元日銀マンの東大教授が植田日銀にダメ出し
渡辺努教授は元日銀マンながら正論を吐いています。そもそもインフレターゲット(物価目標)とは、景気が加熱して賃金が上昇し、消費者物価(CPI)が目標ををはるかに超えたとき、景気を冷やすため金融引き締めの政策ターゲットとなる指標です。
日本では目標の2%を超えた上昇があったものの、その太宗が海外要因、つまり、新型コロナやウクライナ戦争に起因した食料・エネルギー価格上昇に伴うものでした。それらが落ち着いてきた今、日銀は生鮮食品を除く物価見通しを24年度後半には2%台前半、25年度1.9%、26年度1.9%といずれも目標の範囲内にとどまるとしています。
渡辺教授は、日銀がマイナス金利解除(金融引き締め)に転じた3月時点で物価が弱いことは分かっていながら利上げに踏み切ったと批判。日銀自身が先行きの物価は2%の上昇率の落ち着くと想定するのなら、今は何も政策変更する必要はない。植田日銀は物価目標でなく、金利目標目標になっている。経済学の基本から外れているというわけです。
先ごろ27ヶ月ぶりで実質賃金がプラスになったと報じられました。でも、残念ながらこれは一時的な可能性が高いです。つまり、ボーナスという変動の大きい特別の給与を円安などで儲かった企業が増やしたこと、いつもは7月支給の会社が定額減税に合わせて6月支給にしたこと、などが考えられます。因みに、決まって支給される給与は1.1%の減でした。
植田日銀総裁は岸田総理・茂木幹事長・河野DX大臣などにせっつかれる形で円安抑止の利上げをやってしまいました。内田副総裁の継続利上げに対する軌道修正発言以来、株価は上昇基調に転じていますが、株価が元に戻れば利上げ継続となるので、米欧の中央銀行が利下げに転換している時、日本だけが逆向きだと日本経済にブレーキがかかるのは必至だと思います。
継続利上げが何をもたらすか? 私のような年の人間には忘れもしない平成元年(1989年)のdeja-vu(既視感)ですね。翌年から日本はバブル崩壊、失われた30年の幕開けとなりました。成長しない経済、給料の上がらない経済、日本はとてつもなく貧しい国になりました。継続的金融引き締めが日本をダメにする失敗の教訓を忘れないようにしたいものです。