吉村慶介

共同テレビジョンディレクター。京都大学人間環境学研究科卒業。京都大学理学部卒業。石川県…

吉村慶介

共同テレビジョンディレクター。京都大学人間環境学研究科卒業。京都大学理学部卒業。石川県小松市出身。です。

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最近の記事

美 少年亭について

美 少年亭を見て感動したという声をたくさんいただいた。僕も現場で最後の師匠の言葉を聞いた時はウルッときてしまった。 なぜ感動できたのか? それはきっと見た人それぞれが佐藤龍我くんの姿を見ながら、自分のことを思い出したからだと思っている。 学芸会の発表なのか、 会社のプレゼンなのか、 結婚式のスピーチなのか。 小学生の頃の記憶なのか、 最近の記憶なのか、 これから体験するであろう未来の記憶なのか。 あのようになってしまったら自分だったらどうするかな? そう考えて苦しくな

    • コーヒー

      「こんな暑い日にはあえてホットコーヒーを飲みたいですね。 遅れてすみません」 今日は客がまばらだったせいか喫茶店コリントに山本Dの声が響いた。 僕と新谷Dは、山本Dが来る前にアイスコーヒーを頼んでいたが 「そうですね」と答えた。 さらに新谷Dは得意げに 「それに暑い日に熱いラーメンも最高ですもんね」と言った。 山本Dは座りながら 「それは、ちょっと違うけどね。あーホットコーヒーが飲みたいな、こんな暑い日は」 と言って、おしぼりで汗を拭いた。汗だくだ。 確かに暑い日だ。 新谷D

      • 混じり気(2018.08.28)

        台風が過ぎ、混じり気のない快晴の青空を見上げて、山本Dは言った。 「吉村さん、何も加えない、素材そのものの美しさって素晴らしいですね。」 僕は、雲が少しくらいあっても青空は綺麗だけどなぁと思いながらも 山本Dの熱量に押されて「そうですね。」と答えた。 この時、僕と山本Dと新谷Dは会社の近くにある「コリント」という喫茶店に向かっていた。 コリントに着くと、すぐさま3人ともアイスコーヒーを頼んだ。 山本Dはメガネを外し、おしぼりで汗を拭きながら 「少しテレビの話でもしましょうか。

        • 最新技術(2017.07.12)

          山本Dは激怒した。 「なあ、新谷、最近のADは全然なってないな。」 新谷は、最近ADからディレクターになった男である。 新谷は言った。 「ふむふむ、山本さん、一体何がどうしたって言うんですか?」 山本Dは、自分の部下であるADたちがパソコンの扱いに慣れていないことを嘆いていたのである。 新谷は、「なるほど。なるほど〜。」と言いながら立ち上がって言った。 「では、コーヒーでも行きましょうか。」 僕もちょうどコーヒーでも飲みたいなぁと思っていたので、一緒に付いていった。 そして僕

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        • エッセイ
          5本

        記事

          ロケハン(2016.04.09)

          先日、動物園にロケハンに行ってきたのである。 ロケハンとはロケーション・ハンティングの略である。 つまりロケーションをハンティングするということだ。 そう、いいロケ地を探すことである。 山本Dはこのロケハンが何よりも好きだそうで、 なぜかと聞くと 「その土地のラーメンを食べられるからです。はい。」 と誇らしげに言っていた。 まあ、そんなことはいいとして ロケハンには必要なモノがある。それはカメラだ。 なぜかというと、何カ所も巡って これだ!という一カ所を選ばなければならないの

          ロケハン(2016.04.09)

          フライデーナイト(2015.09.05)

          最近またAD徳地が会社によくいる。 同じ番組をやっているわけではないのだが とにかく会社にいるのでよく話すのである。 「元気か?」と聞いたら AD徳地はパソコンから目を離さずに 「元気ですょ」と言う。 先日、山本Dが 「俺は金曜日が嫌いだ!どうしようもなく嫌いで、どうしようもない! しかし、そんな自分が好きだ。 どうしようもなく好きだ。」 と仕事中のAD徳地に言っていた。 そのまま聞いていると 「俺は金曜日も働いている。 うん、わかるよ。 まあそれはみんなそうなんだけど、 俺

          フライデーナイト(2015.09.05)

          本番(2015.08.04)

          ある番組の収録の前日の話である。 収録の前日と言えば、次の日の本番に向けて 様々な準備をしなくてはならずとにかく大変な日である。 特にADさんたちは何日も徹夜をしている場合もあり もうヘトヘト状態だったりする。 あのADハマダも少しヘトヘトになっていた。 そんなADハマダの様子が気になったのか 山本DがチーフAD藤井に声をかけたのである。 「藤井君、一生懸命仕事をやるのは、よいことだよ、うん。 ただね、僕たちは今、何のために頑張っているんだい? 答えてみて。さあ。」 AD藤井

          本番(2015.08.04)

          長崎とたこ焼き(2015.05.31)

          土日を利用して山本Dと長崎に行っていたのである。 企画を出すための取材である。 色んな方に話を聞くことができ、かなり充実した土日であった。 山本Dは、とにかくお酒を飲み、取材対象者の気持ちをガッチリつかんでいた。いや、むしろこちらがつかまれたのだ。 それにしても普段あんまりお酒を飲まない山本Dがあそこまで、お酒を飲むとは僕も驚きだった。 深夜1時、お開きになった後も、 「吉村さん、ちょっと話しましょうか」と真剣な表情で言い、たこ焼き屋さんに突入していった。 中では「吉村さん、

