誰も教えてくれない、結婚式の正体。
2016年から約3年間、CRAZY WEDDINGにて結婚式をつくるシゴトをしてきました。
前職はリクルートでゴリゴリの営業をしていたので、全くの異業界からのジョイン。最初はまったく何も分からなくて。
でも壁にぶつかりながらも情熱を燃やし、あっという間すぎる濃密な時間を全力で「プロデューサー」として過ごしてきました。
今になって思うこと。
それは、きっとここまでやってこれたのは、僕は「ウェディングプロデューサー」であり「ウェディングプランナー」では無かったからだということ。今日は、そんな話をしてみたいと思います。
結婚式はもともと、「選択肢サービス」。
ー 広告雑誌に掲載される多くの会場
ー 引出物や引菓子などのギフト
ー お料理や飲み物のプラン
ー ケーキカットやキャンドルサービスなどのコンテンツ
ー トレンドをなぞった余興
きっと、結婚式をしたことのある人は「そうそう!」と頷いてくれるんじゃないかと思うのですが、結婚式ってこんな風に「選択肢で溢れている業界」なんです。
理由は色々あるので全部は語りませんが、運営企業が効率よく利益を出すための構造っていうのが最大の原因と僕は思います(個人の見解!)。
ボンッと綺羅びやかな会場を建設して、大量の広告投資をして集客を募る。1日に何回転もできるようにアイテムやコンテンツを最大限にパッケージ化して、あとは空き枠をひたすらに埋めていくために営業をする。
「今日決めてくれたら値引きしますよ!」と100万円近くの金額があっという間に引かれていくことも、よくある話。
また一方で、新郎新婦にとっても結婚式は人生で1回きりの日。日本人は特に失敗したくないし失礼もしたくないという国民性がある。
だから、効率よくパッケージ化したい運営企業と、安心安全を求める新郎新婦のニーズは見事にうまく着地しちゃったんです。これが数十年前に結婚式というサービスが誕生したときに出たひとつの結論でした。
つまり、新郎新婦は選んでいく。安心も慣習もクリアした安心できるアイテムやコンテンツを。会場、招待状、引出物、コンテンツ、BGM・・・。結婚式の準備とは、最適なものを選ぶこと。そんな風にサービス化されてきました。
だから、たくさんの選択肢を新郎新婦にご提案する人のことを「プランナー」と呼ぶようになりました。プランを、提案する人。ウェディングプランナーという職種はこうして誕生したのでした。
結婚式の正体は、誰が教えてくれるのか。
「そもそも、結婚式やりたいですか?」と、僕はご相談に来てくれる方によく聞いています。そもそも結婚式って好きですか、嫌いですか。やりたいですか、やりたくないですか、と。
ちなみに僕のこれまでの答えは「どっちでもいい」でした。過去、参列した結婚式を思い出しても、大体の会場の場所だったり料理が美味しかったことだったり、当時流行した歌やダンスの余興コンテンツくらいしか覚えていないから。
もちろん、同窓会みたいに楽しいし、お酒も料理も飲めるし最高の機会なんですけどね。お祝いしたいという想いしかないので、後悔とかはまったく無いのも言わずもがなで。
ただ、いざ自分に結婚式を突きつけられたとき。「好きか」「やりたいか」と聞かれると答えられなかったんです。脳内で「数百万円 vs 結婚式の価値」がバトルし始めたっきり、いっこうに結論がでないんです。
これは僕がこのシゴトを始めてから分かったことですが、8割くらいの方がほぼ同じことを思っています。素晴らしい機会だが、価値があるかは分からない、と。だから、買うときに迷ってしまう。
言い換えれば、結婚式って価値があるかどうかを考える前にやることを決めてしまっている特殊なサービスなんです。これにはとても驚きました。
「何で買いたいんですか?」って聞くと、口を揃えて「結婚式ってやるもんだと思ってました」って仰るんだもん。
つまり、結婚式の価値ってそもそも何かが分からないんです。情報が無いんです。あるのは選択肢だけ。
