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第2回D-room(子どもの学習について考える会)報告【Aflevering.207】

 月に1回、子ども日本語教室Edubleにて細々と開催している"D-room"。
第2回目のテーマは、「帰国に備えた日本語の学習をどうする?」でした。
 海外転勤でオランダに来られているご家庭では、多様な環境で生活できるというメリットを享受できる一方で、言語に関する心配事は尽きないということでした。

 いずれ日本に帰国することが分かっている場合、全日制の日本人学校に通うという選択もできます。ただ、日本に帰っても数年後再び海外に赴任する可能性がある場合や、さらに新たな赴任先で全日制の日本人学校がないこともあります。
 また、海外で生活するのだから日本とは違う環境で学んでほしいという場合、インターナショナルスクールや現地の学校などに通わせるという選択もあります。
 すると海外でのカリキュラムで学ぶのと同時に、日本の学校に戻るための準備も同時に進めておかなくてはなりません。今回はそういった状況下の中で、今の日本語学習環境をどのように維持し、帰国に備えた準備をしていくのかについてのお話をお伺いしました。

忙しい毎日をどうにかしたい

 今回参加してくださった方は、日頃教室に通ってくれている小学生の保護者の方でした。
 保護者の方が悩んでいることについて、「今は子どもが忙しすぎて、もう少し時間的な余裕を持たせてやりたい」ということでした。小学1年生の年齢からは、保護者の方の意向で日本語の週末補習校に通い始め、その時に本人の意志もあってEdubleの日本語教室も通い続けてくれています。また、その他にも複数の習い事を入れてしまっているため、子どもにゆっくりできる時間が与えられていないということでした。

まずは現状把握を

 お子さんにもう少し余裕を持たせてあげたいということだったので、まずは現状把握として何曜日にどの習い事をされているのかを伺いました。すると、週7日あるうち2日しか自由にできる日がないことだったのです。
 習い事の種類を聞いてみると、言語に関する習い事(英語と日本語)が半分を占めており、そこを改善する必要があるという考えを持っておられるようでした。むしろ、今の習い事を調整して子どもがやりたいと言っている新しい習い事をさせたいと考えておられるようでした。

週末補習校と日本語教室をどうするか

 習い事の整理としてまず必要だと考えられたのは、週末補習校と日本語教室をどうするのかということです。保護者の方からは、日本語教室で習った漢字に関しては定着がかなり良いといっていただきました。また、教室で知り合った友達も好きなので教室はやめたくないと言ってくれているそうです。
 週末補習校に関しては、いずれ日本に帰国される予定があるということで通う選択をされました。日本の同じ進捗で学習を進められたり、行事やお友達とのつながりを作れるメリットがある一方で、土曜日に半日取られてしまうという負担感に加え、補習校で受けている授業と課される宿題のバランスがうまく処理できないというところから、補習校の継続をどうすべきかを悩まれているようでした。また、夫婦間でも意見や考えが食い違うところもあり、なかなか日本語環境に関する整備がうまくいっていないとも話してくださいました。

 結論としては、日本語教室にも週末補習校にもメリットはそれぞれあるので、日本語学習において何に重点を置くのかについてご夫婦でしっかりと話し合っていただくことが大切だと思いました。

本人の意思と保護者の意思

 習い事の基準として大切なのはなんでしょうか。
 私が妻とよく話していることは、子どもが「好きだという気持ちを持つ」ことができ、「学校ではできない」こともしくは「学校でもっとやってみたいと思った」ことに挑戦できるところ、そして「子どもの世界を広げられる」ところだと思っています。世界を広げるというのは、学校とは別の友達だったり、ナナメの大人とのつながりを持ってほしいという思いもありますし、その他にも好きなことで何かを達成する成功体験をしてほしいということです。ちなみに、そういった気持ちが私にはあるので、日本語教室も同じようなことが享受できる空間にしようと思っています。

 今回来ていただいた保護者の方も、なるべく習い事は子どもの意思を尊重してあげたいという思いを持っておられるようでした。しかし、どうしても必須となる習い事が優先されてしまっていてその交通整理から始めるためにご夫婦で話し合いをなさるということでした。
 結論は各ご家庭によって異なりますが、保護者の方が日頃自分の考えていることを実際に言葉にするのはとても大切なことだと思います。こういった機会を通して、保護者の方が今後の決断をなさる助けになれば幸いです。

子どもにとって大切なことは?

 幼少期の記憶というのは大人になってからでも残っていることが多く、その人の価値観は幼少期の影響が大きいことも知られています。そのため、子どもの頃には必要なことではなく、子どもがやりたいことにどんどんチャレンジしていろんなことを学ぶ機会があることが大切だと思いました。
 大人から見て必要なことでも、子どもがそれを理解できていない場合は苦痛でしかなく、その感情も一緒に残ります。それよりも、子どもがいろんなことにチャレンジして没頭していく中でトライアンドエラーを繰り返し、その中で得られる小さな成功体験をたくさん積ませてあげることで自己肯定感を高めてあげるほうが大切だとオランダに来てからは感じるようになりました。

 例え日本への帰国予定があり、その後日本の受験システムの中で生き残るとしても、子ども自身が自分で決めて自分で学べる力をつけるための環境づくりは大切です。私は、継承語教育でも日本の受験勉強でも具体的な方法は異なりますが、学習に対する考え方は同じだと思っています。保護者や先生はあくまでサポートで、主体は子どもであるということを忘れないでこれからも学習サポートをしていきたいと思います。

 保護者の方と一緒に話していく中で、私にも学ぶことがたくさんあります。とてもありがたい気持ちを抱くとともに、こういった教育に関する報告がお役に立てたら何よりです。

 最後までお読みいただきありがとうございました。

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