ボケナスのうた

 ときおり、どうしようもなく空しくなってしまう。これはどうしたものか。きっと僕のHPゲージがかなり低下してきているのだろう。赤色になってピコピコと安っぽい警告音がなっている。普段はガマンできるものがガマンならない。人に優しくできない。余裕がない。鼻もちならないやつが目の前にいたら言わなくていいことを言ってしまうかもしれない。きっと伝わらないであろう、どうしようもなく個人的なことだから言わなくていいことを、言ってしまうかもしれない。

 思うに、普段はゲーム感覚で人生を楽しめている。誰かがつくったルールの曖昧なゲームを探りさぐりこなしている。現時点ではそこそこ上手くできているんじゃないだろうか。そもそも評価基準すらないから上手いも下手もないんだけど。でも、今は余裕がないからゲームに付き合ってやる気持ちになれない。

 そもそもゲームじゃないし、ルールなんてない。倫理観や道徳も、本当は、少なくとも一般的な意味では、存在しない。何をやってもいいし、何をやってもだめだ。概念なんてものは言葉遊びかロジックのパズルでしかない。森羅万象に意味なんてない。これは皮肉じゃないし絶望を演出したい訳でもない。虚無主義だの実存主義だのとは関係ない。個人的なやつだ。ただただ自分の思考と五感があって、それだけで全部だ。色即是空。空即是色。本当は空っぽのくせに、さも意味ありげなたたずまいが気に入らない。

 飾り気のない、いたってシンプルな真の世界の上に、僕たちは自らの文明を築いている。本当はまっさらさらな世界がギャルのネイルばりにゴテゴテにデコられているのだ。全人類がどんな行動をして、どんな成果をあげようとも、「最近ネイル変えたの気づいた~?コレよくな~い?」ぐらいのもんとしか感じない。それなのに、必死になって喚きちらしながらもがいてる人を見てしまうと、なんだかため息をついてしまう。そんなにやんなくてもいいのに……。でも、やっぱり、ネイルはきれいにデコりたいよね。おしゃれは戦いだもんね。コーヒーに砂糖をがばがばに入れたやつを飲み干したらデコるの手伝うよ。ほんとは生爪派なんだけど、それは黙っておく。そのうち、趣味が変わってギャルが好きになるかもしれないことだし。


※※※


今日の音楽

ネクライトーキー「ボケナスのうた」

タイトルに反してなんとなく切ない歌詞。群集心理のうっとうしさを書いてるのだろうか。ボケナスって妙な語感。ナスて。ドテカボチャって悪口もあるし、日本語慣用句の野菜の扱い悪ない?

最後まで読んでくれてありがとー