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ナルシスト彼の瞳に私は映っていないのか?
最近、気になる同僚男性がいる。
その人と同じ顧客プロジェクトに携わることで話をするようになり、さりげないやさしさがとても行き届いている人で、気が付くと目で追うようになってしまった。打合せで何度か二人で一緒にご飯を食べながら、彼が何歳でどういうことに興味を持っていて、どこに住んでいて、どんな青春時代を歩んできたかも、聞かせてもらった。
常に私が気分を害していないかを気にしていて、配慮がとても厚い人。私の彼に対する好意が芽生えてると気づいたのは、つい最近のことだ。
彼はいつもいい香りがして、皺ひとつついていないスーツを着込み、まっすぐ前を見て姿勢を崩さず歩き、指先の動きは爪の先までなめらか。数十メートル離れていても彼を見つけられるくらいキラキラしているけど、有無を言わせないというか、隙のないオーラを纏っていた。
その完璧な身のこなしに、どこかとても違和感があった。
そして、どれだけ会話を重ねても、内面にはたどり着けていない気がした。
なんというか、言いようのない得体の知れない怖さもあった。
なのに「一緒にいて楽しいなあ」と思った。矛盾しているけど。
ある時、通勤電車で一緒になった。
違和感の理由が何となくわかり始めていた。
彼から私に一度も質問をされたことがないのだ。
私に好意がないからなんだろうなと思った。と同時に、ひとつ思い当たることがあった。
えい、聞いてみよう。と決めた。
「ねえ、自分のこと、もしかして大好き?」と聞くと
「そうなんです!僕自分のこと大っ好きなんですよ。」と満面の笑顔でが返ってきた。
「それって、ナルシスト的な?それとも、自分を肯定している感じ?」
「いやあ、多分僕はバリバリのナルシストです!」
とあっけらかんと彼は笑っていた。そういうとこがね、面白いからいいなあと思ったんだけどね。全肯定でした。さすがだ。
そうかあ。すべての点と点がつながって一つの線になった。一緒にいても独りぼっちな気がすること、とてつもなく優しくしてくれるのに、彼の目の前に私が存在しない感じがすること。
常に彼の言動やふるまいが「私の気持ちを害させていないか」ということにのみ焦点が当てられていること。それを優しさだと思い、私は好意を持っていたけれど、なんだか寂しく感じたのは「目の前の女性に優しくしてあげられる自分」にだけ、彼の軸があるからなんだろう。そうかあ。。。。
気づいてしまってから、少し寂しくなったけど、
まあいっか。
好意らしきものは、なりをひそめたけれど。
人としてとても好きなことには変わりはない。
またお昼ごはん、他愛のない話で機関銃トークしよう。
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