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「日本の10大カルト」 島田裕巳 著 幻冬舎新書

世界(あるいは宇宙)に真理なるものはあるのかもしれないけれど、それを完全に解き明かすことは多分できないことだと僕は思っています。近づくことはできるのでしょうけれど・・・。

例えば、世の中には、「私は真理を知った」と宣言する人がいて、その人がグルになり、その人の周りに人が集まりカルトが出現するのでしょう。

僕は捻くれていますから、「私は真理を知った」と宣言する人がいたとしても「ほんまかいな?」と疑ってしまいます。だから、僕は絶対カルトに引っかからない・・・と思っているのですが、そういう人ほど危ないと言う人もいます。さて、どうなのでしょう?

もし僕が社会の中で孤立し絶望的な気分になっている時、優しい言葉をかけられたら、ついつい・・・ってなことにもなりかねません。カルトは、「新しく入ってくる人間に対してはとくに優しく接してくる(p.214)」からです。

カルト信者の多くは、「優しさ」に惹かれて入信するようになるようです。でも、信者になったら、さまざまな疑問を感じることもあるでしょう。「僕たちは殺生をしないのでベジタリアン食だが、なぜグルはあんなに太っているのだろう?あれで空中浮揚はできるのか?」と一瞬思うことがあっても、グルの指導のもと修行に励んでいたら、光を見るなどの神秘体験をしてしまったなんてことがあると、そのカルトから離れられなくなるかもしれません。そして、「グルは人々の業を背負っているから、あんなに太って見えるのだ」「そもそも空中浮揚は反重力なのであり、体重は関係ない」などと屁理屈をつけて自分を納得させることも考えられます。

例えば、オウム真理教の元教団医師だった林郁夫は、『「私たちが地下鉄にサリンをまくことで、強制捜査のホコ先をそらせば、オウムが守られて、真理が途絶えないですむのだから、サリンで殺され、ポアされることになった人たちも、真理を守るという功徳を積むことになるので(中略)だれも無駄死にということにはならないのだ」と考えて、実行に及んだと述べている。(p.86)』のだそうです。超エリートの林でさえ、こうしたとんでもない屁理屈を信じるようになるのです。

オウム真理教では、1988年9月下旬に、「在家の信者として修行に参加していた男性が、突然、道場のなかを走り回り、大声を上げて叫び出すという出来事が起こる。それに対して出家信者が水をかけたり、顔面を浴槽の水につけたりした。もちろんそれは、在家信者を正気に戻すための試みだったわけだが、結果的に信者は死亡してしまった。(p.71)」という事件が起きます。集中的な修行では、こうした激しい反応を起こす人は時々出てくるわけですが、その対処法を当時のオウム幹部たちは知らなかったのでしょう。その結果、その信者を死なせてしまいました。

それを目撃した一人の信者が脱会を申し出るのですが、オウム幹部たちは、「秘密の漏洩を恐れて、その出家信者を殺害してしまった(p.72)」のです。
これは、被害者だけではなく、殺害した側にとっても恐怖の体験だったはずで、自分も殺害されないように、より教団に忠実になっていったのかもしれません。

事故死を隠蔽しても、信者を殺害しても、その後に坂本弁護士一家を殺害しても、犯行はばれませんでした。「それは、麻原や一連の犯行にかかわった幹部たちにとって、一種の「成功体験」になった(p.74)」と考えられます。

こうしてオウム真理教の暴走が起こっていき、最後には松本サリン、地下鉄サリン事件で多くの人を殺害するということにまでなっていったのでしょう。

どこかで立ち止まることはできないのでしょうか?

僕は、オウム真理教を自分の意志で脱会した人のお話を伺ったことがあります。その人が脱会した最初のきっかけは、あるジャーナリストの「あなたたち、自分の頭で考えなさい」という言葉だったのだそうです。

オウム真理教のように大量殺人事件を起こしたり、信者から多額のお布施を徴収し家族を路頭に迷わせてしまったり、特定の政治勢力と結びつき何やらよからぬことを企んだりするカルトもありますが、全てがそうした反社会的な団体というわけではありません。

どこで、安全なカルトとそうでないカルトを見分けたらいいのでしょうか?難しい問題です。

これは、カルトだけの問題ではなく、あらゆる組織にも言えることかもしれませんね。そういえば、吉福伸逸さんは、「あらゆる組織はカルト的要素を持ち得る」ということを言っていました。あなたの属している組織は大丈夫でしょうか?あなたの住んでいる国は??

この本では、旧統一教会 (世界平和統一家庭連合)、オウム真理教、エホバの証人、顕正会 (冨士大石寺顕正会)、浄土真宗親鸞会、幸福の科学、サイエントロジー、ライフスペース、パナウェーブ研究所(千及正法会)、法の華三法行について述べられています。

なかなか、読み応えがありました。


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