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第6回 水井章人と下高井戸から三軒茶屋くらい

写真企画「本当は嘘なんだ〜27枚だけ撮らせてください〜」
https://note.com/yoshiokahikari/n/n44e069495a88

「え、それ俺もやりたいです。笑」

川島くんの回の記事(第3回川島祐樹と豊島園から西高島平https://note.com/yoshiokahikari/n/n51c8857ed983)を上げた頃、ツイッターでリプライが飛んできた。
この語尾の「笑」がどれくらい笑ってるのかに私は思いを巡らせることになる。
撮ってみたいは撮ってみたい。せっかく声をかけてくれてる。でも冗談だったらあれだな。私にわざわざ撮られに来るってどういうつもりだろう。写真を撮る人だから、カメラ持ってお互いを撮り合いましょうってやつだったらどうしよう。
どっちだろう。どんくらいほんとのやつだろう。
笑付きの一文にしばらく悩んだ数日後、勇気を出して、撮影させてくれませんか、と連絡してみた。

下高井戸駅に15時。
5分前に到着した私は、京王線できますか?と、改札出た吉野家あたりにいます、と連絡する。
ぼーっと突っ立っていたら、向かいの本屋さんから金髪でヒョウ柄のブルゾンを着たおにいちゃんが出てきた。おにいちゃんは一直線に私の方に来て、こんにちは、と私に言った。

今回撮影するのは、水井章人くん。
水井くんは、映画学校の同期の短編作品によく出ているので、一方的に知った気になっている俳優部さんです。
あ、水井くんだ。あ、これも水井くんだ。と、なる。
出会ったのは、前に撮影した川島祐樹くんと同じタイミングで大体1年ちょっと前。2人は同じ作品で親友の役だった。
別作品だけど同期の撮影で私の家を使ったときにも会っていて、そのときの印象は近所の気さくなお兄ちゃん、という感じ。
誰にでも分け隔てなく仲良くなれる人、なかんじ。
その現場で私の分のお弁当がなくて1人キレているところを見られているため、食い意地張った女と思われているかもしれない。そのとき、俺のちょっと食いますか、と静かに言ってきてくれたのを憶えてる。ありがたく断ったのも憶えてる。
誰にでも分け隔てなく仲良くなれる人ではない私からすると、主に何を食べて育ったら誰にでもフラットに接することができるのか不思議でならない。
川島くんと水井くんが仲良いことも知ってた。川島くんと散歩した時、水井くんの話をちょっとした。でも直接ちゃんと話したことはそんなにない。
撮影の合間に私のもとにふらふらと寄ってきてなんとなく話をして、またふらふらと他の人のところに寄っていってなんとなく話をしている水井くんは、本人いわく、自分は犬か猫かで言ったら犬っぽいと思うって言ってたけど、私はそのどちらかで言うなら猫っぽい人だと思います。でもたしかにむやみやたらに人懐こそうなところなんかは芝犬っぽいです。
あれですね、犬か猫かでむりやり例えなくてもいいかもしれないですね。

川島くんと水井くんがちびまる子ちゃんで例えるなら大野くんと杉山くんだとして、私は女バージョンの山根あたりで、同じクラス内で例えるとそういうかんじの、水井くんと私。
正直、不安でした。
お腹も若干痛かった。

この時点で私が水井くんについて知ってること。
1.気さくなおにいちゃん
2.川島くんの友だち、そしていろんな人の友だち
3.背が高くて細くて手足が長い
4.フィルム写真をよく撮ってる

私は通勤に京王線を使っているからよく通り過ぎて名前はほぼ毎日聞いていたけど、降りるのは初めての下高井戸。
駅の出口がさっそく右と左に分かれていて、一瞬止まった水井くんに、適当ですいつも、と言うと、ですよね、と水井くんは適当そうに左に曲がった。
今日はどうなるだろう。緊張しながらポケットの中のカメラを握りしめていた。

