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4月27日 - クオモNY州知事の会見


統計

クオモ知事の毎日見せるグラフ見てて、まだまだ終息にはほど遠いけど、なんかもうここまで来たかと思うと感慨深いな。

入院しているコロナ感染者の数の推移

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入院者数の1日あたりの増減

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人工呼吸器を必要とする人の1日あたりの増減

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1日に入院する人の数

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過去1週間の死者数の推移

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抗体検査の暫定的報告2

クオモ氏は抗体検査を先週始めたけど、7,500人の抗体検査が済んだところで2回目の暫定結果。

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まず全体で抗体の陽性率は前回の3,000人の時点よりやや増えてる。

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女性より男性の方が高い率なのは変わりないが両方とも増えている。

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ニューヨーク市はやはりニューヨーク州の中でダントツで高い。4人に一人が最強コロナ抗体人。マンハッタンの再開には有利。

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人種別ではラテン系(中南米系)が3割超え。これは単なる実感だけど、食べ物のデリバリーに来る人は圧倒的にラテン系なので、この数字にあまり違和感を感じない。

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これはマンハッタンの北の広大なアップステートと呼ぶ地域の郡別の抗体陽性率。アップステートは人より牛の方が多いと呼ばれるくらい、マンハッタンとは似ても似つかぬ大自然の美しい地域。抗体陽性率はガクンと落ちる。

ウェストチェスター郡が高いのが目立つが、ここに最初の感染爆発を起こした街がある。ウェストチェスター郡からマンハッタンに仕事で通う人は多いから、ウイルスに侵入されやすい。

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再開

曲線が平になり、下降を始めて、再開(REOPEN)準備が大きな課題になってきた。クオモ知事はこれまでも基本的な姿勢を何度も共有して、彼がリーダーになり、アメリカ北東部7州と歩調を合わせて再開することに合意し、マッキンゼーに取りまとめを依頼している。丸投げではなく、彼の基本的な考え方が大きく影響していると思われる。

「何かをするなら、何をしているか理解していなければいけない」と言う言葉を引用している。誰が言ったか分からないが、これは普通の会話でもよく使う。

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5月15日に現在実施中のコロナ対策、NY PAUSE(みんな家にいようとか、必須ビジネス以外のお店も会社も閉めるとか、いわゆるロックダウンと総称されるもの)の期限が一応切れることになってるんだけど、賢くやろうって話。ここで、今までクオモ氏が考慮していると何度も共有していたことを箇条書きにして、まとめてくれた。

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1. まず、CDCのガイドライン。というよりも、トランプがコロナ・タスクフォースに命じて作らせたもので、バークス先生がコーディネータにCDCだけでなく、多種類の専門分野の人を集めてまとめたものなので、トランプのガイドラインと呼ぶべきもの。これが連邦政府のガイドラインとなって、州政府はそれぞれの状況に合わせて、再開のステップを作成することになっている。ガイドラインに強制力はないので、州政府が勝手に好き放題することもできる。実際、ガイドラインを無視して勝手に再開に踏み切るトランプのお友達知事もいるのだが、大方の予想を裏切って、トランプはそれを擁護せず、I'm not happy と言ったので、メディアはトランプを叩く記事を書くチャンスを一回失った。

このガイドラインは、トランプが再開したいコールを連発していた4月初旬に出されたので、再開強行派の知事たちは、自分たちに有利なものが出ると期待していたのだが、蓋を開けてみると全然違うものが出てきて、彼らを多いに落胆させた。

このガイドラインは三つのフェーズで段階的に再開していくことを勧めているのだが、各フェーズを上がっていく条件が、もう家にいるの飽きたとか、早くマッサージ行きたいとか、バーでビール呑みたいとか、これ以上仕事止めたら破産するとかじゃなくて、医療面での考慮になっている。例えば、「感染者が14日続けて減少すること」みたいな条件が設定されている。これがクオモ知事の一番目の項目に書いていある、14-day declineの意味。

このガイドラインの基本的姿勢は、経済再開暴走派を公衆衛生の観点から歯止めをかけながら進めるということになっている。そして、各州政府にあとは自分で考えろ、という姿勢。これは重要だけど超絶にシンプルな基本文書なので、日本政府も(どこの政府でも)テンプレとして参考にできると思うが、そもそも日本のメディアはこれ説明しているのかどうか知らない。

これより、はるかに詳細な”再開へのロードマップ”系ドキュメントは他にも色々出てるし、これからも増えてくるので、参考材料はいくらでもある。気がついたものはここに入れておく。

2. 産業ごとに事情は違うが、どの産業から再開するかの考慮が必要。上のガイドラインはフェーズ1で建築・製造業を挙げている。

3. それぞれのビジネスがどのような注意をすれば良いか。例えば、社内ソーシャル・ディスタンシングとか、感染状況の監視はどうするか。

4. 医療キャパはどの程度に設定しておくか。例えば、ICUキャパや、インフルシーズン時に第二波による攻撃が始まった時の備えとか。

5. 検査体制の準備は?

6. 追跡調査システムの準備は?

7. 隔離施設の準備は?

