仕事の表

【第6話】移住にまつわるお金の話、仕事の話(2)

◇フリーランスが「移住します」とクライアントに告げてみたら…

 前にも書いたが、ライターやカメラマンにとって、都会にいることは仕事を確保する上で非常に有利であるーーというのが私の見解であった。だから、突然地方(しかも島)に移住するなんてクライアントに告げたら、その時点で仕事は打ち切られるだろう。「便利」の切れ目が「縁」の切れ目だ。

 最近の収入は、だいたい月22~23万円。保障のないフリーランスにしちゃ全然少ないが、それでも暗中模索の4年前から考えたら、頑張ってここまで積み上げてきたんだなぁと思ったりもするんですよ。

 どの仕事も全部大好きだったのに、この移住によりすべてを失うワケだ。翼がひとつひとつ、もがれていく感覚。冗談じゃなく本気でそう思った。笑いたきゃ笑うがいいさ。

 しかし、移住カミングアウトをした結果、意外な展開になってきたのだ。

 ―― 仕事が切れない!

 私が一緒に仕事をしてきたのは人間の皆さんだと思いこんでいたが、実は人間なんかじゃなく、超ポジティブ高天原より降臨された神々だったらしく「へぇ、オモシロそうですね」などと微笑みながら、今後についても何らかの形で繋がることを検討してくださったのである。

 以下は、私が最近継続してやっている仕事を表にしたものだ。こんな生々しいモノを曝すのもどうかと思ったが、具体例を出したほうがイメージしやすいだろう。

 表の左側が移住前、右側が仕事相手と相談して方向づけられた移住後の予定。どの仕事も、「遠隔でできる体制にシフト」「打ち合わせはSkypeでやればいいから、ぴったりの後任が見つかるまでは継続」「もともと地方取材や電話取材が多かったので、変わらず継続」というような感じで、ぷっつり途切れるものはゼロという奇跡が起きたのだった。

 どうやらそれぞれのご担当が、(きっと多少の至らない点に目をつぶった上で)私の仕事ぶりを気に入ってくれてたんだろう。もちろん、実際に移住生活が始まってみないことには分からないのだが、皆さんが前向きに考えてくださっている。ということが何よりうれしかった。

 まぁ、首都圏で行う撮影のギャラは今まで通りで、飛行機代なんて出ない。でも、その1件分のギャラを東京に出るための交通費だと考えれば、そこに2、3泊くっつけて会いたい人に会ったり、別の仕事をすることができる。実家が埼玉なんで、宿泊費はだいぶ浮かせられるだろう。

 これを聞いていた家庭教師会社仲間のTちゃんが「‟距離”より‟信頼”ってことですね」とボソリ呟いた。確かに今はインターネットで何でもできるし、その気になれば離れていても問題ないのかも。「近くの他人」より「遠くの同志」なんだ。はい、これからますます精進しまっせ。


◇むしろ都会にいるより稼いじゃったりして……

 しかも、移住がきっかけで、なんと、早くも、「新しい仕事」が生まれそうなのだ!! 1つ目は、大手ネタ系ニュースサイト旅ライター。経費で旅行できて、新しい体験ができるなんて夢みたいだ。旅なら島からだって行けるっしょ。っつか、移住先がすでに旅みたいなもんでしょ。

 人気媒体なので競争率が高かったようだが、仕事が減るという危機感から必死こいて応募した。おかげで通っちゃった。神様ありがとう。早く一発目の取材がしたいとワクワクしている。

 2つ目は、とある田舎暮らし関係の雑誌。こちらはまだご挨拶の段階だが、編集の方がなんとこのブログを読んで興味を持ってくださったらしい。共通の知り合いである漫画家Hさんが、間を取り持ってくださって、近々お会いすることになった。

 あれ、今までよりむしろ仕事増えるんじゃない?? 半年後、古民家の縁側で「案ずるより産むが易しっすよ。がはは」なんてビールをあおるのが、とりあえずの目標だ。


◇移住の前に、買っておきたい仕事道具

 仕事の質も変わりそうなので、機材や道具類も整備しておこう。我々にはAmazon様をはじめ、各種通販サイト様がついているので、たいていのモノは移住後でも問題なく入手できる。しかし、「実際に試して吟味したい」アイテムは話が別。店舗が近くにある「今」が勝負なのである。――というわけで、カメラとレンズ、カメラバッグを新調した。

・EOS 5D Mark III(レンズキット EF24-105L /F4 )

・ハーフマクロのレンズ&テレコン(←自主的に、畑の虫とか撮りためたい)

・Manfrottoのカメラバッグ(←しばらく原チャで移動かもしれないので、リュックタイプがほしかった)

 中古品と組み合わせて賢く買ってみたものの、締めて38万円! ううっ。ガクッと減った残高を見て唾を飲んだが、きっとこの投資は、移住後の仕事ライフを力強くサポートしてくれるに違いない。家に帰って梱包を解き、小気味良い連写の振動を腕に感じていると、否が応でも気分がアガった。フルサイズのすかっとしたファインダーから覗く世界は、この上なくクリアに輝いている。

 このマークⅢで、私はどんな写真を撮っていくのだろう? どんな人に会い、どんな景色に感動するのだろう?

 最近では皆さんに「よく思いきったね」と感心されます。いやいや、踏み切るまでは悩んだ悩んだ。次回は、最終的に移住への背中を押してくれた、ある出来事について書きます。

                             (続く)

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