住みやすそうな静かなまちだった。
人もまばらな商店街を適当に進んでいく。
なんとなく下高井戸シネマに向かってみよう、と決めて(2人とも行ったことない)、こっちにありそうという方向に歩き出し、やっぱなさそう、とまた違う道を選ぶ。
道の途中、シャッターが閉まっていたけどお豆腐屋さんを見つけた水井くんが、お豆腐屋さんだ、と言った。お豆腐屋さんを見ると地元を思い出す、と。近所にあったらしい。タダでお豆腐をもらうこともあったらしい。それがとってもおいしいお豆腐だったらしい。
水井くんは群馬県のきりゅうってとこの出身だ。きりゅうは、桐生って書く。
もちろん私は行ったことも見たこともないので、かっこいい地名だなあとか、そういうアホみたいな感想しか浮かばないので言わなかった。しかもわりと群馬と栃木を混同しながら生きてるので、群馬についてもとくに触れることはできなかった。

どんな子どもだったか聞いてみた。
水井くんは、お兄ちゃんとお姉ちゃんがいる。お兄ちゃんの影響で始めた野球は、3ヶ月で辞めたらしい。なんで辞めたんですか、と聞いたら、ん〜飽きちゃって、と水井くんは言った。
たしかに運動神経も要領も良さそう。足も速そう。
そのイメージは全部当たってて、野球はすぐにある程度できるようになっちゃって、野球をやめた後はバスケを始めたという。小学校から、高校の終わりまで。
バスケは何で続いたんですか、と聞いた。
全然飽きなかったから、自分より上手い人が上の学年とかにもいて、と言ってた。負けず嫌い。
バスケは何人でやるんでしたっけ、とバスケの記憶が高3の体育か球技大会くらいで止まってる私は尋ねた。1チーム8人くらいだったかなと予想していたけど、5人ですね、と言われて、思ったより少なかったです、と水井くんからすると素っ頓狂な返事をしてしまう。
サッカー部と同様、高校生の時の私は男バスも男バスってだけで話すのがいやだった。あっちから話しかけられることもなかったけど、なるべく必要以上に会話しないように、関わらないように生きていた。
そう考えたら水井くんは、ほぼはじめての、必要以上に会話した(元)バスケ部かもしれない。
バスケ部と関わらないように生きてた高校生の私へ、あんた10年後バスケ部と散々しゃべって散々歩くよ。水井くん、足の下にボールを通すやつは当たり前にできるんだろうか。私はあれ、一生できない気がする。

運動神経の良い水井くん、水泳はちょっと苦手だったらしい。
小学生の時、泳げない子たちだけが集められる水泳の授業があって、そこで泳げるようになったという。
ちっちゃい頃海に行った時にお兄ちゃんとお姉ちゃんと一緒に泳いでいたら多分ふつうに泳げるようになってたと思うんですけど、泳がなかったんですよねえ。
何で泳がなかったんですか、と私は聞いた。
海に入るって行為がよくわかんなかった。子どもながらに。あと、濡れるのが嫌で。
なるほど。ちょっとわかる。今の私がそうだ。
海に入る意味がわからない。
意味もなく濡れるのが嫌い。
杉山くんと山根も、ちゃんと共通点はあるのかもしれないなあ。

ぐるぐると商店街をまわった私たちは、世田谷線沿いに歩くことにした。
短くてちんまりしたかわいい電車だった。緑バージョンと、青バージョンと、黄色バージョンの電車が行き来する。
線路沿いの開けた道は景色がよくて、映画撮れそうですね、と話した。

私は水井くんの豹柄のブルゾンを横目に歩いていた私は、動物とか飼ったことありますか、と質問した。
猫も犬もある。金魚は、おばあちゃんが飼ってました、と水井くんは言った。
実家にいる亀は、もう20年以上生きてる。

