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「全世界史 講義Ⅰ、Ⅱ」 出口治明 著 新潮社

「全世界史 講義Ⅰ」 出口治明著

面白い!わかりやすい!これが高校の教科書だったら、世界史、好きになっただろうなぁ! BC3000年から現代までの5000年におよぶ人類の歴史。


アフリカで生まれた人類は、海岸沿いに世界に広がっていったのです。内陸に広がらずにまずは海岸沿いだったのは、道路が整備されているわけではないし、どんな猛獣がジャングルに潜んでいるのかわからないので、海岸沿いのほうが安全だったからとのことです。そうやって、人類は世界中に広がっていったわけですね。 ・・・この辺のことは、イントロの部分で書かれています。


BC3000から、物語が始まるわけですが、それは、そのころから文字で記述された歴史が残っているからです。 最初にメソポタミア文明が起こり、 BC3000にエジプトが統一され、BC2550頃にギザのピラミッドがつくられます。 BC2000頃には、中国の最初の王朝と言われている夏が生まれたのではないかと推測されています。


紀元前18世紀頃、インドにバラモン教が生まれる。

紀元前5世紀に仏教、ジャイナ教が起こる。

BC221に、秦の始皇帝が中国を統一。

BC206に、項羽と劉邦により、秦が滅ぼされる。その後、劉邦が漢を建国する。 ユリウス・カエサルが登場し、彼が暗殺された後、オクタウィアヌス(アウグストゥス)が、ローマ帝国初代皇帝となる(BC27)。

・・・と言う感じで、その後のローマ帝国の興亡、三国志や、バイキング、十字軍、イスラムの大帝国ウマイヤ朝アッバース朝の興亡、モンゴルから起った大元ウルスの興亡、14世紀のペストの世界的流行などについて書かれています。


世界は、お互いに影響し合っていると言うことがよくわかります。 例えば、唐で、女帝武則天が天皇となり国を統治する(天后になったのは660年、683年に天皇高宗死去、武則天は705年に死去)と、少し遅れて、日本でも、同じく女帝持統天皇が統治します(天皇時代:690-697年、上皇時代:697-703年)。これなんか明らかに、日本が中国の影響を受けた結果ですね。


イスラムは、穏健で、逆に十字軍を始めキリスト教は、相当無茶をしています。こういうことを勉強し直すと、イスラム教とキリスト教との関係は、複雑で根が深いことがわかります。 また、モンゴルのクビライは、傑出した政治家だったんだなぁと思いました。発想が新しい。クビライがとり立てたバヤン将軍は、南宋をほとんど無傷で接収するのですが、バヤンは、イランから来たモンゴル人貴族でした。クビライの時代、関税は撤廃され、科挙はなくなり、役人は、外国語ができないと出世できませんでした。グローバル化と多様性を共に実現していたんですね。

「全世界史 講義Ⅱ」 出口治明著 新潮社」

15世紀から現在までのお話です。 ざっと、まとめると・・・。

<15世紀> 1400年代は、明の鄭和の大艦隊による海の支配。

<16世紀> 16世紀前半は、明、ムガール朝、サファヴィー朝、オスマン朝、モスクワ大公国という5つの国に、ほぼ分割された時代となる。

<17世紀> 17世紀は、アジアの4大帝国(清、サファヴィー朝、ムガール朝、オスマン朝)が、最盛期を迎える。ヨーロッパにはルイ14世が君臨。

<18世紀> 18世紀は、清以外のアジアの3つの帝国が衰退に向かう。ヨーロッパでは、産業革命と、フランス革命の世紀。

<19世紀> 19世紀に入ると、清の力が弱まり、ムガール朝、オスマン朝、ガジャール朝がさらに衰退する。かわりに西洋列強が表舞台に踊りだす。ヨーロッパが初めて世界の覇権を握る。

<20世紀> 20世紀におけるふたつの世界大戦はひとつづきのものと考えられる。急成長するドイツ→第一次世界大戦に突入→大戦後の過酷な賠償金が第二次世界大戦の引き金になる。第二次世界大戦後、冷戦の時代を経て、ソ連が消滅し、世界はアメリカの1強になる。


いろいろ考えてしまいました。

1,ゴルバチョフは、すごかった。

彼に対しては、賛否両論あるでしょう。でも、撤退戦というのは難しいんです。自分たちの限界を知り、撤退を決意し、その撤退戦を見事にやり遂げたのではないかと、僕は思います。

