見出し画像

”思いつき”定義集Ⅱ㉚「へ・ほ」

【変態】昆虫など動物の世界では幼体から成体への段階的転換を指す。人間については異様な性癖を持つ助兵衛(ストーカー、盗撮犯罪、痴漢など)。
容姿の様変わりと内面的な変質性を踏まえて比喩化すれば、相手によって態度を豹変させるカメレオン的人物も変態に当て嵌まる。身近にいるかも。

【ポピュリズム】政治的な思想と運動の一つ。ポピュラーから転じているので、それ自体を是非することはできない。政治的イデオロギーとして広く用いられる保守と革新も突き詰めれば「人気の問題」と言えなくもない。しかし「人気取り」を第一義とする手法には問題点もある。

《パターン①》デモクラシーの自殺。デモクラシーの要諦は人びとの意思表示にあるが、その意思をコントロールすることは可能である。例えば、選挙では広告代理店のプロが絡む。典型的なのはアメリカ大統領選挙。広告にはカネがかかる。ゆえにカネがなければ大統領にはなれない。日本でも規模は小さいが本質は同じ。
 そもそも、わたしたちは日々情報の渦に巻き込まれているが、すべてを検証する能力は誰にもない。その帰結として広告を含めて「踊らされる」こともあり得る。あるいはケインズの言う「美人投票」(長い物には巻かれよ)という心理も働く(かもしれない)。
 かくして、人気者を権力の座につけて自分の首を絞めることもある。ナチス・ドイツでゲッベルス率いる宣伝省が独裁の土台になったのは偶然ではなく計画的必然であったことは覚えておきたい。ヒトラーがデモクラシーの落とし子であったことは言うまでもない。

《パターン②》デモクラシー自殺後の独裁化。あるいはデモクラシーもどきの長期化。独裁者であれ権威主義体制のトップであれ、デモクラシーそれ自体を否定することはない。近代にあって独裁を含む権威付けには「人びとの支持」が(嘘でも誤魔化しでも)必要だから。プーチンも習近平も金正恩もネタニヤフその他もデモクラシーを否定したことはない。
 かくして「人気者」は取り巻きに支えられ(取り巻きを飼いならし)、批判者を弾圧しながら(「テロリストは殺せ!」)「人気者」であり続けることが可能になる。

 このように、実際であれ捏造であれ「人気者」を祭り上げることの危険性は常にある。人間が時に支配されたがる存在であることを認知したうえで、その脅威を可能な限り排除する知恵が社会には求められている。危険性へのセンス(センサー)こそ真っ当なデモクラシーのための原基。説教臭いと思うなかれ――事実が裏付けていること。

◆注:この世に完璧な政治制度など存在しないし、この先もあり得ない。チャーチルが言ったように「よりましな」制度としてのデモクラシーに過ぎない。繰り返しになるが、その最大の欠点は自殺可能なこと。個人的にはデモクラシーが真っ当に生きながらえることを望む。
◆推し映画:『善き人』(英=独、2008年);個の脆弱さ。『アイヒマンの後継者――ミルグラム博士の恐るべき告発』(米、2015年);人間は残虐になれる、その証明(留保条件付き)。『否定と肯定』(英=米、2016年);ナチスの犯罪をめぐる裁判。『ヒトラーへの285枚の葉書』(独=仏=英、2016年);デモクラットの実践的闘争。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?