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「アルファドッグ」理論を暴露 (前編)

「支配」を犬に行使することは間違った方法で、良い関係を築く為にはなりません。(原文:Debunking the “Alpha Dog” Theory  Whole Dog Journal)

アルファ神話はどこにでもあります。 インターネットでGoogle検索すると「アルファドッグ」で8500万件以上がヒットします。すべてのサイトが犬の支配を語っているわけではありませんが、ウェブサイト、書籍、ブログ、テレビ番組、獣医、トレーナー、行動の専門家など、文字通り何百万もの情報を目にすることができます。 そしてそれらは、人間はアルファでなければならないと語っています。これらの情報はすべては間違っています。 一つのこらず間違っているのです。

支配理論(200万以上のGoogle検索ヒット)として知られる犬の社会的行動に対する誤ったアプローチは、1930年代および1940年代にスイスの動物行動学者ルドルフ・シェンケルによって行われた動物園で飼育下にあるオオカミが、支配権を得るために群れの中で戦い勝者はアルファウルフとなると言う研究に基づいています。

「アルファ」ドッグ理論の起源

捕獲されたオオカミの行動に関するシェンケルの観察結果から派生した誤った推定は、野生のオオカミの行動、そして飼い犬に対して適応されています。 オオカミは階層上位ランクを求めて絶えず競争しており、アルファのオスとメスの攻撃的な行動のみが競争相手を抑えていると仮定されました。 シェンケルの指導に従った他の行動主義者も捕獲されたオオカミを研究し、シェンケルの研究を肯定しています。

問題は、それが通常のオオカミの行動ではないということです。 デビッド・メックが野生のオオカミの研究の紹介で以下のように述べています(Mech、2000)「無関係な捕獲されたオオカミの群れの行動に関する情報を自然の群れの家族構造に適用しようとすると、かなりの混乱が生じました。 このようなアプローチは、難民キャンプで人間を研究することにより、人間の家族動態に関する推論を引き出そうとしているようなものです。 同年齢の同胞グループを支配する「トップドッグ」としてのアルファオオカミの概念(Schenkel 1947; Rabb et al. 1967; Fox 1971a; Zimen 1975, 1982; Lockwood 1979; van Hooff et al. 1987)はとりわけ誤解を招きます」

私たちが今知っていることは、メックと他の人のおかげで、野生環境ではオオカミの群れは家族であり、つがいのオオカミと1〜3年内に生まれた子供達で構成されているということです。 時には、2つまたは3つの家族が一緒に生活している場合もあります。 子供達が成長すると、彼らはパックから離れていきます。 グループの唯一の長期メンバーはつがいの二頭です。 これとは対照的に、飼育下では無関係のオオカミが長年一緒に暮らすことを余儀なくされ、自然な野生の群れでは起こらない成長した個体間で緊張を生み出してしまうのです。

支配ベースのトレーニングは犬に対して失礼である

これらの研究は犬ではなくオオカミについてです。 犬の飼主とトレーナーが、オオカミの行動に関するすべての情報(それも誤情報)が、犬の行動と関係があると考え始めたのはどうしてでしょうか? この理論は多分こんな風に解釈されたのでしょう。「犬はオオカミの子孫です。 オオカミは階層のある群れを構成しており、攻撃的な雄のアルファが他のすべてを支配している。 したがって、犬を飼いならすのは、人間が犬を支配する必要がある」

おそらく、この誤った概念の支持者であり、著名人でもあるシーザー・ミランは、アルファロールなどの強制的技術を提唱する支配ベースのトレーナーとして最も知られています。 このスタイルのトレーニングの多くが軍隊に起源があることは、罰を重視していることから伺い知れます。

1906年まで遡って、コンラッド・モスト大佐はドイツ軍で、そして警察犬や使役犬を訓練するために強引な技術を使用していました。 第二次世界大戦の終了後、ウィリアム・ケーラーが彼の訓練に加わりました。

ケーラーはまた、民間犬の訓練士になる前に軍用犬を訓練しており、彼の記した文章には、犬を吊るし上げ振り回し、必要に応じて無意識に服従させる技術が見られます。 たとえば、犬が穴を掘るのを止めさせるには、ケーラーは、穴に水を満たし、溺れ死ぬ寸前まで犬の頭を水で満たされた穴に突っ込むことを提案しています。

1978年に飛び、犬の訓練の新しいモデルとしてニュー・スケートの修道士が登場します。「理解は犬達とのコミュニケーション、思いやり、そして繋がりの鍵である」という哲学を主張しました。 素晴らしいことです。 当時、僧たちは最先端であると考えられていましたが、彼らの慈悲深いイメージに反して、実際にはすっかり普及してしまった「アルファ・ウルフロール・オーバー」(現在はアルファロールと略称)に多大な影響を受けたのです。 捕獲されたオオカミの初期の観察を評価し、修道士はアルファロールが犬に対して自分の権威を示すための有用なツールであると結論付けました。 残念なことにこれは、より強い犬によって自発的にあまり強くない犬に提供される、強制でない従順なロールオーバーを完全な誤解したものとなりました。

「犬を訓練することは、尊敬と愛と理解に基づいた関係を構築することだ」と公言していながらも、彼らの最新の本である「神の犬:幸せで従順な犬への修道士の道」(2007)でさえ、 、誤った支配理論「親切で優しい表情は愛され、受け入れられている犬に伝える」という提案に続いて「しかし、悪い行動に対して厳く反応し伝えることは同様に重要です。 犬の目を凝視する事で、誰が支配しているかを分からせる事ができます。それは、人とペットの間に適切な支配階層を確立します。」と記述されています。

近年の20年間で正の強化ベースのトレーニングが出現したにもかかわらず、僧侶たちは、犬との本当に思いやりのある関係を気づく為には「尊敬」が一方通行であっては成立しない事を理解していないようです。

「アルファドッグ」理論を暴露 (後編) に続く

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