だから価値を考える前に、誰もが選択をすることから始めてしまいます。それが結果、自分たちに合っていたのかなんて、気づくことはありません。一生に一度しか買えないものを否定したくないもんね。
僕がCRAZY WEDDINGに携わってはじめに思ったことは、こんなことでした。結婚式の正体は誰も教えてくれない。それと同時に、僕は結婚式の正体をちゃんと伝えられる人になりたいなと、思うようになりました。
「選ぶ」だけじゃない、自由のカタチをつくろう。
大切な人たちを、ホテルや式場に招いて結婚のご報告をする。こんな結婚式のカタチは昭和40年頃に一般化したと言われています。それまでは自宅で結婚式を行ったりしていたんだって。
そこから約40年間。どんどん選択肢は増えていき、結婚式は自由になっていきました。今では無数に会場も、ギフトも、テイストも、選べるようになった。でも、選択肢を増やすことで自由を生むのはもう飽和状態。それが、今なんだと思っています。
だから、CRAZY WEDDINGは7年前に新しい結婚式のカタチをつくりました。それが、お二人らしさから「創る」結婚式です。
これからは選ぶことを頑張るのではなく、創ることを頑張る。選択肢に悩むのではなく、自分たちがどうしたいかに悩む。安心できたことに喜ぶのではなく、理想を実現できたことに喜ぶ。記録に残すのではなく、記憶に残す。そんな新しい結婚式を創りたいと思いました。
僕はいまの時代、結婚式のスタートは「選ぶ」か「創る」かを決めることからはじまると思っています。
選ぶ結婚式とは。誰もが知っている有名ホテルは設備もサービスも素晴らしい。料理や飲み物ももちろん文句なしのクオリティ。誰もが「ハイクオリティ」な結婚式が実現できるという素晴らしい利点があります。これは間違いのない事実です。
創る結婚式とは。お二人がどんな人生を歩んで、何故一緒に人生を歩むことを決めたのか。これからどんな人生を歩んでいくのかというストーリーを体感することができます。またプロセスの中でも、お互いへの想いや、家族との関係を見直したり、再確認できる価値を実感できること。自分の生き方に確信が持てることも、大きな利点になります。
僕はこの2つのカタチでいうと、「創る」結婚式のプロデューサーをしてきました。厳密にいうと「二人らしさから創る」結婚式をつくってきました。
そして最近は多くメディアにも取り上げていただいておりますが、新しく表参道に建設した「IWAI OMOTESANDO」は、この「創る」結婚式の一つとして生まれたもの。IWAIでは「ゲストらしさから創る」結婚式を届けています。
「選ぶ」結婚式が主流だった数十年間。
新しく生まれた「創る」結婚式。
そして「創る」結婚式の中でも、二人らしさから創るのか、ゲストらしさから創るのか。新しく選択肢がうまれてきました。これからもたくさん、生まれていくんだと思います。この流れは止まらない。
CRAZY WEDDINGは、結婚式を自由にしていく会社。だから面白い。
結婚式の正体は、エンゲージメント。
ここからが本題であり、結論です。
結婚式って何なんだろう。感謝とかありふれた言葉はあるけれど、要するに何をする時間なんだろう。どうしてあげれば結婚式はもっと良くなるんだろう。この3年間、ずっと考えてきました。
僕が出した結論。
それは「結婚式はエンゲージメントをする時間」という答えです。
結婚式に参加しているのは、主催している新郎新婦、友人、上司、両親、親族といった皆さまです。基本的に、新郎新婦は来てくれるゲストに感謝を伝えたいし、ゲストは結婚を決めた新郎新婦を応援したいと思っている。
「感謝」と「応援」。
その気持ちがしっかりと噛み合ったとき、新郎新婦とゲストの間に生まれるものが「強固なつながり=エンゲージ」です。たとえ一緒に過ごす時間が少なかったとしても、新郎新婦は応援してくれるみんなを心のどこかでしっかりと感じられている。ゲストは感謝してくれている新郎新婦の気持ちをしっかりと感じられている。
