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「日本語A:文学」基本情報⑧HL小論文【227】

 ここでは、IBDP日本語Aの外部評価「HL小論文」についてまとめておきます。HL小論文では、学習した文学作品を「学習者が設定したテーマ」に基づいて日本語で2400字から3000字で小論文を書きます。テーマの設定については、7つの主要概念(アイデンティティー、文化、創造性、コミュニケーション、変換、観点、表現)に照らし合わせることができます。

 この試験では、自ら設定した探究のテーマに基づいて焦点を絞った分析的な主張が求められます。そして、引用や文献参照などの学術的な取り組みに基づいた小論文を作成しなければなりません。


小論文の下書きに入る前の準備

 初めに文学作品の決定と探究するテーマについて決めていきます。学習した文学作品のうち、個人口述(IO)と試験問題2(Paper2)で使用する作品は選択できません。作品から決める場合もあれば、テーマから決める場合もあります。この段階での作品やテーマの選択は丁寧に時間をかけて行ってください。

学習者ポートフォリオの活用

 文学作品を読んで、学習者自身が気になったところや作品の展開に大きく影響していると感じる部分をチェックしておくと良いです。また、作品を読み進めるにあたってその作品がどの主要概念と関わっているかを考えておくことも大切です。他の試験問題である個人口述(IO)と試験問題2(Paper2)についても、どのようなテーマを扱うものなのかを事前に確認しておくことで、試験問題に使う作品を選ぶ手間を省くことができます。そのため、試験問題の内容については学習が始まる最初の段階で知っておくと良いでしょう。

 また、HL小論文の準びをする際に、使用したい参照先や、考え、引用文、二次文献を記録しておきましょう。HL小論文では、学習者の考えに基づいた記述が重要です。参照した他者のアイデアは必ず明記し、文献などの記録も欠かすことはできません。この「学問的誠実性」の重要性については、今後大学で研究をする時にも必要な考えです。

評価基準(合計20点)

規準A:知識、理解、解釈(5点)

 ここでは、「この選択した作品やテクストについての知識と理解をどの程度示しているか。作品やテクストについての知識と理解をどの程度使用して、選択したトピックに関する結論を引き出しているか。作品やテクストを参照し、選択したトピックに関する考えをどの程度裏づけているか。」について評価されます。

◯高得点を取るためには
 
作品やテクストについての知識と理解が優れていることを示さなくてはなりません。また、作品やテクストに含まれる意味についても説得力を持った解釈が求められます。そして、作品やテクストの参照が生徒の考えを裏付けるものになっていることが必要です。

規準B:分析と評価(5点)

 ここでは、「言語・技法・スタイルの選択および作者の幅広い選択が選択したトピックに関してどのように意味を形成するかについて、どの程度分析し評価しているか。 」について評価されます。

◯高得点を取るためには
 
テクストの特徴と作者の選択について、学習者が選択したトピックとのつながりが必要です。そして、その分析と評価が洞察力と説得力によって表現され、かつ一貫性があることが鍵です。 

規準C:焦点と構成(5点)

 ここでは、「小論文で考えを提示するにあたり、どの程度うまく構成し、焦点を絞り、議論を展開させているか。 事例をどの程度効果的に小論文に統合させているか。 」について評価されます。

◯高得点を取るためには
 
小論文の構成が効果的で、一貫性があることが必要です。そして、議論を支える事例が文や段落の構造にうまく合っていることが求められます。

規準D:言語(5点)

 ここでは、「言葉遣いはどの程度明確で、多様で、正確か。言語使用域とスタイルの選択はどの程度適切か(この文脈では、HL小論文に適切な語彙、語調、構文、専門用語などの要素を生徒が使用することを「言語使用域」と呼びます)」について評価されます。

◯高得点を取るためには
 
言葉遣いにおいて、明確で効果的、正確な表現が求められます。文法、語彙、文の構造が高いレベルで正確であることも必要です。

 以上がHL小論文に関する基本情報になります。こちらは、時間を制限される試験ではありませんので、時間をかけて丁寧に仕上げる必要があります。とはいってもDP生は他の科目とのバランスもとらないといけないので、余裕はあまりないかもしれませんが、うまく時間を見つけて探究学習を進めていかなければなりません。

 コースの7つ主要概念などについて、日本語Aの学習が始まった時期にディスカッションをしておく活動などがあると思います。そういった抽象的なk言葉について自分達で考えを深めておくことで、文学作品の分析の精度も上がります。また、作品の選定やテーマの決定なども早めに決めることができ、HL小論文を作成する時間も確保することができます。

<参考資料>

・IBO「『日本語A 文学』指導の手引き2021年第1回試験」
・IBO「国際バカロレア(IB)ディプロマプログラム(DP)科目概要」(2022.09.29閲覧)

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