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見つめていた未来がやってきた瞬間


19年前のこと…  2001年2月11日。

はじめて、自分のフラメンコ教室の発表会を開催しました。22名でスタートした第一回目。

わたしは、とにかくツイていました。

素晴らしい生徒さんに恵まれ、とてつもなく良いスタートを切ることができたのです。

そして10年後の未来の彼らに向け、メッセージを送ろうと考えたのを今でもはっきりと覚えています。

そのメッセージとは、、、

「カラコレス」

明るい曲調のフラメンコ曲。

わたしが教室の代表として発表会で踊る初の曲に「カラコレス」というフラメンコの曲を選んだのです。

最初の一曲は、わたしにとって特別な意味がありましたし、その後も特別な意味を持ち続けるだろうと予想しました。


「カラコレス」とは、スペイン語でカタツムリのこと。スペインでは、カタツムリは食用です。初夏から市場や屋台で売られ、バルのメニューとして定着しています。わたしがアンダルシアのセビリアという街に住んでいた頃、小さなバケツのような容器にはいった小型のカタツムリを買って帰る人たちを良く見かけ、最初は驚きました。

舞台でフラメンコ歌手は「カラコレ〜〜〜カラコレ〜♫」と朗々と歌い上げます。歌詞は、寒い冬に街角で焼き栗を売る女性のことを語ります。

フラメンコの盛んなアンダルシアではなく、スペインの首都マドリッドで近代に入り生まれた歴史的に新しい曲。踊りの際、よく女性が扇子を持ちます。

以前、日本のコンクール出場の際、決勝にこの曲を選びました。わたしが持つ振付は、バタ・デ・コーラという裾の長いスカートの衣装に、扇子とカスタネットを持ち難易度も高く、体力的にキツイものでした。

ところが、コンクールという舞台において、曲自体の格が問題になり、恩師はもちろんのことスペイン人コーチにまで猛反対され、最終的に断念したというちょっとしたエピソードのある曲です。ここで、フラメンコの曲には厳密な格付があるのだと実感したのです。

あたりまえのことなのに、自分自身では気づけませんでした。この学びは、後に舞台を構成・演出する上で大変重要なこととなりました。

そしてこの大切な曲を、第一回目の発表会で踊ることを決めたのです。当時の自分にとって技術的に最も難易度の高いものを紹介したい格別の想いがありました。


10年後の生徒たちにエールを!

まだ初回。にもかかわらず、全く疑いもなく10年後の自分たちの姿に思いを馳せたことだけは覚えています。10年続くかなど誰にもわからないのに…

とにかく生徒のみなさんへの最大の感謝の気落ちとして。

彼らにエールを送りたいと考えました。そして、この可愛い生徒さんたちが10年後大きく成長した際、わたしがなぜこの曲を選んだのかをお話ししたいと考えました。


そして10年は瞬く間に軽く過ぎ去り、ようやくのスタジオ創立20周年の発表会で、この曲を再び踊ることに。

この長きに渡り一緒に歩んできた仲間に捧げるつもりで…

そして、これを話す機会はそう簡単には訪れず、今ここでストーリーだけでも語ることにしました。見つめていた未来が実際にここにやってきたのを感じたのです。


これからも『いつか』を見つめ、その瞬間の到来を楽しみにしたいです。

 




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