【小説】インクルージョン〜内包されたもの〜1
幼い頃、近所の雑木林に群生している紫陽花の青色が好きで、私は飽かずにその色を眺めていたものだ。雲が重たげに空を覆い、雨にけぶった世界の中で、木陰の紫陽花がくっきりと際立っていた。
湿り気を含んだブルーグレイのヴェールが世界を覆い、私自身の心も物憂い空気に侵食されている。けれども、こどもの私は世界との境界線がなくなって、物憂い色に染まるのを喜んでいる。絵の具バケツに垂らした絵の具の色が、じわじわと広がっていく様を楽しむように。雨の日の秘密の遊び。
滲んだこころ模様でふ