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コピーライター最後の挑戦

今日で8月も終わりですね。

9月1日を迎えると、日本のコピーライターの多くがあることを意識し始めます。

それは、「宣伝会議賞」です。

宣伝会議賞は、日本におけるコピーの最大の公募賞で、コピーライターはもちろん、一般の方も参加ができる、門戸の広い賞でもあります。

例年、9月1日は、新しい宣伝会議賞の課題が発表される月刊「宣伝会議」誌の発売日に当たります。
ゆえに、この日を迎えると、こぞってコピーライターたちは「新しい宣伝会議賞」に意識が向く、というわけです。

かくいう僕も、コピーライターゆえに、その一人に該当します。

…ですが、ここ数年は、ほとんど宣伝会議賞に応募をしていませんでした。
真剣に取り組むことはありませんでした。

昨年などは、課題が掲載されている宣伝会議誌を購入しておきながら、結局は、ひと作品も応募をしなかったという、なんともいえない経験もしています。

そんな僕も、かつては、この宣伝会議賞に大いなる意欲と野望を持って臨んだものでした。

いまの宣伝会議賞はWEB応募という形になりましたが、ひと昔前までは、ひと作品ごとに印刷をして郵送する応募形式でした。
なので、作品を封筒に入れたり、膨大な量になる場合はダンボールに入れて応募をしたものです。

僕が宣伝会議賞に最接近したのは、15年ほど前のことでしょうか。

当時は会社勤めのコピーライターだったのですが、サラリーマンが性に合わないと感じていた僕は、一日でも早い独立を目指す、というか会社をとっとと辞めたい、なる、いいんだか悪いんだか判断が微妙な目的で、必死に宣伝会議賞に取り組みました。
宣伝会議賞を受賞できれば、会社を辞めてコピーライターとして独立できる、と思い込んでいたんですね。

食事中も、入浴中も。
移動の電車の中でも。
就寝前のベッドの上でも、
常に宣伝会議誌とノート、それにペンを持って、まさに四六時中、宣伝会議賞のことばかり考えていました。

最終的には1000を超えるコピーをつくり、印刷してダンボールに入れて、祈るような気持ちで郵送したものです。

結果としては、最終選考まで残りました。
いわゆる「ファイナリスト」です。

これが僕にとっての、宣伝会議賞の最高到達点になります。

以降も、数年は宣伝会議賞へのチャレンジを続けましたが、力尽きたというところでしょうか、この年以上の気力を持って挑むことはなくなっていきました。

その後、賞を取らないままで独立をし、それでも、ありがたいことにクライアントの数は増え続け、忙しくなっていったこともあり、宣伝会議賞に対する意欲は薄れていきました。

「なんだ、宣伝会議賞なんか獲らなくても、成功できるじゃん」などと思ったことはありませんが、結果的にそんな感じになっていることもまた否めません。

独立後には、脚本家として、海外の映画祭で複数の賞を受賞することができました。
その経験もまた、宣伝会議賞に対する意欲を薄めてしまったのかもしれません。

年齢的なものもあります。
いま僕は47歳ですが、創作意欲こそ失っていないものの、気力・体力は年々確実に落ちており、それこそ15年前のように四六時中すべてを宣伝会議賞に捧げる、ということは難しくなっているのも実情です。

ただ…。

僕は、地元・鎌倉で地域活動を少し行っていることもあってか、市会議員選挙への出馬のお誘いをいただくこともあります。
一時はそちらに心が揺らいだりもしましたが、自問自答を繰り返すうち、自分は文筆家・芸術家としての道を極めたい、そんな人生をまっとうしたいとの己の本当の気持ちに気がつき、政治の道は自ら断つことを決断しました。

そのわりには、コピーライターとして大きな賞を獲ったことはない。
海外で評価されたのは、脚本の能力にすぎない。

僕の本分は、あくまでもコピーライター。
脚本家や作家を本業にするつもりはない。
コピーライターとして命がけで仕事をし、コピーライターの社会的地位を高め、自分のコピーライターとしての道を極限まで極めつつ、未来に向けてコピーライターという職業をつなげる。
これこそが、僕にとっての生涯をかけたミッションだと思っています。

ならば。
宣伝会議賞にいま一度、全精力を傾けて挑戦したい。
50歳を前にしたいま、コピーライターとして20年以上前線で戦ってきた僕が、宣伝会議賞を受賞したい。

そう、強く思ったんです。

前述の通り、年齢的に気力・体力が厳しいのは間違いありません。
なので、大好きなお酒も極限まで控え、規則正しい生活や食事、運動を心がけ、とにかく健康な心身を保つようにします。

そして。
15年前の自分のように。
締め切りの11月5日までの間、僕は、すべてを宣伝会議賞に捧げてみたいと思います。
当時のようにできるか、自信はあまりありませんが。

今回の宣伝会議賞への挑戦を、僕にとって、コピーライターとしての公募賞への最後の挑戦にしたいと思っています。
結果の如何を問わず、コピーの賞を狙うのは、今回が最後です。

さあ。
第62回宣伝会議賞が始まります。


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