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「将棋の子」 大崎善生著 講談社文庫

将棋の天才の子供だけが奨励会に入会が許されます。彼らは、天下無敵です。大人も全く歯が立ちません。しかし、全国の天才が集まる奨励会の会員の中で規定の年齢までに4段に昇段しプロになれる人は、たった20%とです。

この本は、プロになれなかった天才たちの物語です。わずか1分の秒読みに追われながら、偶然に発見した一手で栄光をつかんだ岡崎洋。その岡崎を追い詰め十中八九勝利を目前にした時に打った痛恨の失着により、将棋界を去った秋山太郎。


プロになれなかったものは、将棋の世界では敗者です。しかし、敗者全てに、頂点を目指したものだけが知るギリギリのドラマがあります。


この本の主人公とも言える成田英二は、序盤中盤の定石に全く興味を示しませんでした。終盤で逆転できると言う絶対的な自信があったからです。しかし、羽生善治をはじめとする新世代が序盤中盤を改革することにより、成田の将棋スタイルはマイノリティになって行きました。でも、彼は最後まで終盤にこだわりました。彼が見ていた世界はどんなものだったのでしょう。それは、誰も行き着くことのできない、神の領域だったのかもしれませんね。


大崎善生さんの「聖の青春」は傑作でしたが、この本も素晴らしい。


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