Oki_Y

心理テストを作ったり、データを分析したりしています

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最近の記事

項目反応理論について

項目反応理論は、学力テストやパーソナリティー・テスト(心理テスト)などのテストの特性を分析するための統計的なモデルです。名前に「理論」とついていますが、何かの巨大な理論体系というよりも、テストを分析したり採点したりするための枠組みというイメージで捉えて問題ないのではないかと思います。 ある受検者が、テスト問題に回答した結果を採点すると、問題毎に正解か不正解かいずれかのデータが得られます。例えば、テスト問題が10問の場合には、1人の受検者につき10個のデータが得られるわけです

    • テストの等化

      テスト理論という、学力テストや心理テストの性質について検討する研究分野があります。 そこで研究されているテーマの一つに「テストの等化」という問題があります。 同じ内容に関連する2つのテスト、たとえば高校3年生を対象とした数学の総合テストが2種類あったとして、これらのテストの点数を比較できるようにスコアを調整するのが「等化(equating)」という操作です。 なぜ、このような操作が必要になるかというと、同じ内容に関連するテストであっても、難易度などの問題の性質が異なってい

      • Learnin’ the Blues〜スイングについて

        ジャズを習い始めた頃、色々なことが謎で、どうしていいのか分からずにいた。 一番苦労したのは『スイング』というジャズに特有のリズムが、どうしても上手く演奏できないという課題。 いろんな人に聞いてみると『ブランコに乗るように』とか『点ではなく円を意識して』とかいろんなイメージでスイングとは何かを教えてくれる。 やってみる。 『ああ、それはスイングじゃなくて夏の盆踊りだね(笑)』 『もう少し跳ねて。でも跳ねすぎないで』 『スイングは結構難しいから、いまはイーブンに演奏してもい

        • 多次元項目反応理論について

          多次元項目反応理論は、項目反応理論を2次元以上に拡張した確率モデルです。 項目反応理論は、テストの分析や採点のための統計的なモデルで、テストの回答の背景に何かの能力(潜在特性)を想定し、能力が高い人ほど各問題に正解できる確率が高いと考えて、その状況を数理モデルとして表現します。 この時、通常は1次元の能力が想定されます。英語のテストであれば英語の能力。国語のテストであれば国語の能力。外向性の性格テストであれば(この場合は能力ではありませんが)外向性という個人特性が想定され

        項目反応理論について

          適応型テストという仕組みについて

          最近、 『適応型テストとはどんな仕組みですか?』 『適応型テストはどんなところがメリットですか?』 と聞かれる機会が増えました。自分の認識の範囲で、簡単に解説してみたいと思います。 適応型テストとは何か テストを紙で実施する場合には、同じ問題をコピーしたテスト用紙に、全員が一斉に回答するのが一般的です。通常、テストというと、こうしたイメージをもっている方が多いと思います。 適応型テストは、このような通常のテストと異なって、一人一人の受検者に合わせて出題内容が逐次変化する

          適応型テストという仕組みについて

          唐津の海のこと

          去年の夏の1ヶ月を佐賀県の唐津で過ごした。 ずっと昔、福岡の友達がドライブで糸島に連れて行ってくれたことがあって、あまりに海が綺麗で『天国みたいなところだ』と言って喜んでいたら笑われて、この先の唐津の海はもっと綺麗なんだと教えてくれた。 "単身赴任"だったので時間が沢山あったから、仕事を早めに切り上げて、陶芸家の人と話しをしたり、少しだけ畑を手伝わせてもらったり、呼子や福岡までサイクリングしたり。 唐津の海はキラキラとして、言われた通り、初めて見るような特別な色をしてい

          唐津の海のこと

          喋りすぎないこと

          ジャズの話。 なかなか上手くはならないけれど、ジャズ・ギターの勉強を続けている。 先生からよくアドバイスされることは 『弾かない勇気』 みたいなことだ。 ギターは楽器の特性上、当たり前だけれど、息継ぎなしで沢山の音を弾ける。どうしても弾きすぎになりやすい。 いや、本当の問題はもっと心構えみたいなところにあって、 『音数が多い方がいい演奏なんじゃないか』 『複雑なフレーズに挑戦した方がいいんじゃないか』 というような、間違った信念みたいなものが演奏中に出てきて、つい沢山の

          喋りすぎないこと

          セルフ・コンパッション よく読まれているnote

          noteにはダッシュボードという機能があって、執筆した記事がどのくらい読まれているか(厳密にはページが開かれたか)調べることができる。 このnoteで他の記事と比較してよく読まれているのは、どちらもセルフ・コンパッションという概念について書いた次の2つの記事。 『セルフ・コンパッション尺度は何を測っているか』はセルフ・コンパッションに含まれる「友達に接するように自分にも優しくすること」と「自分を責めないこと」という概念がコインの裏表のように同じことの両面でないとしたら(実際

