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サイドビジネスを遊ぶ 「家計の助け」「健康維持」、そして「学び」につながる理由(前編)

明治維新の思想家、福沢諭吉の言葉にこんな一節があります。

実生活の中にこそ学びがある。飯を炊き風呂を沸かすのも学問である。   社会に出てからこそが本当の学問の始まり。

学問のすゝめ

福沢の言葉の中でも「実学」と呼ばれるもの。文字だけに頼らず、生活から知恵を身につける考え方です。
最近、この一節を実体験する機会を得ました。サイドビジネス、副業です。

これは、面白い。大変興味深いアクティビティです。

ふところを温める手段としてだけではありません。
健康に、そして気づきの多い時間を得られます。

まだ副業をしたことがない方のために、副業のこと。どんな利点があるのか、私が経験しているギグワークの例を中心にお伝えします。


まず、副業の客観的な情報から。

ネットで検索してみると、副業経験がある人は、就業人口の8%だそうです。
昨年日本の就業人口は6860万人。約550万人の人が副業をやっている計算です。
また、ほとんどは株式投資や、FXによる投資活動です。
それにサービス業や、運送業が続きます。

確かに、株式投資は職場で話の輪ができるほど手を出している人(とその予備軍)がおり、損した得したという話は枚挙にいとまがありません。

そもそも副業という感覚すらないかもしれませんね。
個人のお金を誰かに投資し、増やしてもらっている。自分が働いていない分、投資の本質に対して自覚が弱いかもしれません。

私が今回はじめたのは、その株式投資ではありません。次点の業態、食品配送の仕事です。

Wolt(ウォルト)という会社、ご存知でしょうか?2014年にフィンランドはヘルシンキで起業されました。まだ10年に満たない新規ビジネスです。

仕事は、お弁当を中心とした日用品の配送です。
ウーバーイーツ、出前館と並んで、国内に食い込んできました。
この会社と個人事業主契約を結び、空いた時間に配送をしています。

町を歩いていると、茶色や赤色、青色のジャンパーを着て、キャップをかぶった人たちが自転車で疾走している姿、一度や二度はご覧になったことがあるでしょう。
盛岡にも一昨年進出してきたので、そこに配達員として応募したのです。
(盛岡も都会。そう認めてもらっていたようで助かりました^^)

今では、仕事終わりや、休みの日。ご近所さんが注文するだろうな〜という時間帯に、青色ジャンパを着て自転車を乗り回します

ここで、Woltが導入している新しい仕組みについて触れておきます。

GIG WORK(ギグワーク)。日経新聞で読んだきり、頭の片隅にあったワードです。

これは、「単発の仕事」を意味する俗語で、日雇い仕事や、1時間程で終わる仕事を断続的に引き受ける形態を指します。
このギグワークという働き方、特に数時間単位の働き方は、過去であれば難しかったでしょう。ネットとスマートフォンという基盤が整地されて、初めて成り立つビジネスモデルだと実感します。

ネット上で、顧客の管理をして、10分、20分かかる仕事(配達)を細切れにアプリから発信する。

その情報を受け取った私は、
「どこの料理を何分に以内に受け取って」
「どのマンションの何号室に届けるか」
「その人には対面して商品を渡すのか、入り口に置いてくるのか」
手元の端末ですべてチェックできます。

専用アプリでお店の場所も、配達先もリアルタイム表示

受け取る方も同じです。
「頼んだ料理は、今作られているのか、運ばれているのか」
「何時くらいに到着予定なのか」
リアルタイムで手元のスマートフォンからチェックできます。

遅れるときも自動で通知。配達先の方と話す機会はほぼありません

シームレスな情報共有システムが、こんな軽業を可能にしているんですね。進捗ダイアグラムといいますが、いわゆる「進み具合」がわかることで、関わる人間誰もが、少し安心して配達、受け取りが可能になります。

ちなみに、このギグワークに従事している人は、就業人口の14.6%だそうです。
副業割合より多い、ということはギグワークだけで生活している方が多いということです。
それだけ「時間に縛られたくない」という働く側のニーズと、
「今このときだけ働いてほしい」という企業のニーズが合っているのでしょう。

※もちろん、「定職につくのが難しい(期間限定の仕事しか選べない)」という負のケースも忘れてはいけませんが、今回は一度脇へずらしておきます

20年近く、定時出勤、定時あがりしていた私にとって、
「10分だけ働く」という選択肢があることにいかに驚いたか。
仕事を実際に始める前から、その説明に驚きっぱなしでした。

次に、実際儲かるのか、という話しをしましょう。

結論からいうと、思ったほど収益はありません。
理由は2つ、地方都市では思ったよりオーダーが入らない。そして、単価がどうしても下がってしまうことです。

You Tubeで検索すると、数時間で1万円稼いだ人がその経緯を事細かに解説してくれています。1つの配達途中に、別の配達も同時に行うなんてことがザラにあるらしいと。これもネットで情報管理できているからこその最適化ですね。

ですが、どれも東京圏内の話。一歩関東圏から離れると、そこまでの注文は入りません。人口122万人の岩手では、人口1,400万人弱の東京に比べると、オーダーも比例して少なくなるのは、想像に難くないですね。

