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犬のストレスを考察

ストレスは健康にも精神にも影響します。犬の問題とされる行動はストレスが起因している場合が多く、時には深刻な問題を引き起こします。ドッグトレーナーも飼主も、ストレスを軽減する事に尽力しますが、ストレスが本当はどんな影響を及ぼすかについて語られることはあまりありません。

ここでは、犬のストレス研究の第一人者「The Stress Factor in Dogs」の著者でもあるスポルディング博士の見解をご紹介します。


ストレスの定義

ストレスとは何らかの外部刺激に対する身体的反応です。スパルディング博士の定義は「ベースラインに対するある種の挑戦の結果として起こる生理学的反応」つまり、生物は体をある一定の状態に保とうとする機能、整体恒常性(ホメオスタシス)があり、それをベースラインとし状況の変化から体が反応する必要があった状態をストレスといいます。

ストレスの問題点

ストレスには慢性のストレスと急性のストレスがあります。ストレスに対応するシステムが育まれるのは常に急性のストレスに対してです。急性のストレスとは限られた時間内に起こり解決されるもの。ストレス反応の機能は、動物が課題に立ち向かうのを助けるためであり、ストレスは必ずしも悪いものではありません。ストレスが問題になるのは以下の場合です。

  • ストレスが非常に強い場合

  • ストレスに対処する能力を備えていない

  • ストレスが慢性化している

慢性のストレスを抱えていると、通常のストレスに対する反応が崩壊し、制御が失われ、攻撃や鬱状態に陥る危険性があります。

良いストレスとは?

例えば朝起きてジョギングに出かけるのはストレスではあるけれど、走ることを毛嫌いしていたり健康上に問題があったりしない限り、心地よいものでしょう。学習もそうです。つまり、良いストレスとはチャレンジであり、それに対して対処できる能力を備えているものです。

反して悪いストレスとは慢性化したもの、もしくはストレスと受けている個体が対処しきれないほどの強いストレスであった場合です。この場合は、個体によってストレスの質は変わりますし、個体が対処法を学ぶことで悪いストレスを軽減することが出来ます。

ストレスへの対処法

悪いストレスを軽減して動物の生活をよりよくするのは、何を見つけ何をしなければならないのでしょうか。

先ずは、動物が受けた刺激に対してどのような行動を取っているかを知る事です。一般的には「ボディランゲージ(身体に現れる変化)を読む」と表現されますが、身体に現れる変化はその時々の状態に影響されるので、行動観察が一番正確にストレスをどのように受けて止めているかを知るカギになります。

ストレスを受けているだろうと考えられる行動が見受けられたら、状況を再評価し、動物が置かれた状況をコントロールできるように持って行くのが理想です。その時のケアギバーの役目としては、安全を確保し、動物がストレスに対応できる能力高めるサポートをすることでしょう。

ストレス対応能力のエッセンス

ストレスに対応する能力とは、ストレスを受けても回復できる力(レジリエンス)を持つことで、決してストレスに動じないことではありません。

そもそもストレス反応が起こるのは、動物が目の前に立ちはだかる問題に立ち向かうのを助ける為のものです。そのためにも、ストレスは自分で管理できる物である必要があります。

受けたストレスから回復する為の力は、個々の主体性が大きく関連してきます。この場合「主体性 agancy」とは、動物が自分が置かれている環境をコントルー出来るという認識を持ち、実際に行動を起こせるとを指します。

動物が環境を探索し対話すること、つまり状況を把握することで、これから起こる事への対処に必要なスキルを身につける機会を得ています。実際に対処できる行動を起こすには経験が必要となり、主体性を発揮できる場面を多く経験した個体が、ストレスへの耐性を高める事になります。

レジリエンス(回復力)を付けるためには

エンリッチメントは主体性を高めるもっとも効果的な方法とされながら、では実際にストレスからの回復力には何が関係しているのでしょうか。

レジリエンス(回復力)に関係するものに次の5点があげられます。

  1. 主体性を高める

  2. エンリッチメント

  3. 身体的運動

  4. 社会的サポート(他の動物、人からのサポート)

  5. ストレッサーの質管理(予測可能、対処可能範囲、短時間)

ここではそれぞれの詳細について説明はいたしませんが、単にストレスに対処するといっても、多方面からのバランスの良いサポートや経験が必要になる事はいうまでもありません。

例えば、犬の散歩。犬が立ち止まった時あなたはどうしていますか?どうしたの?早く行きましょうと、犬が再び歩き出すことを即すのが一番一般的でしょう。犬が立ち止まる(歩かなくなる)とう行為は以下の事が考えられます。

  • 何かを怖がっている

  • 身体的不具合(病気、怪我)

  • 情報集め

このいずれであるかは、犬を見れば分かるでしょう。この中でネグレクトされがちなのが情報集め。それは怖がったり、身体的不具合があった場合より外観では判断しにくいからです。立ち止まってしまう事で、お散歩嫌いとか、怠惰とかのレッテルを貼られてしまう犬も少なくありません。お散歩は急がず情報集めに専念することは、ストレス耐性を付けるためにも大事な事です。(この情報集めには、視覚、聴覚、嗅覚、触覚を使ったものが含まれます)

まとめ

ストレスへの対処とは決してストレスに慣れる事でも、ストレスをやみくもに軽減することでもありません。ストレスそのものの管理と共に、犬が主体性を持って能力範囲内で受けたストレスを処理できることを目指のが大切なのです。

Dr. Kristina Spalding の著書
The Stress Factor in Dogs: Unlocking Resiliency and Enhancing Well-Being

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