物理的な距離を越えて、互いの人生を豊かにしていく関係が生まれる。結婚式にはこれだけの価値があるのです。願わくば、それが単なる一時的なものではなく、ずっと長く続くもの、記憶に残り続けるものになればいい。
でも、新郎新婦もゲストもみんな人間です。それぞれの関係の中で辿ってきた過去があり、今があり、未来がある。みんなオンリーワンの人生を生きているからこそ、同じ方法でエンゲージメントを生み出すことはできないのです。
夢を高らかに宣言することが大切な人もいる。過去のわだかまりを告白するべきな人もいる。ただゆったりと同じ時間を過ごすだけでいい人もいる。だから、客観的にそれぞれの人生を捉え、二人の結婚式で最大のエンゲージメントを生み出せる方法を提案してあげられるプロデューサーが必要なんです。
自分では分からない。これは間違いありません。僕はプロデューサーなのに、自分の結婚式では何を大切にすべきか全くわかりませんでした。幸か不幸か、このがプロデューサーとしての役割への確信をより強めてくれました。
上記にあるような「ただゆったりと同じ時間を過ごすだけでいい人」は、あまりお金をかけずに1.5次会のようなパーティーをしたら良いと思う。「安心安全な人生を自分たちで作っていける姿を見せたほうがいい人」は、「選ぶ」結婚式で進めた方がいいと思う。「創る」結婚式が誰しもにとって良いってことを言いたいのではなくて、自分たちにどんな結婚式がいいのかを知ることが大切だと言いたいんです。
何故なら、誰もちゃんと教えてくれないから。
僕はこの春、ウェディングプロデューサーを卒業します。でも、友だちや仲間の結婚式をより良い時間にしてほしいから、ずっと「どんな結婚式が合っているのか」という相談は受け続けたいなと思っています。だから、いつでも連絡してくださいね。
キーワードは、エンゲージメント。二人と、ゲストを、長い人生においてつなぎ合わせるためには何が必要なのか。ここを考え尽くし、実現するのが僕の3年間やってきたシゴトです。
これからは、企業にもエンゲージメントが必要だ。
最後になりますが、上記にあった通り、僕は2019年春でウェディングプロデューサーは卒業します。個人の人生を祝ってきた僕が次に取り組むのは、法人の人生を祝うシゴトです。
結婚式とは、「新郎新婦とゲスト」がエンゲージメントする機会だと言いました。でもよく考えてみると、「会社と社員」も同じだということに気づきました。
組織が大きくなるにつれて、経営メンバーと社員はどんどん距離が離れていきます。お互いが何を考えているか分からなくなってきて、モチベーションが下がったり、よりよい環境を外に求めていくことになります。
そんな現状を少しでも変えようと、企業は社員総会でビジョンを語ったり、表彰式で1年間のシゴトを称えたり、研修や合宿や社員旅行で仲を深めたり、色んな施策を行います。
・・・でも、僕も前職ではそうでしたが、果たして本当にエンゲージメントしているかと問われると「分からない」と答える人が多いと思います。
そりゃそうです。理由はもう言わなくていいと思いますが、結婚式で語った内容と同じ。それぞれ過去も、今も、未来も違う。どうすればエンゲージメントするのかは、客観的な視点がなければ絶対に生み出せません。
そう考えて、CRAZYでは2018年の夏に新しい事業をつくりました。これまで結婚式で培ってきた「エンゲージメント」のノウハウを、個人だけではなく法人へも活かす事業です。
事業名は、CRAZY CELEBRATION AGENCY。通称CCAといいます。よかったら僕の次のチャレンジを覚えてほしいです!そしてよかったら、あなたの会社でも問いかけてみて下さい。もし、もっとエンゲージメントが必要だと思ったら、いつでも相談して下さい。
以上になります。
読んでくれて、ありがとうございました^^
サポートいただいたお金は僕はもちろん、家族を楽しませる何かにありがたく使わせていただきます!