父のこと2 壇ノ浦から銚子まで
「壇ノ浦から銚子まで」
僕が小学校三年の頃だったと思います。僕は、自分の苗字のことで友達からからかわれていました。「向後」と言う苗字を「後ろ向きだ」とか、囃し立てられたいたのです。
ある日、僕は、日本間で横になってタバコを吹かしている父に、なんで向後と言う苗字なのかと尋ねました。
父は、僕の様子から、何事か察したのかもしれません。僕の問いにはすぐに答えず、ハイライトに火をつけ、気持ちよさげに一服した後、僕にとって一生忘れることがないであろう大切な話を語り始めました。