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山本直樹「レッド」7巻 「北」というただ人を支配することだけしか考えてない最悪の人物をリーダーにしてしまったことですべてが終わりに向かっていく

近年まれにみるほどストレスがたまる巻。

実際の死者が出るのは8巻からですが、7巻の時点で、「北」という人間がそれなりに余裕や活気があった組織をどのようにして徹底的に破壊していったのかが描かれます。


「北」という人間は、1巻分のボリュームをかけて山岳ベースの雰囲気を一変させ、すべての人間から余裕や笑いを奪い、画一化させていきます。その過程が淡々と描かれています。

「その器がないものが主張する左翼やリベラル・特に共産主義」といったものがなぜ世間から嫌われるのか、これほどまでに雄弁に描いた作品はないのではないでしょうか。

北のモデルとなった「森恒夫」は事件後すぐに自殺しており、彼の内面を語るものは誰もいません。ですが「レッド」は作者が生き残った4名の手記の情報から得た情報を忠実に描いたものであり、その意味で一定の真実が含まれていると思われます。

この点において、この「北」という人間はどうしようもなく器の狭い小人物であるが、それゆえに支配欲の権化といってもよい極悪な人格の持ち主として描かれています。

たしかにこんな人間をリーダーにしてしまったらその組織はもう滅びるしかないでしょう……。「赤城」もリーダーとしてはあまりに問題がある人物でしたが、それはどちらかというと未熟というものでした。北は能動的に最低最悪のマネジメントというものを実践した。

本来だったらこんなリーダーからは当然多くの人が離脱していくのですが、最悪なことにこの山岳ベースには逃げ場がなかった。だからどんどん死者が増えていった。

問題なのは、なぜこの人たちは、北という人間にリーダーの座(生殺与奪の権)を渡してしまったのか、という点に尽きる


前回はちょっと見直しかけたんだけれど、命がけのわりに幼稚園児みたいな意地の張り合いをしてる……。なんというか能力は高いけど精神的にこういうところがあって、とっても凸凹な感じがしますね。

「総括」がもはやただのパワハラの道具へと変わっていく。この事件、「総括」という概念がどうこういうより、「北」という人間がとにかくクソすぎ


マクロ環境

①12月18日 赤石追悼集会

改めて思うけど、山岳ベースのメンバーは少数だけど、新左翼の合法部門の集団自体はまだ結構いるんだな。

②クリスマスの日に爆弾事件。

主人公たちはこういう事件からも蚊帳の外だった。

世界と戦ってるつもりになっていたが、実際は自然の中で生きるだけで苦戦し、そして、仲間内で殺し合っていた。革命のために何か貢献しているつもりだったが実際は何も成果を出さず、むしろ自分たちの行為によって日本における革命を大幅に後退させた。
「学生運動や共産主義に関わると内ゲバで殺される」というイメージを強く残してしまった。

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