見出し画像

人は新型コロナにかかるとどうなるのか。

 皆様こんにちは。自分は今病室でこれを書いています。そう。何を隠そう、今年最大のビッグウェーブ、新型コロナウィルスに罹ってしまったのです!

 世はまさに緊急事態宣言。いつ自分や家族がかかってしまわないか、そうなったらどうしたらいいのか、皆さん戦々恐々としておられるのではないかと思います。そこで自分の経験が少しでも皆様のお役に立てればと思い、本稿を執筆します。

 但し、これはあくまで自分のケースであり、人によって、世代によっても症状は変わってくると思います。また私は医療の専門家でもなんでもありませんので、参考程度に留めて頂ければと思います。

罹患

 さて、志村けん氏、宮藤官九郎氏、石田純一氏らの罹患が伝えられ、「これは、遊び人の病気だな」と思われる向きも多いだろうが、残念ながらそうではない。自分の場合、飲み歩いていたわけでもなく、たまたま出向先に体調を崩されている方が出社されており、恐らくその方から打ち合わせを通じて、ウィルスをもらってしまったのだと思う。そしてその後1週間ほど、潜伏期間が続いた。

潜伏期間

 新型コロナウィルスの潜伏期間は多くが5〜6日と言われている。よく報道で2週間という数字を耳にするけれど、これは潜伏期間から発症を経て、検査陽性が確認されるまでの期間。ちなみにインフルエンザの潜伏期間は2日程度。

 さて、症状がないのが潜伏期間だが、全く何の症状も無いかといえば、今振り返ると自分の場合ハッキリあった。時々立ちくらみがしたり、軽いめまいを感じることがあったのだ。寝不足かな?などと考えたが、ちょうど東京都が自粛要請を出し始めていた時期でもあり、週末は家でゆっくり休むことにする。

発症

 月曜日。いつものように子供を保育園へ送る支度をしていると、突然、強い倦怠感に襲われる。巨人に体をがっしりと掴まれてるような感じというか。加えて、めまいや立ちくらみも強まっている。慌てて熱を計るもこの時は平熱。ひとまず子供を保育園に預け、風邪薬を飲んで寝ていると、熱はどんどん上がり、38℃台へ。

 翌火曜日。ひとまず診療所へ。先生曰く「なんとも言えないが、このような時期なので、金曜まで熱があるようなら保健所に連絡しなさい。」後に知るが、診療所ではインフルエンザの検査はリスクが高いために禁止となっている模様。

隔離

 二日目火曜日から家庭内隔離を開始。基本的に自分は寝室から出ず、出るのはトイレ時のみ。部屋から出た場合、除菌スプレーとキッチンペーパーで触った所を全て拭く。食事は寝室のドアの外に置いてもらい、終わったら返却。家族にはリビングで生活して頂く。もちろんコミュニケーションはすべてチャット。

ここで、家庭内隔離のために有効と思われるものを列挙する。
- 紙皿・紙コップ・割り箸等
- 家族の人数分の体温計
- 20日分のマスク
- 除菌スプレー、ウェットティッシュ等
手に入りづらくなっているものも多いが、家族と何も共有できなくなるので、今から準備できるものは常備しておくと良い。

症状1

 最初の五日間は、発熱、頭痛、倦怠感、めまいがメインで、咳や呼吸障害などはほとんど無かった。発熱により頭は常にぼーっとして、頭痛により頭を動かすことができない。倦怠感により少しの動作も億劫で、階段を降ろうものならめまいによって滑り落ちそうになる。

 また、よく言われる味覚障害だが、自分の場合はむしろ普段よりやたら味が濃く感じられ、食欲減退もあり、コンビニ弁当などはほとんど食べられない。このような状況の中、月末のため請求書を書いたり社員の給与を振り込むなど、最低限の社長業をこなしていった。

保健所(帰国者・接触者相談センター)

 金曜日。この日は前半の症状と後半の症状の境目で、午前中は平熱に戻るなど少し安定していた。ここで保健所に連絡するかどうか悩む。もしPCR検査で陽性なら、出向先のスタッフや自社の社員、取引先など最近お会いした方々にご迷惑がかかる…とか、自分のせいで保育園が閉鎖になったら…とか。

