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燕雀の志23

 年末から正月にかけ、中部にある家内の実家と、島根にある私の実家に帰っていた。この時期は例年ネット配信などでMリーガーや著名人による大規模な麻雀番組が放送されるものだが、もちろん私含め多くの麻雀プロには縁のない世界で、番組も見ないで親族と平凡な休暇を過ごしていた。
 さすがに帰省中は、全く麻雀をすることはない。昔親族がまだ大勢元気だった頃は、大人たちと麻雀で夜を明かしたりしたものだったが、もう人数も少なく、静かな正月であった。
 何もない田舎の実家周辺を、所在なくただ散策していた。とはいえ、打つ機会はなくとも近代麻雀の漫画原作などの執筆業もあるので、歩きながらもそれらのことを考えてはいた。
 田舎道を歩いていると、中学の同級生と30年ぶりにすれ違った。驚いた様子で彼が尋ねてくる。
「今何しとるん?」

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