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ゆっくり一冊ずつ。

町田康さんの小説を読み始めた。わっけわからん!けども、叫びたい。めちゃくちゃカッコいい。

緊張しながら初めて来た野外フェスで、聴いたことのない音楽を聴いて、なんや衝撃的にかっこいいがその怒涛に奏でる音の波と群衆のわやくちゃに、容れ物がついていけず、縦揺れか横揺れかリズムの取り方がわからない。
うしろのほうにもどろうか、いや、こういう波にノレる自分になるべきか、とあれやこれや錯綜した若いころの自分がそこにいる。

遠くから声がする。

「ちょっとー!読んでぇやあーっ!」

あまりにもしつこく呼ばれるので、その姿をよく見ると、肉子ちゃんだった。思わず笑ってしまった。

そうだ、西加奈子さんの小説「漁港の肉子ちゃん」を読みかけにしていたんだった。

そしてある日、町田康さんが奏でるブースを見つけてふらふらっと寄って、今に至ってるんやった!

そうやそうや。我に返った。

町田康さんの音楽は、ちゃんと時間をとって、
次の日曜日の昼下がりに、お気に入りの喫茶店でゆっくり読むよ。

肉子ちゃんの世界に戻ります。
ふたたび手作りのしおりが挟んであるページを、指でたどる。寝る前の至福のとき。 
ありがとうね、肉子ちゃん。

そうやっていつも、私は小説の重ね読みができません。一冊ずつ。読んでいきます。

最後のページを閉じたときの胸に残る感覚を、吸い込んで味わうことがとても好きです。


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