          セルフ・コンパッション よく読まれているnote

          R言語で多変量正規乱数を生成する

          指定した相関係数をもった多変量正規乱数に従うデータをR言語で生成するコードです。あると便利だと言われることが多いので載せておきます。 1行目のn=1000でデータの件数を、3行目のr=0.0で変数間の相関係数を指定しています。サンプルは2次元ですが、平均muと分散共分散行列Sigmaの次元を増やせば、3次元以上にも拡張できます。 library(MASS)n=1000r=0.0mu=c(0,0)Sigma=matrix(c(1,r,r,1),ncol=2) X=mvrnor

          R言語で多変量正規乱数を生成する

          傾聴とパッシブなスキル

          仕事と関連するパーソナリティー特性やコンピテンシーと呼ばれる能力を明確にし、定義を与えて、それを測るツールを開発する、データを分析するということを長らく仕事にしている。 仕事に関連する能力と言うと『物事をわかりやすく説明するスキル』とか、『目標達成に向けてチームのメンバーを鼓舞するスキル』とか、『困難な課題を段取り良く進めていくスキル』とか、確かに重要そうだなと思える能力がリストに並ぶ。 ビジネスにとって、それらは間違いなく望ましいものなのだけれど、実際に人と一緒に何かを

          傾聴とパッシブなスキル

          心理テストの哲学

          心理測定やテストについて哲学的、社会学的な観点から考察した書籍が最近いくつか出版されているようです。 これらの書籍を精読して意味のある考察をすることは、いまの自分の力を超えてしまいますが、備忘録を兼ねてまとめておきます。 心を測る -現代の心理測定における諸問題(心理測定は「心」を測れているのか?)デニー・ボーズブーム 信頼性などの古典的テスト理論、潜在変数モデルそれぞれについての、根源的な批判と考察。まだ全部は読めていないけれど、一言で言えばモデルや方法論の限界に対する批

          心理テストの哲学

          最近聴いているアルバム2

          最近聴いているアルバムの2。 1)Stacy Kent 『The Ice Hotel』 路面電車で朝食を 小説家のカズオ・イシグロが作詞したThe Ice Hotel。「カリブ海はどうせ予約で一杯だし、アイス・ホテルへ行きましょう」という可愛らしい歌詞の曲。ピアノとシンバルとチャイムが印象的なイントロが水と氷を連想させて、家で聞くと部屋の温度が下がったように感じる。Stacy Kentは東京のブルーノートで見たことがあって、ずっとフランス系の人だと思っていたけれど、今調べ

          最近聴いているアルバム2

          最近聞いているアルバム1

          少し個人的なこと。 持っているアルバムを全て入れて持ち歩いていた音楽再生機能付きの古いOnkyo製のスマホが使えなくなって久しぶりにiPhoneを買った。iPhoneは容量が小さくて、幾つかの曲をプレイリストという形で選ばなくてはいけない。 そんなことで、今聞きたい曲は何だろうと必然的に考えることになった。折角だからiPhone用にと選んだアルバムの曲の幾つかをnoteにまとめてみます。 1) Joe Pass 『Just Friends』 I remember Charl

          最近聞いているアルバム1

          ggplotで項目特性曲線を描く

          IRT(項目反応理論)の項目特性曲線をRのggplot2で描画するスクリプトです。2パラメータ・ロジスティックモデルを想定しています。 library(ggplot2)a=1;b=0p=function(theta) 1/(1+exp(-a*(theta-b)))g=ggplot(data=data.frame(X=c(-4,4)), aes(x=X)) +stat_function(fun=p,size=1.5,color="orange") +ggtitle("ICC"

          ggplotで項目特性曲線を描く

          R言語による項目反応理論

          Rで項目反応理論(2PLM:2パラメータ・ロジスティックモデル)のパラメータを推定するスクリプトについて、これまで参考にさせていただいていたHPが削除されたようなので、自分用のメモを兼ねてまとめておきます。 lbrary(ltm)result=ltm(resp~z1) #2パラメータモデル とりあえず、ライブラリltmを呼び出してパラメータの推定を行います。 上のrespは0/1の回答データのオブジェクトです。以下の記事でIRTモデルに従うランダムな回答データを生成するコ

          R言語による項目反応理論

          R言語によるRasch分析_評定尺度モデル

          Rで評定尺度モデルの分析を行う場合のスクリプトについてまとめます。 評定尺度モデルは選択肢が多肢選択の場合に対応したRaschモデルで、RではeRmライブラリでパラメータの推定が可能です。 #ライブラリの呼び出しinstall.packages("eRm")library(eRm)#サンプルデータの読み込みdat=pcmdat2[c(1:150),-4]#パラメータの推定result.RM=RSM(dat)summary(result.RM)score.RM=person.

          R言語によるRasch分析_評定尺度モデル