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心理尺度に必要な項目数 ~アルファ係数と項目数の関係~

心理尺度やテストを開発する際に、項目数をどの程度にするべきか迷うことがあると思います。
この場合の参考となるようにアルファ係数と項目数、アルファ係数と項目間相関の関係について調べてみます。

※アルファ係数は尺度の信頼性を表す指標

アルファ係数と項目数の関係

下のグラフはすべての項目について分散を1、相関係数を0.2に固定して、項目数を5項目から30項目まで変化させた場合のアルファ係数をまとめたものです(横軸が項目数、縦軸がアルファ係数)。

相関を固定した場合

アルファ係数は項目数を増やすほど値が大きくなる傾向があることがわかります。

また、この図から、目標とするアルファ係数が0.8の場合、項目間相関が0.2だとすると、項目数を16以上にする必要があることがわかります。
もし、アルファ係数を0.9以上にしたい場合には、30項目でも足りず(計算すると)36項目必要になります。

アルファ係数と項目間の相関係数の関係

つぎに、項目間の相関係数とアルファ係数の関係がどのようになっているか調べてみます。項目数を10、項目の分散を1に固定して、項目間の相関係数を0.1から0.9まで変化させた場合のアルファ係数をまとめたものが下のグラフです(横軸が相関係数、縦軸がアルファ係数)。

項目数を固定した場合

項目間の相関係数が大きくなると、アルファ係数も大きくなることがわかります。
たとえば、項目数が10問でアルファ係数が0.8以上の尺度を開発したい場合には、項目間の相関係数が0.3以上である必要があることが図からわかります。

項目数と相関係数をともに変化させた場合

項目数と相関係数をともに変化させた場合のグラフは次のようになります。

項目数を変化させた場合

少し複雑ですが、グラフの線のひとつひとつが項目間の相関係数のバリエーションを表しています。横軸は項目数、縦軸はアルファ係数です。
既存の尺度のデータなどから、項目間の相関係数がある程度予想できる場合には、このようなグラフを利用して、新規に開発する尺度の項目数を設計することができます。

なお、項目間の相関係数は、通常項目への反応が正誤2値データもしくは段階データであることから、通常イメージされるよりも小さな値になりやすいので、注意してください。

この記事が、少しでも参考になりましたら幸いです。

普段、テスト理論とよばれる統計的な手法を応用した学力テストや心理尺度の開発、マーケティングデータの分析、社会人の方向けの統計の教育などに取り組んでいます。こちらのページに、統計やデータサイエンス、テストの開発についてよくいただくご質問に対する説明や、自分自身が疑問に感じた事柄を少しずつシェアしていきたいと思います。

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