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ソシオエステティックの可能性 -ALS患者との対話-

ホリスケアアカデミー介護予防支援美容科の講座や、介護施設での美容活動の根底には、ソシオエステティックがあります。
私の先輩ソシオエステティシャン志賀千恵子さんの取材記事の中に、ソシオエステティックならではのエピソードがあったので、ご紹介します。彼女は、東京都の病院でソシオエステティシャン(非常勤職員)として勤務されています。

【今までのソシオエステの利用者さんの中で、印象に残っているエピソードについて】
ALS(筋萎縮性側索硬化症)の女性患者さまのことが心に残っています。

その女性は既に人工呼吸器や胃ろうを使用されており、ソシオエステを始める少し前までは、わずかに動く右手で筆談ボードに字を書くことができていたようですが、それもできなくなってからは「意思疎通が取れない」と主治医やナースからは言われていました。
中略
毎回その方の表情を確認し、お顔を見ながら話しかけ、YESかNOか感じ取る努力をしていました。お顔の筋肉はほとんど動きませんでしたが、表情は分かっていました。毎回手足の衛生保持とオイルトリートメントを行っていたのですが、施術を始めると目を閉じ、触れられる感覚や心地よさを感じようとしてくださっているのがよく分かりました。
あるとき、施術が終わったあと、その方がわずかに持ち上げられる右足を動かし始めました。何か言いたいことがあるんだなと思い、ナースさんを呼びましたが……普段そのように足でコミュニケーションをとろうとすることはなく、意図はわからないとのことでした。結局その日は訴えを読み取ることができないまま、「次回また教えてくださいね」とお願いして、病室を去りました。
次に訪問した時、施術後にまた右足を動かしてくださったんです。どうやら、空中に字を書いているようでした。私はご本人に質問をしながら、もう一度教えてください、もう一度書いてくださいとお願いして、何とか意志を読み取ろうとしました。20分以上かかったでしょうか?
その方が空中に書いた字は……
「い」「い」「き」「も」「ち」「だ」「つ」「た」
「『いい気持ちだった』ですか?」と訊くと、ご本人はわずかに動く口の端をニッと持ち上げて、身体をうねうねさせました。きっと正解だったのだと思います。それから毎回エステに行くたびに、施術が終わると右足で「いいきもちだった」と書いてくれるようになりました。私にお礼を言ってくださっていたのだと思います。

以上、引用でした。
本文には、他にもたくさんの事例があるので、読んでみてくださいね。

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