こんな小さいのから

こんなに大きくなったらしい。
私に言われなくても亀は長生きだと思うけど、長生きしてほしいですね。

2駅くらい歩いて山下駅までたどり着いた時、水井くんがふらふらと駅に吸い込まれていく。
え。
乗ってみませんか、と水井くんは言った。
水井くんに続いて、私も駅のホームに立つ。
水井くんはホームにある注意事項の看板を律儀に読み上げたりしながら、何色だと思いますか、と私に聞いた。
え。
私たちが乗る電車の色のことだった。
私は本当に適当になんとなくで、黄色がいいと言った。水井くんが何色にしようか悩んでる途中、水井くんの背中の方から電車がやってくる。あ、オレンジですね、と私は、水井くんが何色か言うのを待ってあげればよかったと言った直後に後悔した。
オレンジ色の世田谷線にのった。
初めて世田谷線にのった。
2両しかない後方の車両は、座席に座ると後ろ向きに進んでいく。後ろ向きに進むのが楽しくて私はヘラヘラしていた。
水井くんは2両の結合部分が丸い円のゾーンになってるのが楽しかったらしい。興味深そうに車内を色々見てたけど、乗り物好きなのかな。
周りが騒がしい場所で人と会話するのが苦手すぎて(何回も聞き返されて何回も言うのが嫌&話が聞こえなくても聞き返せなくてそこで適当に相槌打って会話が終わる)、電車を降りたら聞こう、と思っていたけど、聞き忘れたことをこれを書いていて思い出した。でも別に核心に迫る質問でもないしまあいいや。
人生で一度も核心に迫る質問をしたことはないけど。

どこまで乗っても料金は同じ150円の世田谷線。
私たちは2駅先の世田谷駅でおりた。
引き続き、静かなまちだった。
東京はどこにいっても永遠に人が多いわけでも騒がしいわけでもないって知るとちょっと安心する。
道にある掲示板の地図をみて、なんとなくこっちに向かえば下高井戸、こっちに向かえば三軒茶屋、と現在地を確認する。
別にルールを決めたわけではないけど、散歩中Googleマップなど地図アプリは基本見ないっていうのが毎回なんとなく暗黙の了解になっている。

また世田谷線の線路沿いを歩こうとしていたはずだけど、気づいたらちょっと道を逸れていたらしい。
大きな通りに出てしまった私たちは、ビルが立ち並びちょっと都会っぽくなってしまった道で世田谷線どこ?ここはどこ?と口々に言いながら世田谷線を探す。
本当に迷子になったときは大きな通りに出るとホッとするけど、今回の迷子企画(というと語弊があるけど)に関しては大きい通りに出てしまうと2人で不安になる。※あまり写真が撮れないから。
このへんで入ってみますか、と適当に横道に逸れて、また歩く。
水井くんは、狭い道や階段の道を見つけると決まってそっちを選んだ。
なんか楽しそうだから、と足が長いのでわりと急な道でもスタスタ歩いて行く。

少し薄暗くなってきた。
でも日、長くなった。
春になるんだな。まだ先だけど。

水井くんは春生まれ。4月がお誕生日だ。
30歳になる年の始まりに、この企画に参加できてうれしい、やっぱ出会いが大事ですね、と言ってくれた時、私は川島くんの時と同様に恥ずかしいほどの感謝の言葉を告げられる感謝タイムが始まるのかと身構えたのだけど、水井くんの感謝タイムはわりとあっさりだったのでホッとした。
水井くん、今年は短編映画を撮る予定らしい。すごい。
吉岡さんも召喚したいです、と言われて、ぎょっとして出る側ですか?と聞いてしまったけど、普通にスタッフとしてだった。
何を前のめりになってるんだ。何で出る側だと思ったんだ。
水井くんがどんな映画を撮るのか、楽しみです。つまんなかったらつまんないって言っちゃうかもしれない。その一言が発端で何人か敵に回しかけたことがある。※敵にはなってないはず。
でも映画は誰かにとってつまんないものでも、誰かにとって宝物になるもので、それってものすごく希望。
ではないでしょうか。

この道さっき通ったな。
通りましたね。
企画テーマの通りしっかり迷子になっている私たちは、前に進んでるはずなのにたびたび同じ道に出てしまう。
タイムリープしてるみたいに思って、時間が戻せたらどうしたいですか、と聞いてみた。
うーん、と悩んだあと水井くんは、10分だけ時間を戻して、10分時間が経つのを楽しみます、と答えた。
なんと。玄人みたいな楽しみ方。もしやこの人、時間戻したことあるんじゃないの。
タイムトラベルの経験者みたいな回答だ。

