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雑多な雑感――NPOの戯言⑰

《「田舎ぐらし」の悲喜こもごも①》
 「田舎ぐらし」をはじめて2年。《自己紹介》の折に触れた田舎生活の端緒は必ずしも悪いものではなかった。ポツンと3軒家の山中(理由は知らないが仲は良くない)。ただ地方の大動脈とも言える2つの国道を結ぶ市道が目前なので大型車やクネクネ道をバイクが嬉々として疾走して騒々しい。ポツンとしている気はしない。
 祖父母がほぼ自力で建てたあばら家だが固定資産税を抜きにすればタダ。都市部での家賃を考えると感覚的には週休4日で生活できそうな感じ。格差甚だしい現今、わたしのように貧乏神に取りつかれた「経済的敗者」には相応しい。芭蕉が杉風に譲った庵を思えば立派なもの。間違いない。
 ところが、元アーバン・ボーイにはあまたの敵との闘争が待っていた。虫との飽くなき戦い。啓蟄を境に多様な生物が元気ハツラツ! オロナミンCなど不要。夏にかけてハエや蚊やゴキブリは偏在するもの。些細なことだ。害がなければ数種に及ぶアリやクモ、蜂も見馴れたものだ。ミミズも害にならないし蛇の出現にも耐えられる。
 ただ、大量に遭遇すれば話は別。一日5回クモの糸と相まみえ、ゴキ(死体含む)に1回は遭遇、ときどき強敵の蜂やアブの侵入を防ぐ必要も。ゲジゲジは弱いくせに侵入を繰り返すバカだがちっともかわいくない。その他わけのわからない虫たちが蠢動し続けるのがあばら家の特性である。
 夜はネズミやヤモリが運動会を繰り広げる。周囲が静かなだけに騒がしさは都会の安アパート以上かも。ヤツらにわたしの怒号は聞こえない。早朝からカラスが喚き散らす。春眠を遮るウグイス嬢もあなどれない。
 わたしとって最大の敵はムカデ。なんせ毒性が強くなかなか死なない。扉を開けるたびに緊張が走る。マジで。大小含めてアリもクモも数を恃みに無敵さを誇っている。断言するが人類が滅びても昆虫だけは生き残る。
 とまれ、田舎の山中は生態系の何たるかを理解するには最適である。小さな生き物たちが――人間的に表現すれば苦闘を繰り広げているのだ。それを学んだとて何になるのか……? 今のところ答えはない。

◆注:タヌキに遭遇することもある。正直かわいい(警戒心はかなり強く、にらめっこの挙句向こうから逃げていく)。サルとも遭遇するが正直憎たらしい(警戒心もなく図々しい振舞いで謙虚な私とはそりが合わない)。

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