映画レビュー もう見た人の為の、『アフターサン』
経験がないと行間が読めないかも⁇
『アフターサン』
シネリーブル梅田で雨の中見てきました
映像が良い、繊細だけど重い、配役が良い、子役上手い、余韻が残る、わかりにくい、ストーリーが無い
ネット上では賛否両論ありますが、個人的には賛。
監督のかなりパーソナルな映画で、それがエンタメに反映されてるのではなく、あくまでパーソナルなので分かりにくく評価もし難い作りになっていると思います。
時系列はそのままだが、断片的な記録と記憶の映像と、現在の主人公の映像とが出てくるが、明確なストーリーがある訳でもなく、何が起こりその結果どうなるという因果関係も無いため、行間を読むのも苦労します。
特に、似たような体験や記憶がないと、映像で表現されているエモーションを感じ取れない作品だと思いました。
目次
父は精神に問題を抱えている。
主人公の娘が大人になり、母になっている。
父のメンタル
父が精神に問題を抱えていることが、チラホラ散見されます。また、それが原因かわかりませんが、離婚もしている。仕事もおそらく定職には就いていない。おそらくお金にも困っているのでしょう。そして、子供の頃にそこまで親に愛されていなかったというセリフもありました。
昼間は元気。夜は落ち込む。
鬱病や精神的な病気を抱えている人なら、経験したことはあるのでは無いでしょうか。
少し状態が落ち着いてきても、時々不安定になる。
しかし、家族や大切な人の前ではなんとか頑張って元気に立ち振る舞い、自分の役目を果たそうとします。
が、それもストレスがかかり、より不安定になる。
私の父も、離婚経験があり、実の娘に会ったこともありますが、小学1年生だった為、いとこだと勘違いしてました。また、彼が鬱気味で、サッカーの送り迎えで、車の運転時衝動的な行動をするのも見ましたが、その時は鬱気味だと知りませんでした。親が隠していたので。
そんな私も、大学卒業前にメンタルの病気になり、『アフターサン』の父のように、昼間は元気そうだが夜になると落ち込む、親しい人の前では何とか自分を保とうとした経験があります。
この映画では、子供である主人公は、何もなく父の状況や大人の世界を理解し始めているが、まだ半分くらいしかわかっていません。実際、そういう表現をしたい映画です。
その分、『子供の頃何になりたかった?』という主人公のピュアな質問は、無理をしてやっと今の状態を保てている父にとってはキツイ。
『アフターサン』の父の描写や、不安な映像は、観る人の経験によってわかるわからないが分かれそうです。
映画のロジック的には不十分で、客観的に見て評価をするのは難しい側面が多いと思います。特に、エンタメとして昇華されてる訳では無いので。
母になった娘
主人公は母になってます。また、同性のパートナーと暮らしています。表情はどこか不安げです。
彼女も何かしら問題を抱えており、『何でも話して良いんだぞ』と言った父はおそらく他界してるのでしょう。(ラストシーンがそれを描写している)
彼女がビデオの中で見る父との思い出は、ピュアで美しいが家族の結末と背景を知っている、今の彼女は父に思いを馳せます。それが彼女にどんな影響を与えるのか?特に描写はありませんが、夢の中で父と大人になった自分のダンスシーンでポジティブな側面も見えます。子供の頃は理解してなかった父の部分を、今やっと理解したよということでしょうか。しかしそれがどの様な影響を彼女に与え、その結果どうなるのか。ストーリーが無い分、ただ思い出し何かに気づいただけに見え、退屈に感じる人もいるでしょう。
パーソナルな映画なので、万人受けはしませんが、それ故に興味深く個人的には特別な作品になりました。
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