以下に、書記長就任から失脚までの流れを見てみましょう。

1985年、ゴルバチョフがソ連書記長に就任。米ソ首脳会議、ゴルバチョフとレーガンが初めて会談。

1986年、レイキャビクで米ソ首脳会談。

1987年、ソ連シュワルナゼ外相が、1988年末までにアフガニスタンから完全撤退すると表明。年末に、米ソ首脳会議。

1988年、4回目の米ソ首脳会議。ゴルバチョフ、ブレジネフ・ドクトリンと言われた制限主権論の無効が宣言される。年末に、ゴルバチョフが国連総会で、ソ連軍50万人削減計画を明言。

1989年、ソ連がアフガニスタンから完全撤退。ゴルバチョフが「欧州共通の家」構想を掲示。もう、ソ連が東欧の国々の民主化運動を踏みにじることはないという宣言。その後、東欧革命が次々に起こる。ジョージ・ブッシュとゴルバチョフがマルタ会談、冷戦終結。

1990年、ソ連では、リトアニア、エストニア、ラトビアのバルト三国がそれぞれ独立。ソ連は解体への道を歩み始める。

1991年、アメリカを中心とする多国籍軍がイラクに空爆開始。フセインが停戦条件を受け入れる。ロシア共和国大統領選挙が行われ、ボリス・エリツィンが圧勝。ロンドンで開かれたG7にゴルバチョフが招かれる。ソ連で自由化に反対するクーデターが起き、エリツィンが鎮圧。ゴルバチョフの権威が失墜。12月にソ連内の11共和国がカザフスタンに集まり、ソ連の消滅が決まる。


2,20世紀後半から現在、世界は平和に向かうこともできたはず・・・しかし・・・

ふたつの大戦とその後の冷戦を経て、世界は平和に向かうこともできたはずだと思います。ゴルバチョフ、サッチャー、レーガンによる前向きな変化に希望を持った人は多かったと思います。


その後も南アフリカで、ネルソン・マンデラが解放され、アパルトヘイト体制が無くなりました。ドイツが統一しました。東欧革命が次々に起こりました。PLOのアラファトとイスラエルのラビン首相が、ビル・クリントン大統領を挟んでオスロ合意をしました。


2000年には、ヨハネ・パウロ2世が、歴史的にローマ教会が行ってきた、宗教戦争・十字軍・東西の境界分裂・異端審問・反ユダヤ主義・先住民族の強制的回収などの行動を過ちだったと懺悔しました。 世界は大きく変わるだろうと思われました。


そうした動きに影を落としたのは、湾岸戦争であり、イスラエルの首相ラビンの暗殺でした。そして、21世紀は、911ではじまり、大量破壊兵器保有を理由にはじめたイラク戦争が起こり、ISなどによるテロが多発しました。
さらにロシアのウクライナへの侵攻、イスラエルとガザの戦争が起きています。世界のバランスが崩れてきているように思われます。


最近では、 日本は右傾化が進んでいると言われ、ネトウヨなどと言う人達が登場し、また、ヘイトスピーチがなされたりしています。ナショナリズムの台頭は、世界各国で見られる現象です。

そして、人口の問題が現実に起き始めています。欧米や日本、中国、韓国では、急速に人口減少が進みそうです。世界の総人口も今世紀中にピークを迎えるのではないかと言われています。経済のシステムも、大きく変わっていくのではないかと思います。資本主義の限界についても、議論されるようになってきました。

さて、世界はこれからどうなっていくのでしょうか?


3,日本について考えたこと

・日本は、鎖国していてよかったのかもしれない。自由に貿易していたら、中国と同じようにアヘンでやられていたかもしれない。

・金と銀の交換比率を間違えなければ、日本はもっと余裕を持てただろうに・・。

・基本的に明治政府は冷静だったと思うけど、なんで日清戦争をやろうとしたのだろう?

・日本は傲慢になると、世界から嫌われろくなことはない。例えば、第一次世界大戦に参加したのはいいとしても、なぜ戦後日本は対華21か条要求などという過酷な要求を袁世凱に突きつけ、欧米からひんしゅくを買うようなことをしたのだろう?

・なぜ、リットン調査団が派遣され、「満州の主権は中国、しかし、日本の権益も尊重する」という報告書を、日本は受け入れなかったのだろう?・・・それほど悪い条件ではないのに。

・近衛文麿の「国民政府を相手にせず」とは、なんだったのだろう?なんでこんなことを言ってしまったのだろう?

・日本は、世界の空気を見ずに、国内や身内の空気ばかりを気にする傾向が強い。例外は、大久保利通とか、勝海舟あたりか?



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