普通の大学生がコンビニ人間を読んで、「普通」とは何か考える

コロナで外出する機会も減っているので、興味があった作品を読んでみようと思い今回手に取ったのは…

コンビニ

「コンビニ人間」(村田沙耶香さん著)です。第155回芥川賞受賞作品です。150ページくらいで、すぐ読めちゃう作品です。

コンビニが舞台で、主人公はかなりぶっ飛んでいても環境自体は日常生活に近いので、大学生である僕でも読みやすい作品になっています。

コンビニ人間 概要

主人公、恵子は36歳?(確か)今まで男性経験無しで、コンビニのバイトを大学生から18年間続けています。

彼女は、いわゆる「普通の子」ではありませんでした。クラスの男子が喧嘩しているときに、誰か止めてと言われます。「止めればいいんだ」と思い、彼女はスコップで喧嘩をしている男子を殴ってしまいます。そして、喧嘩を止めたのに怒られてしまう。その理由は全く分からない。そんな子でした。

サイコパスとお伝えするのが、一番近いでしょう。

そんな恵子は大学生からコンビニバイトを始めます。そこから彼女はマニュアル化されたコンビニで規則正しく働き続けます。

そんな彼女の店舗に、白羽さんという30代無職、女性経験なしの男性が新しいバイトとして入ってきます。

彼は恵子と似たような境遇におりながら、恵子と違って、そんな境遇にいる自分への世の中が冷たい視線を送ることに苦しんでいます。

そんな彼と出会い、恵子の人間性がどう変わっていくのかが描かれたストーリーです。

コンビニ人間 感想


現代社会を風刺する内容で読みやすかったです。

ステレオタイプ的な考えが充満し、コンビニのように生き方がマニュアル化された世の中にどうしても迎合できない主人公。

彼女の対して「屁理屈を言うな」と論理的な理由なくイライラしてしまう僕も、マニュアル化された社会の「普通」の製品なんだなあと実感させられました。

しかし、世の中はこのマニュアル(=普通)を明確に言語化したり、理由を突き詰めることをしません。

普通として頭から浮いている状態で、誰もが思考停止で従っています。

明確に行動が指示されていて、お客様を満足させた先の売上向上を目的とするコンビニのマニュアルとは、まるで違います。この違いを、コンビニを舞台に話を展開しているのがとても風刺的で面白かったです。

情報がありふれている今、「普通」というものが世の中に存在することで僕たちは情報処理速度を上げています。その「普通」の性質を忘れてしまってはいけないことに気づかされました。

翌4月からコンサルタントとして働く僕にとって、「普通」という言葉は禁句にしたいですね。

多様な生き方を許容しようよという正論が謳われる中、現実はマイノリティを一歩離れて眺める日本人の姿勢に、ギャップを感じる現代にこそ、最もメッセージ性を発揮する作品だなあと思いました。