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4月5日 - クオモNY州知事の会見

今日のクオモNY州知事の会見は、質疑応答も含めて、38分。この数日会見時間が短くなっている。クオモ知事が話している途中にスライドがどんどん代わり、それを知事が追いかけるというシーンをよく見る。これはまわりのスタッフが会見時間を短縮しようとしていると想像する。これは良いことだと思う。クソ忙しいのだから、必要な情報をシェアしたらさっさと仕事に戻ってもらった方がいい。時間があまりないことが分かれば、ピント外れな記者の質問も減ることを期待できる。

毎朝11時前後にクオモ知事の会見はあるのだが、ホワイトハウスのコロナ・タスクフォースの会見は午後に行われる。午後5時から始めて7時くらいまでやってることもある。これは時間がもったいない。その間、ファウチ博士もブリックス博士も時間を取られてしまう。トランプと記者の冗長でくだらないやりとりが原因だ。トランプの言われたら言い返す、あの性格は変わらないのだから、記者も煽りをやめて、この事態の改善に役に立つような議論に集中するべきだと思う。好悪の情を垂れ流すような話はホント無駄。

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会見開始2秒くらいで統計のアップデートに入っていった。最近は毎回このグラフから始まる。感染者数の推移を示すグラフ。細かい数字を見ない人は多い。この曲線が坂を登っているということだけでも分かればいいと思う。やがて頂点(Apex)に到達し、いつか下坂になった時、NY州民はそれを実感できるだろう。

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NY州の全検査件数:302,280人。
NY州の昨日の検査件数:18,659人。

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NY州の感染者数:122,031人。
昨日発見された感染者数:8,327人。
つまり、検査を受けた人の45%が感染者。

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NY州の全感染者数::122,031人。
入院者数:16,479人。(感染者の13.5%)
ICU入院者数:4,376人。(感染者の3.6%)
退院者数:12,187人。

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死者数は、594人増えて、4,159人。

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この三日間の死者数を見ると、昨日始めて前日より減っている。

4月2日:562人。
4月3日:630人。
4月4日:594人。

但し、たった1日のことなので、これだけではまだなんとも言えないとクオモ知事は念を押していた。

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次は、感染者の多い他州の数字。この数日、デトロイト(ミシガン州)、ニューオーリンズ(ルイジアナ州)、シカゴ(イリノイ州)などの人口集中地域を持つ感染爆発がメディアでしばしば出てくる。この数週間はたくさんの死者が出るとトランプが警告していたのは、NY州、NJ州を含めてこれらの州のこと。

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入院者数の推移。昨日はかなり減っている。

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ICU入院者数の推移。これも当然かなり減っている。

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人工呼吸器を必要とする患者数。これも少し減っている。

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退院者数。これは少し増えている。

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このグラフはNY州内で感染者数の多い地域の割合を示している。圧倒的に多いのが黄色い部分のNY市。これはマンハッタンとその周辺地域を含む。その次に多いのが水色の部分のロングアイランド。これは東西に伸びる広い地域で東の端っこはセレブや金融界のお金持ちの別荘地だが西の方にはマンハッタンに仕事で通う人も多い。この地域の感染者が急速に増えている。その上の青色は最初に感染爆発が起こったアップステートの高級住宅地でここからマンハッタンに通う人も多い。ここではスーパースプレッダーが特定され、感染拡大が比較的抑え込まれている。

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上のいくつかのグラフを見て、頂点はいつだという疑問について、クオモ知事は説明する。毎日の新しいデータが供給される、何種類ものモデルをこのチームで毎晩検討しているそうだが、様々な結果が出ているらしい。しかも、曲線の形が一つの山を超えて下り坂になるものもあれば、てっぺんでプラトー(平たい台地みたいなもの)になり、それがしばらく続くものもある。だから正確なことはなんとも言えない。

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ここから統計を離れて、現状を話し始めた。

このウイルスは邪悪な敵だと言う。一番弱いところを狙うからだ。

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最も弱い人たちを隔離して、守らなければいけない。

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最も弱い人たちがいったん感染してしまうと、治癒するのはとても難しい、と現実的な苦境を明かす。

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しかし、脆弱ではない人たちに対しては、医療体制が勝敗を分けると言う。実際、これまで入院した人の74%が退院しているのだと。

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このオペレーションの困難な課題は、医療体制のキャパを超えているということだ。

余談だが、ここで日本の文脈なら、「医療崩壊」という話になるが、クオモ知事の話に限らず、アメリカの文脈では、聞いたことがない。「医療崩壊」という言葉の怪しいのは、それがバイナリーの概念だからだと思う。1か0か、白か黒か、崩壊か崩壊じゃないか、というような。

アメリカでもコロナ対応のキャパについての議論が喧々諤々続いているのだが、そのモードが、自軍のキャパを敵軍が圧倒してくるのか、どれくらい圧倒してくるのか、いつ圧倒してくるのか、それなら自軍の増強はいつ、どれくらいしなければいけないのか、それは現在可能なのか不可能なのか、不可能ならどうやってそれを可能にするのか、というようなものだ。