          長崎とたこ焼き(2015.05.31)

          料理(2015.05.26)

          それマジ!?ニッポンのスタッフに新しい仲間がやってきた。 ADハマダだ。 山本DはADハマダを気に入ったようで 日々、熱心に指導している。 これは珍しい事だ。 今まで、山本Dは眼鏡をかけている後輩にはとても厳しかったからである。 この理由を聞いてみると 「僕と同じくらい眼鏡が似合うやつに初めて出会ったんですよ。はい。 眼鏡と一体化しているというか…眼鏡負けしてないって言うんですかね。 眼鏡勝ちしているんですよ。やつは。 まあ、まだまだと言えばまだまだなんですけどでね。今後に期

          料理(2015.05.26)

          清正井(2014.12.05)

          昨日は明治神宮にロケハンに行ってきたのである。 雨だった。 メンバーとしては山本D、大塚D、AD藤井、AD澤田、新人AD安田と僕である。 やはり話を聞くのと実際に行くのでは大違いで、 最初の明治神宮入り口の鳥居の大きさに 一同は圧倒されてしまった。 山本Dなんかは、「スゲーなぁ!」と言って写真を撮っていた。 しかし、AD澤田だけは、すました顔をして、 「こんなところで、驚いてもらったら困りますね。 そうですねぇ、言ってみればここはまだ明治神宮の入り口のようなものですから。」

          清正井(2014.12.05)

          同じ方向(2014.11.20)

          先日、また江の島のロケハンに行ってきたのである。 メンバーとしては、大島P、山本D、大塚D、僕、 そして、AD徳地だ。 その日は天気も良くロケハンは順調に進んでいった。 僕は何回か勢いよく神社の階段を駆け上がったせいか、 後半ものすごく疲れてしまって、途中で 「もうヘトヘトですねぇ。この辺で一休みしますか。コーヒーでも。」と提案した。 すると、 みんなもそうですねぇ、疲れましたねぇ という雰囲気になったので、お店に入ることにしたのだった。 席に着いて、僕が 「さあ、何頼みます

          同じ方向(2014.11.20)

          ギリギリ(2014.11.13)

          今日は番組の定例会議があったのである。 これも、また川本総監督へのプレゼンの場である。 何をプレゼンするのかというと、それはもう色々なのである。 色々あるので、会議に提出するための資料を作るのも大変であり、 この資料というのが、かなり重要なのである。 僕のチームはAD藤井を始めとして、 締め切りギリギリタイプの集まりなので いつも会議直前に資料が出来上がる。 AD藤井は 「うーむ、なんでいつもギリギリなのか、 これは真剣に一度話した方がいいのかもしれないなぁ。 僕はもうギリギ

          ギリギリ(2014.11.13)

          目の前にあるもの(2014.11.10)

          今日は何となくみんな疲れている風な雰囲気だった。 僕もなんとなく疲れていたし、 山本Dなんかはパソコンに対して 全面的に降伏しているような姿で 安らかに眠っていたので、 彼もまた疲れていたのだろう。 AD藤井も 「あー疲れたなぁぁ。 もう、どうしようもなく疲れ果てたなぁ。 もう頑張れないなぁぁ。ふぃ」 と割と大きな声で、独り言を言っていた。 その独り言は本当に割と大きな独り言だったので、よっぽど疲れているんだろうなぁ と僕は思った。 そして、そんな大きな独り言が聞こえるにも関

          目の前にあるもの(2014.11.10)

          打率(2014.11.8)

          今日はお台場ヴェルトというところで、打ち合わせをしたのである。 いわゆる制作打ち合わせというもので、収録に向けて最終確認をするというもの。 これは、実はスタッフにとっては 川本総監督へのプレゼンの場にもなっているのである。 AD藤井は10問プレゼンして、3問採用という結果だった。 山本Dは 「藤井くん。今回の件はプロ野球でいうと、君は3割バッターなのだが、 僕たちの仕事は10割バッターでないとダメなのだよ。 いや、10割は言い過ぎか、8割だな。うん。」と メガネをキランとさせ

          打率(2014.11.8)

          ロケハンの意味(2014.11.7)

          今日はとても天気が良かったので、 昨日、ロケハンで江ノ島に行ったのは大きな間違いで、今日行くべきだったのではないか!きっとそうだ! ということを山本Dと話していた。 そこで、パソコンでカチャカチャ作業中のAD徳地に 「実は今日行くべきだったのではないか?どうなんだ?おい!」 と先輩風に言うと 「それは全く間違いです。吉村さんは根本的に違いますょ。」 とか言うのだ。 さらに、 「ロケハンというのは、本番のロケを円滑に進めるために行くんですょ。本番、雨が降った時のシミュレーショ

          ロケハンの意味(2014.11.7)

          雨と傘(2014.11.6)

          ロケハンで江ノ島に行ってきたのである。 まさか雨は降らないだろうと思っていたら、雨が降ってきたので、 いわゆるズブ濡れロケハンとなった。 これ見よがしに傘を売り出す店があったのだが、 なんだか悔しいし、買わずにガマンしよう!という雰囲気だったので、 ズブ濡れのままロケハンを続けた。 しかし、ロケハンも後半にさしかかったくらいに ADの徳地が珍しく声を荒らげて 「傘を買いましょうよ!僕はこれ以上濡れるのはイヤです。さあ!そんなちっぽけなプライドは捨てませんか?」と言った。 僕と

          雨と傘(2014.11.6)