※創作であり、実在する人物や団体などとは関係ありません。 『高い旅館に泊まったら、大失敗。多すぎて到底食べきれない。廃棄前提としか思えない。不味くはないけど、体験価値としては…』 自分の投稿があっという間に炎上するのを他人事のように見ながら、男は幼い頃のことを思い出していた。 夏休みや冬休みには、母に連れられて父の実家へ遊びに行った。 祖母の作る料理はいつも盛り沢山だった。何枚もの大皿に山盛りの料理が並んだ。食べるのは男と、男の妹、そして祖母と母だけだったのに。 普段は
「母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ」 見知らぬ高齢男性に思いがけない声をかけられた女性は、うつむいたまま幼子の手を引いてその場を離れた。 男は納得がいかないのであった。 母親は子どものためなら、どんなに忙しくても料理の手を抜くべきではない。当然のことだ。 男の妻もそうであった。男は定年まで仕事が忙しく、家のことなど何一つ手伝わなかったが、妻は働きながらもしっかりと子どもを育て上げた。料理もほとんどすべてが手づくりであった。もっとも、男が定年を迎えた翌日、妻は家を出