 恐らく同様に、他人に迷惑をかけることを恐れ、あえて保健所に連絡せず人知れず苦しんでいる人も多いのではないか。医療とのアクセスが保健所一本になってしまっている弊害であろう。

 ただ、自分の場合、このタイミングで息子が39℃の熱を出したため、やむなく連絡。月曜に感染したのだとしたら、4日目だ。

 電話は3回のコールで奇跡的に繋がった。事情を話すと、もう一度医師の診療を受けて、医師から連絡させよとの事。

 仕方なく事情を話して診療所へ行くと、待合室はいつものようにご高齢の方々で賑わっている。診察はわずか5分。前回と違ってフェイスガード姿の先生。やはり何もできない様子なので、保健所に直接電話してもらえるよう頼んで早々にその場を辞すことに。いつの間にか待合室には誰も居ない。無用のリスクを生み出してしまった虚しさを感じる。その後診療所から連絡があり、検査は順番待ちで早くて3日後の月曜。日曜に保健所から確認の連絡があるとの事。

 夜中に眠れずリビングで寝ている子供を遠巻きに見る。腹の動きで呼吸が正常なのを確認して床に戻る。

症状2

 続く5日間は、発熱、頭痛を残して倦怠感やめまいは後退していき、代わりに咳や息苦しさ、吐き気、悪寒、疲れやすさが襲いかかってくる。基本的な呼吸が苦しくなり、無理して息を吸い込むと咳き込み、しまいには吐きそうに。春先だというのに頭まで布団をかぶっても歯がガチガチ言うほど悪寒を感じ、メールの返信程度の動作でひどく疲れ、ぐったりしてしまう。ここまで来ると、もはや仕事は一旦忘れるしかなく、各方面に病状報告するのがようやくだった。

 厚生労働省のサイトを見ると、検査を受け入院している多くが無症状の人々だ。つまり自宅で七転八倒している「軽症患者」よりも、陽性患者の濃厚接触者のほうが優先されているのである。なんだかやるせなさを感じながらこの週末を過ごしたのだった。

PCR検査

 結局日曜日は何の連絡もない。仕方なくこちらから連絡するも、数百回のリダイアルでも繋がらず。なぜメールを受け付けないのか。翌月曜朝ようやく連絡があり、昼に指定の総合病院まで行けとの事。出来るだけ交通機関を使わず、可能なら自転車で行けと。

 タクシーの運転手にリスクを取らせるのも嫌なので、仕方なく愛チャリで、出来るだけ人通りの少ない道をゆっくり走る。身体中が悲鳴をあげており、普段5分の距離を、20分かけてようやくたどり着く。しかしこれが裏目に出た。

 自転車で来たことを告げると、元気そうだと思われたらしく、その後寒空の下1時間以上も待たされる羽目に。感染症患者は建物に入れてもらえないのだ。流石に体力の限界で、近くの花壇でぐったりしていると、ようやく看護師が登場。仮設テントに入れられ鼻に強く綿棒を突っ込まれるインフルエンザの試験。ちなみにあらゆるテストの中でこのテストが一番きつい。結果は陰性。

 その後ようやくプレハブ小屋に入れてもらえ、ここからは医師によるスピーディーなテストが続く。PCR検査自体は綿棒を喉の奥に突っ込むだけで、ものの10秒もかからない。ただしインフルエンザの試験と違い、検体の検査は外注となり2〜3営業日を要する(相応のコストもかかるのだろう)。

 その後医師の計らいでX線とCT検査を受ける。この『AKIRA』に出てくるようなドーナツ型の未来的な検査マシンがCTスキャナーである。早速横たえられ、リングの中に入っていく。幼かった日々。金田とバイクを飛ばしたあの日…などと回想シーンに入るまでもなく、あっという間に検査は終了。プレハブ小屋に戻ると、もうデータが送られてきている。

 医師が得意げにマウスのホイールをグリグリするのに合わせ、画面では輪切りとなった我輩の肺がスライス位置を変えてアニメーションしている。「ここを見て。X線ではよく見えないけど、CTで見ると、確かに白っぽい肺炎の症状が見える。」こうして、インフルエンザではない感染症による肺炎である事が確定したのだった。

