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「教団X」 中村文則著 集英社文庫

ヘヴィー級の、ガツンとくる小説でした。


現在の日本の、所謂ウヨクとサヨクの、表向きは論争の形をとった幼稚な罵り合いは不毛です。そんな猿芝居の下に、本来あるはずの激しい情動は抑圧され、そうして去勢された人々は、忖度ばかりが上手なイエスマンになっていくのでしょう。


世界は必然的に監視社会になりますが、表面的には、良い子ちゃんばかりの美しい国が実現するかもしれません。こうした状況が、今日本で起き初めていると、僕は思います。


美しい国の窒息しそうな閉塞感の中で、抑圧された情動のエネルギーが反乱を起こし、この本に書かれているように、ある種の人々が、カルト、そしてテロに、そのはけ口を求めることになるかもしれません。


前半は、教団の中の性的な倒錯場面の描写が続き、後半に入ると、カルト・テロリスト・政府・企業が複雑に絡み合った壮大なテロが展開していきます。


ひとつの教団とある組織は、大規模な同時多発テロを実行すべく行動を開始します。


もうひとつの教団の教祖松尾正太郎は、死の直前の説話の中で、言います。

「我々は、平和平和と連呼する、戦争を望む国々から煙たがられる存在になるべきです」

「誰になんと言われようとも、私は全ての多様性を愛する」



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