ロケハン(2016.04.09)

先日、動物園にロケハンに行ってきたのである。
ロケハンとはロケーション・ハンティングの略である。
つまりロケーションをハンティングするということだ。
そう、いいロケ地を探すことである。
山本Dはこのロケハンが何よりも好きだそうで、
なぜかと聞くと
「その土地のラーメンを食べられるからです。はい。」
と誇らしげに言っていた。
まあ、そんなことはいいとして
ロケハンには必要なモノがある。それはカメラだ。
なぜかというと、何カ所も巡って
これだ!という一カ所を選ばなければならないので、
記録する必要があるからだ。
そして今回の動物園ロケハンでは悲劇が起こった。
なんとAD田中が電車で眠ってしまい
寝ぼけてカメラを車内に忘れてしまったのだ。
動物園について緊急会議が行われた。
僕は「ムムム。山本さんコレは一体どうしましょうか?」と言った。
山本DはAD田中に言った。
「田中くん、ロケハンでカメラは命だよ。ラーメンで言うとスープだよ。
キミはスープのないラーメンが好きかい?」
AD田中は「いえ、僕はスープのあるラーメンが好きです。」と答えた。
山本Dは「そうか、じゃあ今日はロケハンはやめだ。
ラーメンでも食べて帰ろう。」
と怒っているのか笑っているのか分からないような顔で言った。
「それに田中くん。電車の中とはいえ、仕事中に寝てしまうのはよくないね。
寝るのはウチに帰ってからだよ。寝ていいのは、自分のウチのベッドの中だけだ。会社で寝るのもNGだ。」
僕はただ頷くことしかできなかった。
するとAD田中は「でも、山本さん、写真はスマホでも撮れます。スマホの方が便利じゃないですか?スマホで写真を撮りましょう。」
山本Dは深いため息をついてこう言った。
「確かに便利だよ、スマホは。スマホは便利だよ。ただ…」
山本Dは眼鏡を外した。
「ただ、便利だからこそダメなんだよ、田中くん。」
AD田中「へ?」
山本Dは続ける。
「今回のロケハンは動物園だ。動物は思うようには動いてくれない。
つまり、シャッターチャンスを待ち続けて、
いい瞬間が来たら、パシャリだよ。カメラでね。ちなみに僕が眼鏡を外した時は真剣な証拠だ。」
山本Dはウインクをして、眼鏡をもう一度かけ直した。
AD田中「でもスマホでも…」
山本D「スマホは便利さ、本当に。僕もスマホには何度か命を助けられた。
でもね田中くん。スマホは色んな機能があって便利だからこそ、ダメなんだよ。例えば電話もできる。」
AD田中はスマホを見つめていた。
「田中くん。シャッターチャンスだ!って瞬間に
電話がかかってきたらどうする?」
AD田中はハッとした顔で山本Dを見つめた。
山本Dは
「大事な瞬間を決して逃してはならない。
どんな仕事でもそうさ、その場所、その瞬間でしかできないことがあるんだ。
そして、大事な事がもう一つ。
もう一回繰り返すよ。ふふふ。
寝ていいのは自分のウチのベッドの中だけだ。
よし!ラーメンでも行こう。吉村さんいいですか?」
AD田中は尊敬のまなざしで山本Dを見つめていた。
僕はただ頷いた。

写真は
会社で微動だにしない山本Dの大事な瞬間をスマホで捉えているAD田中。
山本Dは眼鏡を外している。

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