根本的には精神性の違いが現れているように思えてならない。

その結果、強烈な負荷が医療現場にかかっているとことをクオモ知事は語る。連日、テレビで報道されることなので、NY州民はみんな知っている。それを軽減するためにあらゆることをやっていることも、NY州民は知っている。この会見の後、夕方にあったホワイトハウスでの会見では、連邦政府のNY州への救援策を出していた。

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この後、クオモ知事は、人生は選択だ、人生には選択があるという話を始めた。

しかし、今、我々には選択肢はない。持てるものを全て使って対抗するしかない、という。

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敵は波状攻撃を仕掛けてくる(Surge and Flex)。一箇所で猛攻があったと思えば別の場所に移って攻撃をしてくる。伸縮自在の怪物なのだ。今現在、NY市内からロングアイランドへ攻撃が移動しているように見える(下の地図の横長の島)。

これに対抗するためには、負荷を一箇所に集めず、医療サプライを常に必要なところを回しながら、防戦をする他ないと。彼がこれまで説明してきた作戦、rolling operationの説明をする。

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国家的にも同じ作戦で対抗するしか方法はないと彼は言う。実際、昨日と今日のホワイトハウスの会見ではそれを採用して、自軍の増援を攻撃の激しいところに動員し、収まったところからはすぐに引き上げ、それを別の戦線に回すと言うオペレーションの説明をしていた。

100のキャパを全体に満遍なくばらまいていては絶対に勝てない、攻撃のあるところへ集中して、部分的には優位になる瞬間を作るという作戦の共通理解が既に出来上がっているのだろう。

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連邦政府から医者、看護師、その他の医療技術者など1000人の援軍がやってくる。プライオリティはNY市の公立病院。今日、既に325人が派遣された。ここで局地的な優位を取り返して押し戻したいということだ。

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彼はここで最前線の医療従事者、医療施設の清掃をする人たち、警官や消防署の人たちに深く感謝した。いくら感謝してもしきれないと。

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ここから話題が変わって、コロナウイルスに伴う人々の精神的苦痛について話し始めた。これまでも何度もこれに触れているが、昨日の会見で、情緒の不安定やそれに伴うドメスティック・バイオレンス(DV)についての質問があったから、改めて言及したのではないだろうか。

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長い期間、家に閉じこもることによって、いわゆる"Cabin Fever" と呼ばれるものが発生しているのは認識していると彼は言う。

辞書的には、"extreme irritability and restlessness from living in isolation or a confined indoor area for a prolonged time" (Merriam-Webster)

孤独を感じたり、気分の揺れが激しくなったり、周りの人を恨んだり、理由もなくキレたりする現象が起きる。

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彼は、アメリカ憲法の「国内の平穏を保障し」というところを引用して、この状態はそれに対する脅威でもあるという。domestic を国内ではなく、家庭内と読み換えて見ると、彼の意図によく合う。

アメリカ憲法前文:We the people of the United States, in order to form a more perfect union, establish justice, insure domestic tranquility, provide for the common defense, promote the general welfare, and secure the blessings of liberty to ourselves and our posterity, do ordain and establish this Constitution for the United States of America.
(訳)われら合衆国の国民は、より完全な連邦を形成し、正義を樹立し、国内の平穏を保障し、共同の防衛に 備え、一般の福祉を増進し、われらとわれらの子孫のために自由の恵沢を確保する目的をもって、ここに アメリカ合衆国のためにこの憲法を制定し、確定する。

彼は若い頃、弁護士として働いていたので、こういうことがすぐに思い浮かぶのだろうと思う。ニューヨークのホームレスらのための住宅供給政策に呼応してNPOを作ったり、NY市のホームレス委員会の議長を務めたりしていた。

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"Cabin Fever" に何ができるか、私には分からないと彼はいう。しかし、積極的に対処したいと言う。彼はいつも走っているのだが、この事態になってやめてしまった。しかし、それを復活させる。娘と一緒に走る。飼っている犬も"Cabin Fever" になっているので一緒に走ると。

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もう一つ、彼が提言したのは、歴史的なパースペクティブの中で今何が起こっているか見てみようということだった。1918年のパンデミック(スペイン風)、第一次世界大戦、第二次世界大戦、9・11同時多発テロ等々。私たちは何度も危機に見舞われてきた。しかし、それらは過去のものとなった。

これもいつかは終わるのだ、と。

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それに続いて、今行われている医療面でのコロナウイルス対策を列挙した。 
 ワクチンの開発、
 プラズマ治療の研究、
 抗体治療、
 ヒドロクシクロロキンの試験・研究

最後に、正常な状態を取り戻すためには、迅速な検査が鍵だ、と強調した。大規模な検査を迅速に行うための研究実験が今行われている。これによって、正常な生活に戻っていく道をつけると。(明示的には言わなかったが、これは抗体検査のことではないかと思う)。

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最後に、NY州はタフなのだと州民に思い出させて、終わった。(文というよりも、"New York State Tough" がスローガンになっている)。

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今日の動画はここで(↓)見れます。

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