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サンセバ映画祭2022日記Day4

19日、月曜日。6時に起きて昨日の日記ブログをアップして、朝食へ。それにしても昨夜の深夜のタクシー並びは辛かった。やはり、いざという時に徒歩で帰れる圏内に宿泊したいものだと痛感。徒歩だとおよそ1時間、昨夜タクシー並んだのが1時間。歩けば良かったのだろうか…。
 
さて、本日は月曜なのでバスはどんどん来る。メイン会場「クルサール」に向かい、8時半のコンペからスタート。フランスのクリストフ・オノレ監督新作で『Winter Boy』という作品。原題の仏題は「Le Lycéen(男子高校生)」。

"Winter Boy"

突然父親を亡くした17歳の青年が、その辛い日々をモノローグで振り返る作りの物語。しかし主人公はナイーブでひたすら未熟であり、なかなか共感を抱くことが出来ない。オノレ監督に特別の思い入れが無いので申し訳ないのだけれど、若い監督ならともかく、50過ぎの中年男性監督が17歳のゲイの男子高校生に寄り添い、彼の乱れた性生活を描くことに居心地の悪さを覚えてしまう。自伝的な内容であるとすれば感想も変わるけれど、それはちょっと調べただけでは分からず、申し訳ない。
 
今年のサンセバで特別表彰されるジュリエット・ビノシュが母を演じていて、大仰な演技が目立つ。いきなりカメラに向かって話し出して何事かと思うと、死んだ夫に語りかけているのだった。つまりキャメラの先の客席は死の世界だということか。なんということだ。
 
ただ、助演のヴァンサン・ラコストは相変わらず素晴らしかったことは言い添えておかないといけない。夜のバル街で見かけたけど、さすがに挨拶するには至らず。
 
いささかうんざりした気分を抱えながら会場を出て、カフェに入ってコーヒーで気分を変える。続いて11時半から、コンペ部門で『SURO』というスペインの作品。ミケル・グレア監督の長編1作目。

"Suro"

叔母から山と家を相続した女性とその夫が家に移り住み、コルク材の収穫期に外国人労働者を雇うことで起きるトラブルを描く物語。当初は睦まじかった夫婦仲が崩壊していく過程が語られるが、いささか意外性に欠け、夫婦間のパワーバランスの混乱も食い足りない。山火事が心配される大自然が背景にあるのに、それもあまり活かしきれておらず、中途半端な出来に留まっている。決して悪いとは言えないけれど、少し残念。
 
続いて、急いで会場を移動して、13時45分から「新人監督」部門でフランスの『Spare Keys(仏題:Fifi)』(扉写真)。女性と男性の共同監督作品であるよう。
 
夏休み、狭いアパートで大勢の家族と暮らすことにうんざりしている15歳の少女が、バカンスに出かけた友人の家に忍び込んでくつろいでいると、その友人の兄が帰宅してしまい、やがてふたりの奇妙な関係が始まる物語。薄幸なティーンものかと身構えていたら次第に愉快な展開になり、楽しくキュートな一本だった。友人の兄役のカンタン・ドルメールがとても上手くて、以前どこで見たのかどうしても思い出せないのだけれど、大物になりそうな予感。
 
続けて16時から「ラテン映画コンペ」部門で『Vicenta B』というキューバの作品へ。キューバ映画は久しぶりなので嬉しい。

"Vicenta B"

トランプ占い師の中年女性が、最愛の息子が海外留学で移住した悲しみから神通力を失ってしまい、彼女を頼って訪れた悩める若い女性を救えなかったことに苦しむ物語。キューバの町(ハバナでは無さそう)の素朴な美しさが目を惹き、土着信仰とキリスト教の融合が醸し出す精神世界が魅力的に映る佳作。
 
時間が空いたので、18時からバルでビールを一杯頂きながら、スマホでメールの返事を少し書く。外の席に座れて、柔らかい日差しと、少し冷たい風が心地良く、ここは天国かと浸る…。
 
18時45分から、コンペでチェコのペトル・ヴァクラヴ監督がイタリアと共同製作した新作『Il Boemo』。好きな監督なので、楽しみにしていた1本。
 
しかし、好事魔多し…。上映は、イタリア語映画に、スペイン語字幕のみだった!英語字幕が無い…。やってしまった…。これは、「海外映画祭一般上映あるある」だ。ラボエームがらみの話だろうし、何とかなるかと見続けようかと思ったけど、やっぱりしんどいので10分で退場。ああ。やってしまったなあ。出発前のチケット一斉予約時には焦っていたので、英語字幕の有無の確認まで気が回らなかった…。
 
イタリア語とスペイン語はいつも習いたいと思い続けているものの、もちろん全く出来ないので、無念の極み。明日以降の予約した上映回全て、再チェックが必要だろうか。うう、かなり面倒くさいぞ…。
 
しかし!こういうことがあっても、すぐに精神的に回復できるのがサンセバの素晴らしいところで、ヤケ酒と呼んだらバチが当たる至福の一杯を頂くために、バル街に舞い戻る。
 
1軒目、タコとチーズの串刺し、赤ピーマンとネギのカナペ、オムレツ。特にタコの柔らかさと塩味が絶品!

2件目で白身魚のコロッケと、サーモンとニシンと卵のカナぺ。コロッケが熱々のトロトロで超旨し!

3件目で煮トマトとハムとチーズのカナぺ。ああ、もはや言うことなし。

サンセバに毎年通うことを誓いつつ、21時にホテルに戻り、これを幸いに溜まってしまったパソコン仕事をこなし、今日は早めに就寝!







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