8. 地域でのコーディネーションはできているか?例えば、学校、公共交通機関、検査、追跡調査などの体制。

9. Attractive nuisance はないか?(法律用語だけどこれに当たる日本語知らない)。ここでは、たくさんの人を引きつけて感染を拡大してしまうものはないかという意味。例えば、今ローリング・ストーンズのコンサートをセントラルパークでやれば、数万人が全米から集まって感染爆発を起こすから止めようなと言われてることがニューヨーカーには分かる。

10. 地域的に司令室は作ったか?これは、感染状況をモニターし続けてバルブを開けたり閉めたり微妙な調整が必要だという話で、そのための監視をする機能を作ったかということ。

そして、これが彼のバルブのイメージなのだが、四つのメーターがついている。

■入院率
■抗体検査
■感染検査
■感染率

この四つを監視しながら、もし再開が悪影響を与えていると、またNY PAUSEに戻ったりすることを考えているのだろうと思う。

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再開するとなると、工兵隊が既存の施設を野戦病院に変えたものを元に戻す必要が出てくるが、秋のインフルシーズンに第二波がもし襲ってきたら、また医療キャパは逼迫するので、それまで置いておくことも考慮しているようだった。但し、最終決定をするまでまだ少し時間がある。

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感染・抗体検査

NY州の感染検査のキャパは現在一日2万件前後なのだが、これを4万まで増加する。そして、抗体検査同様(下に出てくる)、感染検査を受けるための基準を拡大し、ドライブスルー検査場を増加する。

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検査受けたい人はここに電話するか、サイトに行けばよい。

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NY PAUSE 中もずっと仕事をしている警察、消防、医療従事者、交通機関の従事者たちにコロナの犠牲者が多い。抗体検査は彼らに優先的に受けてもらい、再開に備える。

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フードバンク

日本に同様のものがあるのかどうか分からないので、フードバンクとそのままカタカナにするが、食料を無償で配給する場所のことを指す。まだ実際に利用したことないので、どのようなものかよく分からないが、その需要が下のスライドのように激増しているそうだ。


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この需要を満たすために、NY州は27億円ほどの緊急追加予算を認めた。


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知事はフィランソロピーの団体に手伝って欲しいと訴えて、連絡先を公表。


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NY州のアップステートは農業や酪農が多く、そこの生産物がNYメトロポリタンエリアで消費されて成り立っている。しかし、お店が閉まって買い手が激減してしまったので生産物を売る場所がなく、農産物や牛のミルクを捨てるというニュースが出てきた。

クオモ知事はフードバンクの食料が足りないと言ってる時に、そんなバカなことはあるかと、新しい企画を作った。それが The Nourish New York Initiative というもの。州政府が農家や酪農家から生産物を買い取って、それをフードバンクにばらまくという企画。下に責任者の名前がずらっと並んでいる。


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この企画に食品加工業者も参加して協力する。


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REIMAGINE

コロナ一回戦が終わりに近づき、再開の話題で忙しいのだが、クオモ知事は単なる再開ではなく、この機会をつかまえてもっといいものを作ろうとずっと提唱している。それを彼はReimagine という言葉を使って表している。直訳すると、再考するとか再想像するだけど、どうもピンと来ないのでそのままReimagine と書いた。

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彼はここで過去の例をたくさん挙げて、全てのケースで悲劇の後、以前よりよくなったことを示している。

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だから、この危機に対応して、以前より良くなるかどうかは、私たちしだいなのだと言う。


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これも彼は何度もあげている例だが、

遠隔教育
遠隔医療
公共交通
公衆衛生システム
社会的公平

などを考え直して改善する機会だと言う。


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私たちの生活は変わるだろう。しかし、それは単に異なるのではない。より良くなるのだと言う。


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私たちが作り直した時、ニューヨークは、以前より、

もっとタフに、
もっと賢く、
もっと打たれ強く、
もっと団結し、
より良くなっているだろう。

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政治

「私は、選挙で選ばれたにも関わらず典型的な政治家ではない人を尊敬する」というケンタッキー州知事 Andy Beshear のスライドを見せた。

ケンタッキー州と言えば、あのクソ上院議員マコーネルの州だ。この危機に及んでも民主党の州は助けないという、党派性でしかものが言えない政治野の醜悪さをさらけだすマコーネルをAndy Beshear は批判したのだ。マコーネルは良く悪くも議会の重鎮、Andy Beshearは政治家としては若造だ。同じ共和党員として、将来不利になるにも関わらず、彼はそんな発言をした。クオモ知事は、Andy Beshearを尊敬すると言って、このスライドを見せたのだった。

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中央の政治がいかにバカげたことをやってるかをクオモ氏は数字を出して説明した。簡単に言うと、毎年州から徴収するあがりと連邦税が連邦政府の懐に入り、そこから連邦政府は州に配分するのだが、差し引きすると、持ち出しになる州と、坊主丸儲けの州がある。前者の代表的な例がニューヨーク州で、後者の代表的な例の一つがマコーネルのケンタッキー州のような貧乏州になる。つまり、毎年ケンタッキー州はニューヨーク州の年貢の一部を食っているようなものだ。にもかかわらず、マコーネルはニューヨーク州なんて民主党が知事だから助けなくていいと言う。クオモ知事は本当に怒ってるのは良く分かる。あいつはアホだと何度も言ってる。ニューヨークタイムズ紙もマコーネルは頭が悪いと書いている。

どうなるか分からないが、ニューヨーク州が破産するかどうかはこの数ヶ月で分かるだろう。

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この会見は、ここで見れます。

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