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田幸浩が堀慎吾とかわした約束

(会報コラム「ボーダーライン」第13号/2023.6)

第22期の雀王戦A1リーグが開幕。

私は第1節を2023年4月9日(日)に終え、3314の△11.9pのスタート。
可もなく不可もなく。まあ穏やかな出だしというところだろう。

トップリーグに在籍するのは16回目になる。
途中一度降級したこともあるが、協会員では最多になる。

まあ長く協会にいるからではあるが、
誰よりも多くの来る者、落ちる者を見てきている気はする。

第16期、今から6年前のAリーグで最下位となったある選手がいた。
(当時はA1という名称ではなかった)

この期に私はすぐ下のリーグで優勝し、Aに返り咲きの昇級を決めていた。
同時に勝ち上がった選手は堀慎吾、下石戟。

その最下位だった選手と、私たちは入れ替わりでAという形になる。

彼の名は、田幸浩だ。

田幸は当時のAを1年目で降級。その壁に突き返された格好だ。
最終節を終え、遠く長野の自宅に戻って、その夜行われたあるA所属プロの振り返り配信を見た。

「来期は強いのが3人上がってくる。力のない者はどんどん淘汰され、どんどんAリーグらしくなってくる──」

そんな風な内容だったという。

淘汰されたのは自分だと、田幸は意識した。

周囲の評価でも、自己の評価でも、自分はそこにいる器ではなかったと、そう痛感し、悔しさに苛まれた。

田幸は3期後期の入会である。
長野在住で家庭もあり、東京で行われる勉強会や私設リーグにはとても参加できなかった。
リーグ戦のたびに家族を置いて、夜行バスや新幹線で往復する、そんな競技生活を何年も送っている。

この降級を喫したときに、自身の進退を考えたことはあった。

壁にぶち当たったり、生活環境だったり、選手が辞める理由としては自然なものだ。

しかしそのときに、田幸へこんな言葉を投げかけた選手がいた。

『僕は、田幸さんの麻雀好きですよ。田幸さんと打っていると、つい逃げずに力で勝ちにいきたくなっちゃいます。
 Aリーグではなくとも、どこかでまた勝負できるのを楽しみにしています──』

Twitterのリプライでこう言ったのは、このとき田幸と入れ替わりで昇級した堀慎吾だったのである。

当時は田幸の麻雀自体はまだ雑な部分もあり、堀も、確かに評価はされにくいだろうと。しかし、田幸が自分で思っているほど弱いわけではない、また上がってきて欲しいと、そんな気持ちだったという。

「麻雀って綺麗に打つ方が評価はされやすいんですが、それと勝ちやすさは別なんですよ。
 昔僕は田幸さんの攻めっぷりにびっくりして、自分が突っ張ってくる田幸さんから12000アガったんですけど・・・。
 今度は田幸さんが親リーしてきて、なんか自分だけ逃げるのは嫌になって、追っかけて僕が12000放銃し返したんです(笑)」

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