とはいえ、土日の昼頃、夕方は1時間に4回配達できるときもあり、気づいたら結構な額になっていることもあります。

自転車で配達、平日1時間、週末に6時間程働いて、月2万円程になる見込みです。本業もありつつ、年間で24万円程。お小遣いにしてはなかなかうれしい額です。

ちなみに、この収入は所得税が控除されていません。なので毎年2月から3月に手続きする確定申告(正確な納税額に調整し、追加で税金を払ったり、受け取る手続き)が必要です。
ふるさと納税や、住宅ローン減税をしたことがある人であれば、あまり抵抗なく手続きできそうですね。

毎月お小遣い程度に収入を得られることがわかりました。

ですが、こういった働き方をよく思わない方もいるかもしれません。
「わざわざ自由な時間を削ってまで、小銭稼ぎするくらいなら、同じ額を払って時間を買いたい。」

もっと好きにできる時間を確保したい、今の仕事以上に拘束されたくない。という意見です。

もっともな意見です。どうしても働いている間は、Woltとの契約になるので、配達している最中に仕事をほっぽり出す訳には行きません。短いとはいえ、拘束時間はどうしても発生します。

それでも、私は今の副業は魅力的だと感じています。
それは、配達自体が楽しいから。遊んでいるみたいだからです。

なぜそのような気持ちになれるかと言うと、日給、月給の仕事以上に、「ゲーム」の要素、より続けたくなる仕組みが働いているからです。

専門用語で言うと、ゲーミフィケーション。ゲームの良い点を実生活に組み入れることです。

想像しやすいように、4つほど例を出してみましょう。

1つ目、報酬が1回単位だということです。

月給をもらっていると忘れてしまう感覚

一度家に料理を運んだら、数百円もらえます。
運ばなければ0円、たくさん運べば報酬は倍増します。
働いた分がすぐに結果に結びつく。これは
「即時(すぐに働く)フィードバック」の原則
と呼ばれる仕組みです。
すぐに結果がわかる方が、人のやる気は倍増します。

2つ目、移動した距離が100メートル単位でボーナスになる、という点です。

もちろん、こんな運転はしません

Woltは何度か報酬体系を変えています。その中でも配達員のやる気を上げる(削ぐ)のは、配達までの距離ボーナスです。
100メートルごとに一定額の追加報酬が出る仕組みです。

こうすることで
「遠くの配達はめんどくさいし、儲からない」を
「遠くだからボーナスが多くでる!」という思考に変えているんですね。
これも、配達員の労苦にすぐに報いる、即時フィードバックの原則です。

3つ目、時間制限があり、かつ失敗してもリアルな賞罰がない(少ない)ことです

「爆発しても、あまり痛く無い爆弾」 まさに遊びです

まず時間制限。これはアプリから自動で計算されます。自転車に乗らなければ絶対に間に合わない。とはいえ、不可能な時間ではないような設定。カンタンすぎず、難しすぎない温度感が人のやる気をひきつけます。

解けそうなテスト問題を、あと10分かけて解く依頼
大学入試の数Ⅲ問題を、あと2分で解く依頼 どちらが本腰入れたくなるでしょうか。

そして、この制限時間にありがちなストレスについて、しっかりケアをしてくれています。それが、賞罰が(基本的に)無いことです。
さすがに料理をひっくり返してしまった時には自分で謝罪が必要ですが、
それ以外では、タイムオーバーによる言及や、叱責のような罰則はありません。
顧客に対しては、半ば自動的に謝罪の連絡と、場合によっては割引券が発行され、アフターケアが万全です。

時間を区切って、集中力を高めつつ、やる気を削るようなペナルティが無い。そうすることで、ゲームと似た環境で、没頭できるように設計されています。

最後に、この仕事がギグワークだということです。

やりたい時に始めて、飽きたらやめれば良い

フランスの哲学者、ロジェ・カイヨワは、著作の中で、遊びをこう定義しました。

自由な活動。すなわち、遊戯が強制されないこと。むしろ強制されれば、遊びはたちまち魅力的な愉快な楽しみという性質を失ってしまう。

ロジェ・カイヨワ『遊びと人間』

先程触れたとおり、配達中は仕事を放り出す訳には行きません。その点では、義務や責任をともないます。

しかし、それ自体をいつ始めるか、いつ止めるのか。ギグワークはその制限がありません。

カイヨワのいう、強制が、時間に縛られやすい日給月給仕事に比べて、弱いのです。
いつでもログイン・ログアウトできる」原則。
これも、ゲーミフィケーションを語る上で大切な仕組みだと言えるでしょう。

まとめると、
1つの仕事、100メートル単位の移動がすぐに報酬に直結する。
時間制限がありつつも、基本的にペナルティがない。
そして、いつでも始めて、飽きたらその日の仕事は終了すればいい。

これが本業以外に仕事をしていてもストレス少なく続けられる理由です。


話が長くなってきたので、あと2つの話題「健康」と「学び」については
後編でお話します。長文お読みいただきありがとうございました!

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