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装いから色が消える日

ものには色と形と質感があって、人間が一番最初に知覚するのは色ということを昔学校で習いました。色はそのくらい印象を左右します。

昨日、少ないながらも染めを頼みたい仕事があって、連絡を取ったかせ染め工場さんから染色工場の廃業が相次いでいることを聞きました。

染色工場の苦境は繊維産業全体の中でも特に言われていました。仕事で関わっていたときでも、実際かなり大変だろうと容易に想像できました。繊維産業の持続をさせる上で、一番むずかしい課題は染色だと思います。

状況を聞いていて、別注で染色を頼むことができなくなってしまう未来がすぐそこに来ているのを感じました。そうなったときに、世の中はどうなるのだろう。

デザイナーはメーカーが在庫を持つ定番のカラーブックの中からしか色を選べなくなるだろう。メーカーは採算の取れる色しか在庫を持たなくなるだろう。そうして、世の中から、少なくとも装いにまつわるものから少しずつ色は失われていくのだろう。

ただ、少し視点を変えると、どんな色でも自在に出せるようになったこと自体が持続的でない方向の発展だったのかもしれない。自然の中にある色を無理なく纏う、そういう世界に進んでいくだけだろうか。