角谷ヨウスケってどんな麻雀?
(会報コラム「ボーダーライン」第5号/2022.10)
A1リーグの角谷ヨウスケのことを──、
勘違いしていたなと思った。
第5節のB卓の対局で、南家の金太賢がこんな恐るべきテンパイをしていた。
東東東発中中中 ポン南南南 ポン白白白 ドラ発
字一色。もちろん役満である。
ここに角谷が発を掴んだ。
角谷は、西バックのテンパイ。そこに字一色への当たり牌である。
発は3巡前に東家の小川裕之が切っていて、もちろんポンされていない。
このとき結構な数の視聴者が、角谷の放銃を予想したと思う。
何といっても角谷をよく知る者なら、彼のことは異常に押しの強い選手だというイメージが強いだろう。
“戦慄のバーサーカー”と、彼を評して例えるならそういう打ち手だと思う。
ところがそれに反し、角谷は捨て牌を一瞥すると──、
スッと安全牌を抜いてオリてしまった。
金は序盤にソーズを散らした後、③②と手出し、最終手出しは北である。
マンズのホンイツ気味ではあるが、四がすでに枯れていてどうも普通のシュンツがある構成が考えにくい。
見えていない字牌が東、中とあって、どうも字牌絡みの高打点があるのではないか。
冷静に読めば、そういった思考に落ち着くと思う。
しかし私はこのオリが、想像する角谷の麻雀と異なる印象があったし、多くの視聴者もそうだったのではないだろうか。
似たような状況が、第8節C卓の対局でもあった。
1回戦南3局、東家の下石戟が白待ちの国士無双テンパイ。48000の大花火である。
角谷はここでも放銃の危機に見舞われたが──、
やはり安全牌を切ってオリにまわった。
このとき西家の堀慎吾が二つ仕掛けており、白は堀の現物である。
下石の捨て牌には1発中9九とあり、国士にもかかわらず5枚もヤオチュウ牌を切っている。
それでも角谷は、下石の序盤の切りと、さらに堀に対する押し方から──、
下石の国士テンパイを看破していたことになる。
素晴らしい、と思う反面、
二年前A1リーグに復帰して、以前第15期雀王を獲得したときのような鬼神のごとき攻めは、どこかに置いてきてしまったのだろうか。
これは身勝手な話だが、
「角谷も、オリるんだ」
と、派手な放銃シーンを期待しながら肩透かしをくらったような、ちょっと寂しい感情はあった。
角谷は、よく打つしよくアガる。
それが他の平均的な選手とは一線を画しているし、特徴ある面白い打風として対局を楽しみにさせる存在ではあった。
ところが、である。
国士を止めたその日、2回戦のオーラスで角谷がその真価を見せる。
現在東家の橘哲也がリーチをしている。
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