前を歩くオレンジに光る首輪をつけた芝犬のおしりを見て私が、食パン、とつぶやいたのを水井くんは聞き逃さず、しかもダブルソフトですね、とすぐに何を言ってるのか理解してくれてうれしかった。
水井くんはダブルソフトが好き。
私もダブルソフト好きだけど、12枚切りの食パンをトーストしてカリッカリにしたやつも好きと話すと、あああわかります、言ってくれた。
このところちゃんと朝ごはんを食べた記憶がない。水井くんも同じくらしい。

自分の後ろでごちゃごちゃ人間どもが話してるのが気になったのか、芝犬がチラチラと私たちの方を振り向いたりしていることに気がついた。
ついには立ち止まってしまった犬を、飼い主のおばちゃんがリードを引いて歩かせようとしてる、けど犬はそれ以上に踏ん張って、私たちに撫でられようとしている。
今ぼくの話してましたよね?という目で見上げられ、尻尾を振る犬に追いついた私と水井くんは、人懐こく寄ってきたダブルソフト似の桃太郎(芝犬・2才)を撫でさせてもらった。
おばちゃんは申し訳なさそうに「この子ぶりっこで。人が好きで」と言っていた。桃太郎は、めちゃくちゃ人懐こかった。私と水井くんに代わる代わる寄っていっては、撫でろと言わんばかりに体をなすりつけてきた。なるほど、ぶりっこだ。かわいい。私も次は犬になりたい。
わしゃわしゃと桃太郎を撫でたあと、おばちゃんは、ありがとうね、と桃太郎を引っ張って散歩を再開した。
犬、いいなあ。なりたいなあ。今すぐはなれないから、飼いたいなあ。
自分で自分の世話をできるようになったら犬を飼いたいけど、永遠にできるようになる気がしない。

日もとっぷり暮れて、歩き続けた私たちは、気づくと三軒茶屋にいた。
2人で、あれ、これ三茶じゃね。三茶だ。となったとき、ちょっと感動した。
勘で道を選んでも、迷ってでも、ぐるぐる回ってても、一応辿り着けるは辿り着けるらしい。
別に三軒茶屋を目標に歩いていたわけでもないけど、なんだかんだ世田谷線の端から端までやってきたということに私は謎の達成感を覚えていた。
たぶん水井くんも同じだった気がする。
すげえ、ほんとにさんちゃだ、と、三軒茶屋にいるってことだけをなぜか水井くんも喜んでいたから。

三茶のKALDIに入った。
2人でいぶりがっこのおかきを一袋ずつ買った。
歩きすぎてお腹が空いていたので。そして水井くんはいぶりがっこが好きだというので。
いぶりがっこのおかきを食べた水井くんは、数秒無言で、ああ、うまい、とあと何口か食べて、それから、やっと分かったっていう雰囲気で「味の積み重ねが最高です」と言った。
最初何を言ってるのかわからなかったけど、私も食べて、うんおいしいなとあと何口か食べて、ああ、となった。なるほど、味の積み重ね、ちょっとわかる。
これまで飲み込んだいぶりがっこのおかきたちの味の積み重ねがあって、次の一口がうまい。
本当はお酒と一緒に食べたかったと思いながら、私と水井くんはいぶりがっこのおかきをすごい勢いで食べ終えた。

水井くんは甘党。
コンビニスイーツで好きなのはエクレアで、シュークリームと迷うけど、チョコがのってるから最終的にはエクレアを選んでしまう。
あと、セブンのチョコ好きのためのクロワッサン。それ、私もめちゃめちゃ好きです。よく食べます。
和菓子も好きで、あんこが好き。こしあんとつぶあんどっちがいいですか、と聞いたら、つぶあんです、と即答だった。
こしあん派かつぶあん派でつぶあんと答える人は玄人な感じがする。しかも水井くんは、小さい頃からつぶあん派だったという。
小豆の風味がより感じられるのがつぶあんだから、と言われて、つぶあんのあの皮が残る舌触りが苦手な私は黙った。

