4月23日 - クオモNY州知事の会見
「Facts, Facts, Facts。いいFacts、悪いFacts。そんなものはない。Factsは、Factsだ」という言葉で始まった。
なんで私がそんなにFacts に拘るか、とクオモ知事は説明し始めた。この事態は皆さんの自発性に依存しなければ勝てないのです。私が一人一人に家にいろと強制する事は出来ない。しかし、Factsを示せば、皆さんの賢明さで何をするべきかと自分で判断することができる。私はそう信じているからです、と。
統計
いつもの統計から始めた。下降曲線がもうはっきりしてる。1日の死者数も減ってきている。とはいえ、この死者数は何週間か前に入院した人たちの反映なのでまだまだ多い。
1日の新規入院者数はほぼフラットで減っていない。まだ、全く気を抜けない状態であることには変わりない。
入院しているコロナ感染者の数の推移
入院者数の1日あたりの増減
人工呼吸器を必要とする人の1日あたりの増減
1日に入院する人の数
過去1週間の死者数の推移
監視するべき問題
統計のアップデートの後、これらの数字を見て彼が注意して見ている問題を視聴者とシェアした。
一つ目は、この曲線の下降(感染者の減少)がどれくらい速く進むのかということ。ストンと落ちてくるのか、なだらかに減っていくのか?
二つ目は、毎日新しく入院する患者の数がいつ減り始めるのかということ。感染者の一定の割合が確実に入院するわけだから、この数字が減らないと、感染者は減っていないということになる。
感染者数は、検査実施キャパに制限され、入院者数は、医療キャパに制限される。世界最大の検査能力を確立したNY州でも、全人口1900万人を一瞬で検査するようなあり得ないことが出来ない限り、実態をつかむのが難しい。しかし、医療キャパの爆発的な増強に成功したNY州は、感染患者の入院を断ることはないので、入院者数は感染の実態をかなり正確な反映することができる。
三つ目は、第二波がいつ来るかということ。秋に来るだろうと言う人が多いが、それは分からない。秋に来ることの問題は、普通のインフルエンザの流行と重なり医療キャパへの過剰負担になることだ。これは注意してモニターしておかないといけない。
老人ホームの強化改善
アメリカで最初に大量の死者が出たのは、ワシントン州の老人ホームであった。NY州でも老人ホームの死者が最初から注目されていた。全米で老人ホームが非常に脆弱である事は周知のこととなっている。
クオモ知事は、老人ホームを守ることを最優先課題にしている。
コロナによる死者は病院の統計を元にするので、何もしなければ、病院に行かない老人ホームでの死者は統計に出ない。クオモ氏は、老人ホームでのコロナによる死者と思われる人数をコロナ感染による死者の統計に加算している。
老人ホームは公営ではなく、民営なので州政府がその運営に直接介入する事はない。しかし、条例によって運営基準を規制することはできる。
クオモ知事は老人ホームの防衛のために行政命令を出し規制強化に乗り出した。
1. 老人ホームのスタッフは防護服を用意しておき、施設に入る前に検温をすること。
2. コロナ感染者は隔離すること。
3. 施設内でコロナ感染者を隔離することが出来なければ、他の施設へ移さなければいけない。
4. もし感染者が発生した場合もしくはコロナに死んだ場合は、老人ホーム居住者全員と近親者に24時間以内に連絡しなければいけない。
5. 保健局とCDCの指導に従って適切な世話をする能力がある場合に限って、コロナ感染者を再び受け入れることができる。
老人ホームにとって、入居者が減ると経営に響く。だから、特に5のような規制は、老人ホームにとってサービス改善のインセンティブが働く。
さらに、このような規制を実効性のあるものにするため、彼はNY州の検事総長、レティトゥラ・ジェームスの協力を得て、行政命令が守られているを捜査することにした。
○そして、全ての老人ホームに保健局とCDCの基準を遵守するために何をしたかを直ぐに報告することを命じた。
○保健局は、遵守違反があった老人ホームを調査する。
