【シャニマス感想】『海へ出るつもりじゃなかったし』

はじめに

※本記事は、2021/1/1〜1/12にシャニマスで開催されたノクチルイベントコミュ『海へ出るつもりじゃなかったし』を読んで感じたことや疑問をつらつらと書き連ねたものです。

本記事へ今後追記するかたちで、考察記事は作成予定です。

『海へ出るつもりじゃなかったし』のストーリーライン

イベント『海へ出るつもりじゃなかったし』では、次の8つのストーリーからなる。

1.新年に向けた買いもの準備をするノクチル
2.4人で行く初詣
3.暇な正月を送るノクチル
4.断った正月特番に対する世間的評価の自覚
5.正月特番の追加募集
6.「騎馬戦での優勝」を目指すノクチル
7.騎馬戦の収録
8.帆走準備

イベント『海へ出るつもりじゃなかったし』のテーマって?

ノクチルの4人が”ほんとの世界”へ行く準備をする話だ。

作中でいくたびか示される”ほんとの世界"。

”ほんとの世界”とは何なのか?誰にとって、どんなことが”ほんと”なのか?
本当じゃない世界とはなにか?

ノクチルが手に入れたものと失ったものを軸に、物語を取り上げる必要がある。

◆『つまづくほどに遅く感じられるかもしれない』
期間限定で消えるパートに核心が記されている。イベントコミュはあとから閲覧できるが、それはそれとして開催期間中に楽しむために作られている。プレイヤーの時間も、巻き戻るということはない。

シャニマスの2020年を紐解く

シャニマスの世界は残酷である。だれも成長からは逃れられない。
成長のために自分自身や他人を真っ向から直視して、選択をせまられる。

それが色濃く反映されたのが、2020年のシナリオイベントである。

誰かに求められる自分と、自分が求める理想を知ったうえで、立ち位置を決めること。それが283プロ全員がせまられた選択だった。どれかひとつが欠けることも許されない。

あの天井社長や事務員のはづきさんですら、成長の対象である。それが示されたのがクリスマスイベント『明るい部屋』だった。283プロの面々は、だれであろうと未来へ運ばれていく。

ところがそんな中、過去に取り残されたものたちがいる。

新年最初のシナリオにもかかわらず年末を送っている彼女たち。ほかの面々が各々の"夜”をこえて、光明の射す”朝”へとたどり着いたにもかかわらず、昼までぐっすりと眠ったままの彼女たち。

しびれを切らした”世界”は告げた。

◆「オキロ ノロマ!」

◆『海へ出るつもりじゃなかったし』コミュ一覧
OP:ノロマたちの午後
第1話:タック用意
第2話:風のない夜
第3話:口笛
第4話:汽水域にて
第5話:ココア・説教・ミジンコ
第6話:あけの星に口づけ
ED:うみを盗んだやつら

イベント『海へ出るつもりじゃなかったし』が目指すもの

本コミュは、各話タイトルを借りれば”ノロマたち”が”うみを盗んだ”話となる。

”うみ”はなぜ盗まれたのか?誰にとってのたからものだったのか?
そもそも”海へ出てしまった”のはいつなのか?

これが本シナリオを読みとく問いである。

書籍『海へ出るつもりじゃなかった』って?

イギリスの児童文学作家アーサー・ランサム(1884-1967)による、不意に海へ出てしまった子供たち4人の航海記についての小説が『海へ出るつもりじゃなかった(原題:We Didn't Mean to Go to Sea)』である。日本では岩田欣三/神宮輝夫によって共訳され、岩波書店より1958年に出版された。

この本を含む『ツバメ号とアマゾン号』シリーズが本作家の代表作であり、『海へ出るつもりじゃなかった』も同シリーズの第7作目となる。

小説『海へ出るつもりじゃなかった』のあらすじ

ウォーカー家の4人きょうだいが、本物の汽船を持つ青年ジムにお礼として川を下って港まで乗せてもらうつもりが、道中のエンストのためにガソリンを買いに行ったきり何時間も戻ってこなかった。時間によって潮が満ちてしまい、船を止めるためのアンカーが沖から外れ、霧の中で混迷しているうちに、意図せず海へ出てしまったという話だ。

小説とイベント『海へ出るつもりじゃなかった』

さて、イベントコミュを見た方も驚かれたことだろう。

戸惑いのうちに海へ出てしまった4人、というキーワード。
そっくりそのままノクチルに当てはまっている。

ここからが大事なことで、小説の4人は、青年ジムがいなくなる前に残したアドバイスをもとに海を突きすすむことを決意する。

それは、「霧のときや明かりに頼れない夜は、浅瀬にいると座礁するからむしろ海へ出たほうが安全だ」という趣旨の助言だった。海へ出るつもりではなかったが、生き延びるためには海へ出なければならなかった。

”ほんとの世界”の象徴=新年、アイドル、現実etc...

イベント『海へ出るつもりじゃなかったし』において、"ほんとの世界"を象徴する要素はこれでもかと出てくる。おなじように、”本当じゃないもの”も併記される。

これが本シナリオを複雑に見せている。似ているようでまったく異なるものを、プレーヤーはひとつずつ区別していく必要がある。

◆海とみずうみ
◆船員と船員ごっこ
◆アイドルとアイドルごっこ
◆新年とそれ以前
◆現実と夢
◆騎馬戦本番とリハーサル
◆生放送と収録番組

ミジンコ、シャケ、ノクチルカ

ノクチルというユニット名はノクチルカ(Noctiluca)を語源とする。ノクチルカとは海洋性プランクトンのヤコウチュウの学名の一部である。

それではミジンコは?淡水性プランクトンだ。淡水とは、池や川、湖のこと。

シナリオタイトルは『汽水域』に次いで『ココア・説教・ミジンコ』となっている。汽水域とは、淡水と海水が混ざりあう境界線。

汽水域にいながら、まだノクチルは”ミジンコ”だった。そもそも海で生きられる生きものではないので、海に出てしまえば間違いなく溺れる。

でも、ノクチルカだったら海でも溺れない。海の生き物だからだ。

プロデューサーが本シナリオで試みた手段すべては、ノクチルが安全に”海”へ出るための警告と準備だった。

あけの星ー光をもたらす化学反応

ところで、夜光虫が海中で光るのはルシフェリン-ルシフェラーゼ反応という化学反応によるものだ。反応物質であるルシフェリンは、ラテン語ルシフェルが語源であり、明けの明星を意味する。

『あけの星にくちづけ』とは、ミジンコだった”ノクチル”が、自ら輝く海の生きもの”ノクチル”になった瞬間を示す言葉なのだ。

それでいて、夜明けにたどり着いた星々=283プロのアイドルに触れられる場所まで来たということを告げている。

最後の準備ー目的地を決めること

どんな目的かは重要じゃなかった。”目指すべき場所へ向かって走ること”自体が、ノクチルにとって大事だった。それが最後まで欠けていた準備。コンパスは目的地なしには意味をなさない。

光の射す方へ

ついに朝が来た。誰よりも遅い目覚めであったけれども、それでも夜は間違いなく明けたのだ。ノクチルはそれぞれ朝日を見つめ、光の差す方へ向かう。

「一番になったら見えるものがある」という光に向かって、針路を定める。
ながいながい準備が、ようやく終わった。

そしてノクチルはジャンプした。
”優勝”するため、目的を果たすために。
ここがきっかり"0時0分00000秒"だ。

なにもかもここから始まる。すべては消えて、本当の世界がやってくる。

そして、風がきた。

◆「帆走準備」

END

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