道中見つけたたい焼き屋さんで、水井くんが足を止めた。
おいしそう。身をかがめてお店の前の足元にあるメニューを見ていたら、こっちのほうが見やすいですよ、とお店の人が台の上に置いてあるメニューを見せてくれた。
小豆アンバサダーの水井くんはやっぱりつぶあんのたい焼きを選び、小豆にそんなに思い入れはない私はカスタードクリームのたい焼きを選んだ。

水井くんは、たい焼きを尻尾から食べるひとだった。おいしいところを最後まで取っておきたいらしい。でもこのお店のたい焼き、しっぽまで中身詰まってますよ、しっぽ残しでも全然OKですよ、と水井くんが教えてくれて、頭から食べる派の私はちょっと嬉しかった。
確かにしっぽまでおいしかった。本体に失礼だけど、私はしっぽが1番おいしかった。生地が薄めでカリカリしてた。

いよいよ最後の1枚になった。
最後の1枚どこで撮りましょうか、と、道端で見つけた煙草屋さんの喫煙スペースで煙草を吸う水井くんに聞いてみる。
うーん、どこがいいかなあ。
会う前はこんなにお腹痛いしとっとと27枚撮るぞと思うのに、なんだかんだ最後の1枚となるといつも若干、寂しいとも違うけど、それに近いような奇妙な気持ちになる。
でも、水井くんが、最後の1枚は神社がいい、と言った時は正直、まじかよ、と思った。
けっこう町の方に来ちゃってる気がしていたし、神社なんかこのあたりにあるのだろうか、と不安になった。
水井くん、神社が好きらしい。
旅の時はたいてい、喫茶店か神社を目指して歩くらしい。

暗黙の了解である「この企画中はGoogleマップを開かない」ってやつをここで自ら破ろうか。
まだ一度も使ったことはないけどこっそり へいSiri ここから近い 神社 って聞いてみようか。
小声でもいけるもんだろうか。
いや、だめだだめだ。そんなんで出会った神社と撮ったところで多分意味がないんだ。私たちは迷いながら三軒茶屋まで来れたんだから。うん、わかってる。
あと最低でも1時間は歩き続ける覚悟をした私と、おかきとたい焼き1つでどこまで体力あるんだよってくらいまだまだ全然余裕で歩けそうな様子の水井くんは、きっとどこかにあるはずの神社を目指して歩く。

それからたった5分後。

私の不安は、突然現れた長い石の階段に救われた。
ぬるっと視界に飛び込んできた赤い鳥居に、驚き、喜び、ワァ!!と心の底から叫んだ。
水井くんも驚いて喜んでいたけど、あと1時間歩く覚悟をしていた私の喜びはもう止められなかった。
はじめまして、神さま、ほんとはいたんですね、ありがとう。
水井くんは、なんか強い運とかもってる気がする。なんとなく。神社で撮りたいな〜なんて言って、ほんとに神社の方から現れるんだから。※正確には神社の方から現れてはいないけど、体感として。

長い階段を登りきった私と水井くんは、神さまに諸々のお礼を言うべくお参りをした。
なんか一応ありがとうございます、ってことを伝えた私と、隣の水井くんは大体同じタイミングで手を合わせるのをやめた。
そして、念願の最後の1枚を撮影できた。

散歩中、水井くんもときおりカメラを構えて写真を撮っていた。
どんな写真が撮れたんだろう。
私の写真は、現像する前になんとなくわかってはいたけど曇天だったのもあってあんまりちゃんと写ってなかった。
でも私、このタイミングで言うとものすごく言い訳っぽいけど、ちゃんと写ってない写真のほうがわりと好きってことをこの企画を通じて改めて気づきつつあります。
ちゃんと写ってないくらいが安心する。
撮られる人からしたらどうなんだろう。もっとちゃんと撮ってよってなるかな。
でも水井くんは撮る側の人でもあるし、こういうのきっとわかってくれる気がする。
水井くんはどうして写真を撮るんですかって聞いてみたかったな。
これも今度聞こ。
たぶんすぐさま忘れるな。まあいいか。

私も今年はヒョウ柄着てみます。
また散歩しましょう。

撮る人・文:吉岡晶
撮られる人:水井章人(みずいあきひと)
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