○もし遵守違反があった場合は、老人ホームは即座に改善案を提出しなければいけない。罰金110万円もしくは免許取り消しを含む罰則を受ける。
やるとなれば、徹底的にやる人というのは今までによく見えていたけど、やはりそれはここでも一貫してる。
検査
毎日、クオモの会見だけでなく、メディアは検査の話題でいっぱいだが、今日は新しい報告があった。まず、最初に検査の目的を三つに整理した。
(a) 検査ー追跡調査ー隔離(これは日本で言うならPCR検査)
(b) 抗体が陽性のものはプラズマ治療のため献血を行える(抗体検査)
(c) 再開戦略のためのデータを供給できる。
NY州は、1日あたり3,000人の抗体検査の体制を整えた。これは今週月曜日(4月20日)から始まった。
そして、今日最初の暫定的な結果を報告する。
○19の郡の40箇所で二日間に渡って検体を集めた。
○食料品店や雑貨屋で検体を集めた。
全体で、抗体を持っていたのは13.9%出会った。
抗体検査をした男女比は、女52%、男48%。女性の抗体陽性率は、12%、男性は、15.9%。
地域別に見れば、NY市の抗体陽性率が一番高く、21.2%。5人に1人は既に抗体を持っている。ロングアイランドが16.7%、ウェストチェスター/ロックランドが11.7%、その他の地域が3.6%。感染者の分布をよく反映している。
人種別に見ると、黒人、ラティノ/ヒスパニックなどが22%台と高く、アジア系が11.7%、白人が9.1%と低い。経済的地位との相関関係が出ている。
年齢別に見ると、あまり大きな差は現れていない。18歳未満は抗体検査の対象とはしなかった。
最初の表の全体の抗体陽性率、13.9%を全人口で感染した割合と仮定したら、致死率は今まで考えられていたより低くなる。現時点での死者数で計算すると、致死率は0.5%になる。
今後、このような分析を続け、地域ごとの政策決定に生かしていくという。
下は、ニューヨーク州内の地域を色分けした地図。
今後、抗体陽性率の高いことが分かった、アフリカ系、中南米系アメリカ人の抗体検査を増加させていく。
政治
以上で終わったかに見えたのだが、共和党のマコーネル上院議員の写真が出てきた。そのスライドに書かれているのは、「州を破産させることに賛成だ」という彼が前日言った言葉だった。
クオモ知事ははっきりと怒りを表していた。歴史上最もバカげた考えの一つだと。
連邦政府が航空会社や中小企業を救済することに文句はない。しかし、州を見捨ててどうなるか分かってるのか?警察、消防署、学校、医療がストップするのだ。こんなバカげたことあるか?
経済再開をしたいというが、州が破産していてそんなことができると思ってるのか?ニューヨーク州を破産させろ、イリノイ州を破産させろ、ミシガン州を破産させろ!それからストックマーケットがどうなるか見てみたらいい!
次のスライドには、「青い州(民主党が知事の州)を救済するのを止める」とあった。
コロナに大打撃を受けた州は、どういうわけか、民主党の知事がいる州で、しかも経済規模の大きな州であった。ニューヨーク州、カリフォルニア州、イリノイ州など。民主党の州を助けるのは止めようというのが、この上院議員の意見なのだ。
「なんて醜い考えだ!」とクオモ氏は吐き出した。
「ちょっと考えてみて欲しい。15,000人が死んだ、でも民主党だから助けない?もし人間性があるなら、それが必要なのが今だ。ほんの少し、その小心さ、政治の眼鏡でしか見ることを横に置いておくことはできないのか?」
と呆れと怒りの混じった顔でクオモ氏は語った。
今、政治をやってる時間はない。
赤(共和党)とか青(民主党)とか言ってる場合じゃない。赤・白・青(🇺🇸)なのだ。
相当、怒りで興奮していたのだが、最後にまた落ち着いて、NEW YORK TOUGH を思い出させていた。賢明で、規律を持って、団結して、愛する。
その後、このマコーネル上院議員の言葉は大炎上を起こしている。一つだけニューヨークタイムズの記事をあげておく。『ミッチ・マコーネルは自分で思ってるほど賢くはない』
* * *
もし記事が気に入ったら、サポートもよろしくお願いします! よしログ