検査結果

 検査結果を待つまでの数日間、症状はどんどん悪化していった。頭は朦朧とし、常に息苦しく、食事はほとんど喉を通らず、トイレまで行って帰るだけでフルマラソン後の様に倒れ込み、咳は止まらずリアルに「たすけて」という呟きが漏れる。夜は頭痛と悪寒で眠りにつけず、ようやく眠っても高熱で真夜中に目が覚めてしまい、やむなく解熱剤を流し込んで無理矢理眠る。次第に胸は痛み出し、ついには死を意識する…。

 そしてついに子供と入れ替わりに、妻までもが発熱を訴えだした。子供を介して感染したのだとしたら、6日目。「一家全滅」そんな言葉が頭をよぎった木曜の晩、総合病院の医師から電話がかかってきた。

「PCR検査の結果は、陰性です。」

 えっ…?うそだろ…。一瞬頭が真っ白になる。自分の中では「PCR陽性」→「保健所介入」→「入院」→「家族の濃厚接触者認定」→「家族のPCR検査」というストーリーが唯一の頼みの綱だったが、この結果によって全てが土台から崩れ去ったのだった。

 この先どうすればいいのか…。「…大丈夫ですか?」気がつくと電話口から医師の声が聞こえる。「ぜんぜん…だいじょうぶじゃ…ないです…」震え声でそれだけいうのが精一杯だった。

緊急入院

 精も根も尽き果て、呆然としていると、再び電話が鳴った。「来ますか?」「…ハイ。」神様とはこういう人を言うのだろう。前回の電話の様子から、毎分の呼吸数を割り出し、場合によっては人工呼吸器が必要との判断を下して、満床であるにもかかわらず病院に来いというのだ。さすがはプロフェッショナル。

 早速サイレンを鳴らして救急車が到着。取るものもとりあえずストレッチャーに乗る。救急車久しぶりだなぁ。前回は尿路結石だったっけ。月曜は俺この距離をチャリで来たんだよなぁ。偉いよなぁ。誰か褒めろよなぁ。などと考えているとあっという間に総合病院の救急処置室へ。

 血圧を計られ、採血され、点滴をダブルで。身体中にモニターをつけられ、酸素マスクをつけられ、いろんな薬を飲まされる。そしてPCR再検査。今度は喉の奥だけではなく鼻の奥にも突っ込まれる。今度こそ偽陰性にさせてたまるか、という医師の気迫を感じる。

 その後、病室に移り、点滴は1週間続き、再検査は無事(?)陽性に。保健所が電話で聞き取り調査し、家族は濃厚接触者認定され、翌日にはPCR検査。あれから3週間。全てのチューブが体から取り外され、ようやくひと段落したので今これを書いている。

(追記)息子は一時就寝中に酷くうなされたようだが、今は元気を取り戻した。妻は結局発熱以外の自覚症状は無かった様子。二人とも発熱が収まった後のPCR検査だったためか、検査結果は陰性。抗体検査はしていないので、感染があったかどうかは不明である。この場を借りて、最後まで支えてくれた妻に感謝。

画像1

おわりに

子供の頃、なぜかわからないが『震える舌』という怖い映画がよくTVで放送されていたのを覚えています。3歳ぐらいの女の子が水たまりで遊んでいて指を切り、そこから破傷風にかかってしまう。渡瀬恒彦、十朱幸代演じる両親も感染のリスクに怯えながら、家族みんなで闘病するというストーリーです。中でも中野良子演じる医師が頼もしく、何があっても最後までプロとして戦い抜く姿に感動を覚えます。

 今回改めて感じたのは、日本の医療スゲー!って事です。CTスキャナーで普通は見逃してしまう肺炎をいちはやく察知し、対症療法とはいえ点滴と投薬で病状は一気にV字回復。あのまま自宅に放置されていたらと思うとゾッとします。

 また自分一人が罹患してしまったばっかりに、これだけ沢山の人々にお世話にならざるを得ないこと、感謝と共に申し訳なさを感じます。同時に、検査や入院が順番待ちになるほど患者が増加してくると、きっと治るものも治らないだろうなぁと想像します。

そんなわけで、やはり皆さん、家にいましょう。なぜなら絶対に新型コロナにはかからない方が良いからです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?