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生徒が授業内容の一部を決める日本語教室【Aflevering.115】

 私が行っている日本語の授業の一部では、子どもから提案された内容を実施するようにしています。授業の3分の2は、日本語学習に必要な「国語の教科書」を使った学習や「漢字」学習、「日本語の表現力を鍛えるスキルトレーニング」をしているのですが、そのあとは子どもが自由にやりたいことを提案することができます。そして、私は子どもの提案に基づいてそれを日本語学習に活かすようにしています。
 例えば、工作が好きな子は何を作るのかを決めてもらい、日本語の説明を聞きながら手を動かす作業をします。また、将棋が好きな子は将棋を使って漢字に触れてみたり、先を読む思考の練習をしてもらいます。そして、実験をやってみたい子はどんな実験をしてみたいのかを提案してもらい、準備するものや段取りの他に、実験結果の仮説と検証なども含めて日本語の学習として実施しています。その他、折り紙やすごろく、算数のパズルなどにも取り組んでいます。

 子ども自身が「授業に参加している」という意識が、子どもたちの学習へのモチベーションに少なからず影響が出ています。こういう時間があると、子どもたちは授業に対して前向きになるのか、とても意欲的に取り組んでくれる子が多いように感じています。

「鏡の実験をやってみたい」という8歳の子からの提案

 以前、小学3年生のクラスで、ある子が鏡の実験について書かれた実験の本を読んだことがあり、それが面白かったという話をしてくれました。そして、「この実験をやってみたいです!」という提案があったので、早速授業で取り入れてみることにしました。実験をするために何が必要でどのように準備するのかを話し合い、次回の授業で実施することにしました。

 今日がその実験を実施した日で、実験をする前に「問い」と「仮説」を立ててもらいました。「問い」は、「鏡を直角に2つ置き、ついたて越しに見えるもう一つの物体は何個見えるのか」です。生徒の仮説は「2つ見える」でした。しかし、鏡が直角になっていることで、さらにもう1つの物体を見つけた時は、なんとも表現しがたい感動に満ち溢れた顔で、一生懸命に鏡を覗き込んでいました。きっと、この子にとって忘れることのない経験の1つになるのではないかと思います。実験については、準備するものや仮説、実験方法などをノートに書いてもらい、最後に結果や感想などを記録してもらいました。実験の最中は、私も大興奮でしたので写真の記録を忘れてしまうほどでした。次からはきちんと写真での記録も残しておきたいと思います。

子どもが主体となる授業

 私は、高校現場で学びに対して完全に受け身になってしまった生徒をたくさん見てきました。与えられた課題がこなせて、テストで高得点が取れたとしても、授業中に自分で自由に論点を設定するのが難しかったり、他者との協同学習でどのようにプロジェクトを進めてよいのか分からず何も行動に出られない生徒たちを見て、私は今の日本教育のあり方に強い危機感を感じていました。子どもの自主性を奪うという部分については、早急に改善すべきだと考えています。

 そのため、私の日本語教室では、子どもたちの学びへの主体的な関わりは幼い頃から持っていてほしいと思っているので、授業の一部の内容を子どもたちに決めてもらう他に、学習の順番を決めたり漢字パズルなどのルールを子どもたちに考えてもらったりしています。こういった取り組みは些細なことではありますが、子どもたちにとって、この日本語教室が「人間として成長できる場所」であってほしいと思っています。

 今日、鏡の実験を提案してくれた子は、「また面白い実験を調べてきます!」と言ってくれたので、次はどんな提案をしてくれるのか楽しみにまちたいです。

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