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アメジストの魚。


―プロローグ―


「僕の声が、想いが届かなくても君が幸せならそれでいいよ。」

そう言うと彼女は「ごめん。」と泣いた。


僕が一方的に掴んでいた彼女の手は、これ以上力を込めたら壊れてしまいそうで、握り返してもらおうなんて求めすぎだって、分かっていた。


だから、
きっとこの恋は始まる前から終わっていたんだと思う。


僕達はお互い報われない想いを抱えていて、この想いがある間は誰のことも幸せに出来ない臆病者だ。


僕の気持ちはきっと前しか見てなくて、君の気持ちは色んな方向に右往左往していて。
向いている視線の先がきちんとお互いを向いて交わることはきっとない。それでも、それでも君のそばに居たかった。居ることを許して欲しかった。



22歳の冬、僕は声を失った。

これはとある恋の病のお話。