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マインドデトックスの旅 2日目

目覚ましの前に目が覚めた。時刻は6時半。

ホテルの大浴場に行き、体を清める。
コンタクトをつけ、髭を剃り、髪を整える。
昨晩の飛行機内でもらったバームクーヘンを口に運ぶ。

今日は、昨晩予約した上野の森美術館で開催されている「モネ -連作の情景-」展を見に行く。
開演時間の10分前には着くようにホテルを出て万事順調。そう、ここまでは。

上野公園に向かう途中

上野公園の階段を登る時。
出会ってしまった。
荷物が重そうで困っているおばあさん。

荷物を階段の上に運ぶくらいなんてことないと思った。声をかけ、荷物を預かり、階段をあがる。

階段を登る足が急いでいたので
「ゆっくりでいいですよ〜」
と声をかけたら予想外の返答
「約束があって。。。急いでるの。。。。」

お、まじか。
ちなみにお相手は?
「姉なの」
電話かけてみては聞くと
「忘れたの。。。」
ちなみに集合時間は
「8時50分」
現在の時刻8時55分。
とりあえず…
電話番号を聞いて「姉」に電話をかける。
電話に出たと思ったらまさかの事態。
「もう、バス出ちゃうって!あと何分くらいでこれます?」

僕1人なら5分もかからない。
でも、階段を上がることすらままならないおばあさんとだとどうしても10分はかかる。

時間はない。
やるしかない。
おんぶだ。

近くを通りかかったお兄さんにも荷物持ちを手伝ってもらい集合場所まで残り600m。朝9時の上野公園でおばあちゃんをおんぶして走る。こんな朝を誰が予想できただろうか。

無事に「姉」とは出会えたものの
予定していたバスには乗れなかった模様。

とにかく、朝から人助けに体力のほとんどを使ってしまった。もっと朝ごはんちゃんと食べてたらよかったという後悔も束の間、ようやく辿り着いた「モネ -連作の情景- 」展

茂みの中から上野の森美術館

上野の森美術館という名にふさわしいアングルでの記念撮影を終え、いよいよ美術館の中に。

入り口にロッカーが設けられていたのでリュックと上着を預け、有料の音声ガイドを受け取る。

3時間。
ゆっくり、じっくり、丁寧に観覧した。

最初にあったモネの写真と説明
連作 ウォータールー橋 曇り
連作 ウォータールー橋 夕暮れ
連作 ウォータールー橋 日没
チャリング・クロス橋
黄昏時の流氷
連作の代表作 「睡蓮」

結論。
モネの人生の出来事と共に変化していく作品群を見れて満足。また、「睡蓮」の知識しかなかったモネに対する知識が格段に広がり「連作」という作品創造の手法がモネのアイデンティティであることが理解できてよかった。
他にも展示方法(照明やレイアウト)も勉強になることがあり、入館料以上のものを得た気がするので大満足。

でも、完全に満足だったわけではない。
一番の理由は、大変おこがましい理由ではあるのだが、他の観覧客の方々の振る舞いが僕は気に入らなかったのだ。
全員が全員ではない。でも大半の方々がそうだった。もちろん、みんなお金を払ってみているわけだからどのように観覧するかは自由だ。そこに観覧のお作法もなければ、特段のルールもない(撮影禁止等はあるが)。

でも、ほんとにやるせない気持ちになったのだ。

例えば、モネの絵画を観覧するとき、多くの観覧客が指定されているボーダーラインギリギリまで身を乗り出して、顔を近づけてみる。そして、次の作品に歩みを進める。
これが観覧客のベーシックの行動だ。

近くで見たい気持ちもわかる。でも、モネの作品は近くで見ると印象派であるからこそ筆のタッチが大きかったりして、近くで見るとよくわからないものになる。なので、あと5歩下がって全体を俯瞰するように観覧することでモネの作品の良さがよくわかる、と僕はそう勝手に思っているのだ。

モネはディティールで勝負しているわけではない。モネ自身「雰囲気」というものを大事にしてて、全体でその雰囲気を描こうとしている。

加えて、画家が描くとき、近くから見るだけで描くことはまずない (作風にもよるが)。描いて、立って、全体を俯瞰して、バランスを見て、また、描いて。大体の人が全体の雰囲気を見て、バランスを見て決めるのだ。モネなら尚更。
モネの連作は、一枚で完結するものではなく、同じ場所のを異なる時間で描き、それぞれのバランスを見て、連作の全体で色味や雰囲気を調整しながら描いたりしている。
だからこそ言いたい。
近づくだけじゃなくて、少し離れて見て。と。

でも、観覧客を見てて感じた。
そんなことは関係ないのだ。

この展示会に来たことが大事なのだ。
ここに足を運んでモネの作品を見たという事実が大事なのだ。それを写真におさめ、SNSに投稿し、時代の流行にのっていることを自他ともに認識することが大事なのだ。

それが顕著だったのが最後のブース。
モネの代表作でもある「睡蓮」だった。

搾取される「睡蓮」

じっくり見る前に写真で撮る。撮ったら顔を近づけ「すごい」と呟き、足を進める。俯瞰して見ることもなく、足を進める。
携帯で写真を撮ること自体が悪いと言いたいわけではない。人も多いから急いで見る気持ちもわかる。
でも、この様子を見たときに、作品が現代の文明の力によって簡単に消費されてしまい、それが「搾取」されているように僕は感じた。

展示空間にもう少しゆとりがあり、足元に観覧する際のおすすめの位置に目印でもあるとなお、良かったのではないかと思う。

人の感情を動かす力があるのがアートならば
人の行動を変える力があるのがデザインだと。

そんなことを考えながらあとにした上の森美術館。気がついたらお昼過ぎ。

近くにある東京藝術大学内の学食で軽くお昼を済ませる。驚いたのは、学生みんなオシャレ。さすが、芸大生。藝大の雰囲気を味わい、次に向かったのは国立科学博物館。
以前からずっと行きたかった場所。

修学旅行の小中学生が多かった今日の国立科学博物館

宇宙や動植物、鉱石、星座、科学。。。
様々な分野の資料が豊富にあり、何より、アートや建築とは異なる分野だが、切り離すことはできない分野が多いゆえに、刺激は大きかった。

1階からホールを見上げる
昔の振り子時計
過去の地震測定器による記録
現在、国立科学博物館で開催されている企画展
縄文時代の男性の人骨
左から弥生人、縄文人、縄文の前の人の頭蓋骨と顔の模型
何か動物の骨 横顔のフォルムが綺麗だったので撮影
地域によって異なる土の色 ちなみに、全部沖縄県の土
海の生き物たち大集合
鉱物のコレクション
吊るされた(魚竜)の骨 フタバスズキリュウとか言ったような。。。
二アンモナイトが並ぶ化石
地球館の一階 標本尽くしだった

ただ、展示物のボリュームが多すぎてとてもじゃないが半日では無理だった。なにより、朝のおんぶダッシュで体力を使ったのがここできた。とても眠くて、休みながらだったが初の国立科学博物館を体力がもつ限り楽しんだ。

外に出ると東京が街頭で色づき始めていた。
明日の友人の撮影に向けてロケハンをし、本日からお世話になる友人宅の最寄駅を目指す。

日没後の上野駅前

久々の満員電車に揺られ、すでに満身創痍。
友人と待ち合わせし、駅近くの中華料理屋でキムチチャーハンの餃子セット、半ラーメン付きを胃袋に流し込む。
エネルギーチャージを済ませて帰路に立った。

明日は午前中に親戚に挨拶を。
午後は少し建築を巡った後、夜に撮影。

また明日も頑張ろう。では、おやすみ。

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