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21.忘れもしない体験談 教科書では教えてくれない、介護士のすすめ

特養に勤めていた頃に、出会ったご利用者の話です。
入職して配属されたグループに、いらっしゃった女性のご利用者で、名前を仮に加藤さんと呼ばして頂きます。

加藤さんは食事に課題があり、食事の好き嫌いなのか、介助者の好き嫌いなのか?口を余り開けて頂けない方でした。
配膳から1時間を、食事に要する事も1週間のうちに多々あったと思います。
ADLは拘縮が両手にあり、手を左右前後に動かす程度。下肢筋力は支えながら10秒位なら、立位が出来たと思います。
発語は唸る程度、表情は豊かな時も有れば・・・ムスッとして一日中を過ごされる時もあります。

思い出しましたが‼️
人の顔を拘縮のある手で、名一杯ツネるのが好きでしたね。
ツネっている時は、常に笑顔でした😅。

自分が入職する前から、入所され発語を最後に聞いたのは5、6年前という話でした。

大体、新人職員は加藤さんに好かれるかを判断する為に、食事介助をやらされるのが定番です。
自分も何度か食事介助に入り、数口しか食べてもらえずに、そっぽを向かれ先輩職員が笑わっていた光景を覚えています。

まぁ、それが悔しくて・・・
毎日、加藤さんに独り言のように声をかけていました。
2年目の職員になり、ひたすら声をかけていたのをグループリーダーが見ており、加藤さんの担当職員になりました。

どう?アプローチをしたものかと悩み
生み出した答えが
☝️
毎日、声をかけて顔を近づける。
加藤さんがビンタを自分にして、爆笑する。
それを出勤日に毎回、行っていました。

今考えると・・・介護士として、引き出しがなく馬鹿だな。
と思います。

担当職員を一年続けたと思います。
息子さんとも親しくなり、加藤さんの性格や昔の暮らしぶりを何度か聞きました。

「ありゃ、頑固な婆さまだから・・・。親父が亡くなってからは、猫と暮らしていた。その頃から俺にも話してこん」と言っておられ、
発語も6年は確実にないことから、機能的に難しいだろうとの判断を医師にも受けています。
認知症と診断もされていますが、曖昧なもので既往に脳梗塞があり、原因はこれだろうと検査もされずに言われていました。

そんなある日、実習生が訪れていました。
自分は遅番で、昼前からの出勤で勤務前にフロアへ行くと
実習生の女の子二人が、加藤さんに声を掛けています。

「どこから、来たんだい?」
「横浜です。二人とも」
「そうかい。若くていいね」
加藤さんと楽しそうに話している。
今日も元気そうだと思い、通り過ぎようとして・・・違和感に気づく。

加藤さんが会話している⁉︎
発音も、滑舌も良く会話している!!
え・・・なんで
⁉︎
しゃべってるの?

「加藤さん、喋れるの?」
と加藤さんに詰め寄る。
「喋れるのよ。当たり前じゃない」
と加藤さんは、返したのです。

8年間は、確実に発語がありませんでした。
自分も当然、会話など出来ないだろうと
決めつけの対応をしていた。

何故?喋らなかったのか?
加藤さんいわく「喋れる必要がないだろ」
とのことです。
レアなケースでは、ありますが先入観による決め付けを行った結果です。
その後、加藤さんは3日間は会話をしてくださいましたが、また口を閉し2年後に旅立たれました。

自分の意図としないで、施設に入った加藤さんは、その頑固さから口を閉ざしてしまい医師までも欺いた結果です。
入りたくもない、介護施設に入り。
合わない職員に、囲まれる。
しょうがないと自分に、言い聞かせながら。


ご観覧ありがとうございました。

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