスへ出展・登壇させていただき、特にカンヌ国際映画祭「Cannes Next」ではWeb3部門のピッチにて3位、VivaTechのWeb3部門のピッチにて2位(いずれも日本人最高位)を獲得させていただきました。
「意外と、世界で勝負できるかもしれない」
根拠のない自信が確信に変わり、本格的に海外企業との提携を通じたビジョン・ミッションの達成へ向けて、舵を切りました。
28歳:セルフフォトブース「HARTi Photo®︎」をローンチ。IPを「配給」できる仕組みづくりへ
この頃から日本・海外の往復が圧倒的に増え始め、特段アートを扱う身としては、日本と海外でもっとシームレスにアーティスト・クリエイターの価値向上を実現するためには、デジタルでもっと気軽に軽やかに国境を越えられる仕組みが必要だと思い始めていました。
まさに「映画」では全世界に設置されたシアターに対して「配給」という仕組みで、物理的にコンテンツの世界配信を可能にしており、監督を始めとしたクリエイター陣の収入源を作っています。
そこで「もっと気軽にアートも体験と共に配給できる仕組みがあれば良いのに・・・」と考えた結果、辿り着いたのがフォトブース事業「HARTi Photo®︎」でした。
フォトブースと並び称される「プリ機」は1995年に実は日本で最初に発明され、世界へ伝わった文化でもあります。また、NFT入口ではまだマス層との接続が難しい一方、「プリ機」は今のミレニアル以降はほぼ100%に近く経験済みの体験のため、ここにクリエイター・スタジオのようなアーティストのIPを触れ合い、自然とお金を落とし、自然と有名になっていく仕組みを作れないかな、と思索しています。今後はLINEスタンプの「クリエイタースタンプ」のように、まさに「友達のアーティストがデザインしたフレームで写真を撮りに行く」みたいなことが起きてくれると、「感性が巡る経済」の実現に一歩確実に近付く気がしています。
HARTi Photo®︎、実は6月以降様々な大型発表があります。
我々は、アートの、いわんや文化産業の「インフラ」を創る会社です。
この新しいメディアも成長させ、世界規模でアートIPやクリエイター知財を稼がせるプラットフォームとなりたいと考えています。
さいごに
HARTiの精神・哲学の中心には、常に「アート」があります。
「アート」の世界にイノベーションを起こし、
世界に冠たる「文化企業」を創ること。
そして、様々なアートがこの社会で「機能」し、
「文化・芸術」の枠組みを超えた存在へと昇華すること。
「我々はどこから来たのか。我々は何者か。我々はどこへ向かうのか。」
私たちの更なる挑戦を、応援いただけたら嬉しいです。
道なき道に、道を創る。29歳もひたすらに邁進します。
▼HARTi・吉田のインタビュー動画(こちらも是非!)
https://www.youtube.com/watch?v=M8s-cuT1z-w