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学力を上げたいならたっぷりの「遊び」を〜逆転する「学力」〜【Aflevering.242】
早期教育へのリスクはご存じでしょうか?アメリカの心理学者ピーター・グレイが2015年に書いた記事には、早期の「お勉強」は長期的な害をもたらす可能性が示されています。
「逆転」する学力
読み書き計算などを早いうちから取り組んだ場合、短期的には学力は向上します。しかし、心の発達が著しくなる10歳の頃には「遊び」が中心で育ってきた子どもたちに逆転されてしまうのだそうです。これにはどんな背景があるのでしょうか?
勉強だけできても幸せにはなれない人生
学校教育の課程を終えて社会に出た時、勉強だけができても幸せにはなれないのです。他者との関係づくりや自分をコントロールする力、いわゆる「非認知能力」も重要になります。こういったことを幼い頃に、遊びを通して学んでいるかどうかでその後の人生が変わるということになります。
幼いうちにたくさんの遊びを経験した多くの子は、人間関係や忍耐などをそこで自然と身につけ、人間性・社会性が十分に育っています。そのため、学習も主体的に取り組むことができるのです。
「お勉強中心」の子どもたちが陥るリスク
「お勉強」中心の子どもたちは短期的には結果が出せるからこそ注意が必要です。結果が出たら、それで間違いないと考えてしまいがちです。
しかし、長期的に見れば「遊び」中心の子の方が学力は高くなり、勉強中心の子はむしろ不正行為や未婚率、犯罪率が高くなると言う研究があることを知っておいていただきたいです。必要以上に他人と比べられたり、自分ができればそれで良いという考えを持つことは危険です。それは、明らかに情緒や感情の発達に影響します。
もちろん、全ての場合が当てはまるとは言えないかもしれませんが、先述の通り、目には見えない情緒面での発達、社会的スキルなどは遊びを通して育むことができます。この土台があることで、子どもは学習も主体的に取り組むことができ、やがては学力を逆転させるのです。
「最初の学校での経験がその後の行動の土台となる」
さらに彼は、最初の学校での経験がその後の行動の土台となる、と述べています。もちろん生きていくために必要な最低限の読み書き計算などのスキル習得は必要です。
ただ、学校という場所は、読み書き計算だけでなく、社会で生きていくためのスキルを身につける場所であることも忘れてはいけないということです。それは他者との関わりをどう調整するか、自分の気持ちをどうコントロールするかなども含まれているのです。
読み書き計算にこだわる考えがあるとしたら、むしろ遊びの中に、読み書き計算は十分に取り入れることができるのではないでしょうか。
2015年の記事になりますが、学力重視の指導が、最終的には遊び中心で育った子どもたちに逆転されるという事例を知った上で、目の前の子どもたちにとって必要なことは何かを考えるきっかけになればと思います。
研究結果についてはこちらの記事をご覧ください。
・ピーター・グレイ「早期教育が長期的な害をもたらす」
伝統的な遊び中心から学習中心への教育政策のシフトを逆転させたドイツの研究
アメリカのレベッカ・マルコンの研究「初期の学業成績と4年生以降の学力は逆転」
デビットウエイカート「遊びと犯罪率の関係性」
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